2024.07.09
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ネガティブ学級経営脱出マインド:否定的な言動行動をする子どもを見る目線

これまで、子どもの哲学(p4c:philosophy for children)について書いてきましたが、今回の記事は打って変わって、「ネガティブ学級経営脱出マインド」と称して、記事を書いてみました。
「ネガティブ学級経営」とは、私の造語で、自分の学級を教師がネガティブな目線で見てしまうことを指して作りました。

仙台市公立小学校 教諭 齋藤 祐佳

なんだか、教室での居心地が悪いかも

そう感じたとき、それは間違っていません。それは、何らかのサインです。
自分が教室で大事にされていないかも? ○○さん、私に反抗したいのかな? きらいなのかなあ?
様々な思いが浮かぶかもしれません。
そんなとき、そのようなネガティブな目線のまま自分の学級を見ていくと、ますますネガティブな側面に意識が向き、負のループに陥ることがあります。

頑張っている子どもの態度や思いが置き去りになってしまう、気になる子どもと反発し合う、できていないところを見つける目線になってしまうなどです。
できていないところ、不足しているところを見つける目線なので、当然子どもの否定的な言動、行動、状況が見つかります。
学級の状態ではなく学級を見る自分の心の持ちようや目線によって、子どもと教師が否定的な影響を及ぼし合うのです。
そんな悪循環に陥らないための心の持ちようを私はいくつか持っていますが、「ネガティブ学級経営脱出マインド」として、私なりに一部まとめてみたいと思います。

悪意のある子どもはいない

「なんでそんなこと言うの?」と思わず言ってしまいたくなるような、教師に反抗するような発言や屁理屈、「え~」「だる~」など、教室の雰囲気を暗くする発言をする児童。
このとき、大事なのは「『△△』と言った○○さん」と捉えるのではなく、「○○さんが『△△』と言った」と事象を捉えることです。
否定的な発言をするのだからやる気のない子どもだろう、など発言から子どもを捉えるのではなく、ある子どもが否定的な発言をするに至った背景は何だろう、と背景やその発言をせざるを得ない気持ちに目線を向けていきます。

これまで見てきた子どもたちは、気になる言動や行動の根本に悪意があったことはありませんでした。否定的な言動や行動の背景や気持ちは、満たされない気持ちの裏返しであることが多々あります。
悪いことをしようとしているのではなく、なんらかの気持ちの裏返しだ、と常に捉え、そのような発言をするに至った背景にある気持ちはなんだったのか見つける目線で子どもを見ていきましょう。
悪意のある子どもはいません。もし悪意を感じたとするなら、あなたのことを嫌いだからおとしめようとして、そのような態度をとっているのではなく、なんらかの気持ちの満たされなさが違う形で表に現れていると捉えることが重要です。

その子どもの気持ちの満たされなさを、あなたが満たしてあげるために、どうすればいいのか考えていきましょう。
満たされなさとは、勉強がうまくできない苛立ちなのか? 友達とうまくいかないと感じている孤立感なのか? 失敗をすることに対する恐れか?
子どもには、教室で安心できず自分を守るために先に否定的な言動をしていることもあります。
気持ちは目に見えないからこそ、聞こえた言葉と見えた行動から、様々な想像をできうる限りする努力をすることが必要だと、私は考えています。

主語を私にして伝える

もし、否定的な言動や行動に違和感がある場合、
「私は、○○と言われてとても悲しい気持ちです」
「私は、○○を見て、とても残念です」
「私は、○○の言葉に傷つきました」
など、主語を「私」にして感じた気持ちを伝えていきます。
そのために、うれしい気持ちであれ、悲しい気持ちであれ、気持ちを表す語彙を多く持っておくとよいです。

もし、その場でうまく当てはまる言葉が見つからない場合は、
「私は今、うまく言えないけれど、うーんと考え込んでしまいました」
「なんだかなあと今、私はもやもやしました」
など、今思った気持ちを「私」を主語にして伝えていきます。

子どもに伝わるかどうかはわかりませんが、伝えるということが大事だと思っています。
言葉にしなければそもそも伝わりません。伝えないことで「先生はこれに何も感じないのだ」「これでいいんだ」という教師の意図しないメッセージを子どもに伝えることになります。

違和感は伝えるが、さらっと。その後は、具体的に叱った3倍褒める。

「最初、答えがわからなくて白紙のプリントだったのに、私が1つヒントを教えたら、それを自分のものにして、答えをたくさん書けた。とっても大事な力を持っているなあと思ったのよ。すばらしいなあ」
「うまくいかなくて、もやもやしていたように見えたけれど、自分なりに参加してみようという気持ちを感じていたよ」
「先生は、いつも○○さんの味方だよ。あなたの1年をよりよくするためにいるの。今日みたいに、困ったとき、必要なときには先生を頼って。1人でチャレンジしてみたいというときには、先生の力を借りなくてもいいのよ。いつも先生は、○○さんの成長を楽しみにしているよ」

違和感を伝えた児童には、日常的にたくさん褒め言葉をかけ続けることが大事です。

どの子も褒めて欲しいという気持ちを持ち、頑張ろうとしています。
否定的な言動や行動は、うまくいかないことの裏返しです。
自分の学級の子どもの褒められるところを、その学校の誰より多く知っている先生になれたら素敵だな、そんな私って素敵だな、そう思いながら働けたら上出来だと思っています。

齋藤 祐佳(さいとう ゆか)

仙台市公立小学校 教諭


公立小学校にて勤務しながら、よりよい教育を模索している。
宮城教育大学教職大学院にてp4c(子どもの哲学対話)を研究し、現在は心理的安全性を高める学級経営、子どもと対話し考えを深める道徳教育に生かす。
『初任者教師のスタプロ ハッピー学級経営編』(東洋館出版)にてコラムを執筆。
note(https://note.com/haru_kaneko)では、子どもとの日々をありのままに綴っている。
日本教育心理学会所属。

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