「学びを委ねる」って何だ!?
最近のトレンドワード!?「学びを委ねる」。いったいどのようなものなのでしょうか。いろいろな「学びを委ねる」形がある中で、「ちょっと難しそう」「大変な気がする」と思われている先生の気持ちを、少し楽にできたらと思います。
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭 古市 剛大
「学びを委ねる」
最近よく、耳にする言葉ですよね。
書籍や研究会でも聞いたことがあるのではないでしょうか。
「目新しいものが出てきたな」と私は思っていたのですが、よくよく学校内を見渡してみると、実はそういった場ってたくさんあったんですね。
今回は、私が見てきた「学びを委ねる」授業を紹介していきます。
算数で
「2けたをかけるかけ算」の授業を見た時のことです。
練習問題をする際に、先生がこのように言っていました。
「レベル1から3までの練習問題があるので、自分が挑戦したいものを選んで取り組みましょう」
難易度や問題数の違う課題を用意していました。子どもたちは自分の目標を決め取り組んでいました。
途中で「もう1つ上のレベルもやってみる」「ちょっと難しかったからレベル2にしてみる」など、自分で調整しながら学んでいる姿が印象的でした。
みんな同じものを同じ時間でする、そういう時も必要だとは思います。
でも、子どもが自分自身と対話しながら選ぶことも必要なのだなと感じました。
社会で
消防士の取り組みについての学習でした。
課題解決の場面で、ある子は教科書を見ながらノートにまとめていました。
ある子は端末を使って「消防士 仕事」で検索していました。
またある子は、自主学習ノートを見ています。きっと前の日に家で調べてきたのでしょう。
子ども一人一人学ぶ手段が違っていました。
たしかに、教科書の方が考えやすい子、端末の方が調べる気力が湧く子、図鑑や図書館の本がいい子、いろいろいるはずです。
子どもたちが取り組みやすい方法を選べるようにしている先生は、まさしく学びを委ねているなと思いました。
国語で
「ちいちゃんのかげおくり」の導入部分でした。
単元のめあて「ちいちゃんは本当に幸せだったのかをたしかめよう」を子どもたちと共有した後、学習計画を立てていました。
段落ごとにちいちゃんの心情を考えていく計画だったのですが、その後に2時間ほど空白の時間があったのです。
何をする時間なのかなと思っていたのですが、先生の一言で分かりました。
「物語を読んで気になったこと、知りたいと思ったことをめあてにして調べましょう」
「ちいちゃんは、いつ亡くなったのだろう?」
「ちいちゃんのいた時代はどんな時代だったのだろう?」
「何を伝えるためのお話なのか?」
「お母さんとお兄ちゃんはどうなったのか?」
子どもたちは、ノートに自分の考えたいめあてを書いていました。
物語を読んで気になるところは、人によって違います。
その一人一人の「気になる」を追究できる時間を確保していることって素敵だなと感じました。
理科で
「さかなのたんじょう」の単元でした。
「さかなのたんじょうのひみつを調べよう」という単元のめあてを立てた後、
「どんなことが分かったら、ひみつを調べたことになる?」
と先生が問うと、
「何日ぐらいでたまごから出てくるのか」
「たまごの形や大きさは、魚の種類によって違うのか」
「魚はどこでたまごを産むのだろう」
たくさんの考えが出てきました。
中には、その学年で習う内容ではないものもありました。
でも、先生は
「おもしろいね。どうやって調べようか」
と、子どもたちの考えを認めていました。
自分で考えた問いや、友達の問いを見比べながら、自分で追究するものを決めていました。
きっと、その問いについて考える時間は、子どもたちの追究したい意欲がぐっと高まった姿が見られるのでしょう。
「学びを委ねる」って
なんだか子ども任せにしている、自由にさせすぎ、勉強にならないのでは、心配になりますよね。
でも、ちょっとしたことから「子どもが選ぶ・決める」場を用意してみると、普段の子どもたちと違う姿が見られるのかもしれません。
よく考えたら、あなたがしていたあの授業も「学びを委ねる」授業になっていたのかもしれませんね。
大きなことを始めなくても、少しずつ簡単なことから始めてみましょう。
45分の中のちょっとした場面。単元の中の1~2時間程度。
やってみて気付くことがきっとあるはずです。
古市 剛大(ふるいち たけひろ)
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。
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