2016.09.02
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支援がいる子への対応~大事にしている2つのこと~(3)

京都教育大学付属桃山小学校 樋口 万太郎

(前回の続きです。)
 Dくんを担任しているときに、子どもへの対応をたくさん失敗しました。
Dくんをはじめ、子どもたちに本当に申し訳なかったです。

 Dくんは勉強がよくでき、何事にも積極的な子でした。
算数がとても得意で、自信を持っていました。
ただ、イレギュラーなことや些細なことで「カッ!」となってしまい、すぐに手がでてしまうという子でした。
この子が「カッ!」となったときは、子どもでは止めることができませんでした。

 1学期は「カッ!」となることが多かったです。
エネルギーを発散させれば、スッーといつもどおりに戻るため、私は教室の後ろにクッションを置いておき、
「カッ!」となったときはそれを叩くようにDくんに提案をしましたた。ストレス発散法です。
このことにより友達に手をだすということはへっていったが、最善策ではないように思えました。
私の中で、この対応に手応えがなかったのです。

 
 そんなある日、私はDくんへの対応の仕方を間違えました。

算数のテストを返すときでした。Dくんは名前を書き忘れていたため、0点と書き返却しました。
「名前を書くことを忘れないように」ということを伝えたかったのです。
本当はDくんは100点でした。これにDくんは「カッ!」となって怒り、私の足にしがみつき、私の足をズッーと叩いていました。時間として15分くらい。泣きながら・・・。
これは私の対応の仕方のミスです・・・。

Dくんが落ち着いた後、
「Dくん、ごめん。これは先生がわるかった。本当にごめんね。」と謝った。
しかしDくんは「まんちゃん(私のこと)はわるくない。俺が悪いんだ。足をたくさん叩いてごめんなさい。」と逆に謝られました。

この出来事があって、当たり前のことではあるが、
その子たちにあった一人一人の指導を考えないといけない
ということにDくんは改めて気づかされました。

そして担任として、
しっかり子どもと関係を作っておくことの大切さ
にも改めて気づかされました。 
これは在籍している子だけの話だけでなく、他の子にもあてはまる話だと思います。

この話には後日談があります。

後日、Dくんは再び暴れました。そのとき咄嗟に

「何かを殴りたいんやったら、先生の足を殴っておき!」

と言いました。なぜこのように言ったのかはわかりません。

その子はこれ以来、ずっと私の足を殴るようになりました。

Dくんが私の足にしがみついている状態で授業をしたこともありました。

Dくんはスッーとした後は、「先生、本当にごめんなさい」と言うということが習慣のようになっていた。

しかしある日転機がきました。

 Dくんはいつもように私の足を殴っていた。

しかし、その日は私の体調がとてつもなく悪かった。
だから

「なんで、殴るねん!!!」

と大きな声で叱ってしまいました。感情的になってしまい、「しまった!」とすぐに反省をしたのだが、

Dくんもいつも良いはずなのに「今日はなんで?」と思ったのだろう。

Dくんは固まってしまった・・・。

Dくんは「先生ごめん。体調が悪そうなのに・・・」と言って、自分の席へと帰っていったのである。

私はまた失敗したと思いました。

(ちなみにこのとき私はインフルエンザにかかっており、この後すぐに早退し、数日休んだ・・・。この時点では熱はなく少し体調悪いなとしか思っていなかった・・・。)

数日後体調が良くなり、久しぶりに学校にいったとき、Dくんに「ごめんな」と謝った。
Dくんは「こっちこそ、ごめんなさい。」と謝ってくれました。
実はこの出来事は11月頃のことでした。
これ以降、Dくんは私の足を叩くことはほとんどなくなりました。
実はうすうす気づいていたことだが、Dくんはストレス発散で叩いているときもあれば、甘えたいために殴っているときもありました。

 そんなDくんとつい最近出会いました。
大学1年生のりっぱな青年になっていました。身長も伸び、私と同じくらいであった。少しの時間でしたが、昔話をしました。

「Dくん、大きくなったな。あのときみたいに先生の足を今殴ったら、もうだめやで笑」

「もう殴らないよ笑」

こんなやりとりをしているなかで、

「まんちゃん(私のこと)は
叱るときは叱る、ほめるときはほめる、甘えさせるときは甘えさせてくれたよね。
だから、おもしろかったよ」

と言ってくれました。

 Dくんとのケースはたまたまうまくいったケースなのかもしれません。
でも信頼関係がしっかりできていたように思います。
そして(2)でも書いたことだが、他の子と変わりなく叱っていたこともDくんには良かったのかもしれません。
支援がいる子だからとか、在籍している子だからとではなく、目の前に40人子どもがいたとき。
40通りの支援の仕方、支援の量を考えて、
これからも子どもたちに過ごしていきたいと思っています。

樋口 万太郎(ひぐち まんたろう)

京都教育大学附属桃山小学校
みんなが「わかる」「できる」、そして「楽しい」授業を目指し、目の前にいる子に応じた指導を行っています。キーワード「学級経営」「算数」「タブレット端末」。

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