船橋 力 海外留学で身につく“グローバルリーダー”の力とは?(後編)
海外での思いがけない“修羅場”を乗り越えて、変化への対応力を身につけてほしい。
前編では、2013年10月にスタートした官民協働の留学促進プロジェクト『トビタテ!留学JAPAN』のプロジェクトディレクターを努める船橋力氏に海外を体験することで得られる力について伺いました。後編では、2019年2月3日に開催された『第4回トビタテ留学成果報告会』から、本プロジェクトが運営する給付型奨学金「日本代表プログラム」の支援を受けて留学した高校生2名の海外体験を紹介します。
日本を代表する宇宙工学者になりたい!−菅井 雄斗(スガイ ユウト)さん
日本代表プログラム体験談①
【留学データ】
日本代表プログラムのコース:高校生コース/第3期/アカデミック・テイクオフ
留学先/期間:アメリカ合衆国/3週間
留学先機関:FLS Citrus College
「英語に堪能になり、いろいろな問題に取り組む経験を重ねて、将来への自信をつけたい!」と熱い想いを胸にトビタテ生になった菅井さん。けれど渡米して1週間で立ちはだかった壁は、初めて入ったお店でフレンドリーに店員に話しかけられ慌てて無言で立ち去ったこと。ホストファミリーと会話が成り立たないこと。毎日の昼食がケンタッキー・フライド・チキンで、食文化の違いにショックを受けたこと…。思いもよらない事だらけで、自信を無くしてしまったと言います。ただ、ホストファミリーと初めて会話ができて嬉しいと感じた瞬間があったり、一緒に学ぶ友人の頑張る姿を見たりするうちに、ある想いに至りました。
「僕はまだまだ英語ができない。だからこそ、ここにいるんだ。落ち込むのではなく試行錯誤して未来を切り開く経験がしたかったんだ。」
自分自身と向き合い、留学の目的を再確認したといいます。
それからは、自分から行動を起こし、ルームメイトであった中国人の友人に中国語での自己紹介を教えてもらったり、ホストファミリーに日本を紹介したり。するとそこからどんどんコミュニケーションが深まり会話が発展していきました。ここから菅井さんは、「ウジウジしていては何も始まらない、自分が動かなければ何も変わらない」ことに気がついたといいます。
少しの勇気を持って飛び込めば、絶対に何かが返ってきて学ぶことがあると実感した菅井さん。帰国後は『缶サット甲子園』出場に向け奔走しているといいます。缶サットとは超小型模擬人工衛星のことで、製作には、高専の学生が学んでいるような高い技術力が求められます。菅井さんは、信州大学の教授に助言を求めるなどして製作に打ち込み、宇宙工学者という夢への挑戦を続けているそうです。
日本のファッション業界を盛り上げたい!−土田 妃愛乃(ツチダ ヒメノ)さん
日本代表プログラム体験談②:
【留学データ】
日本代表プログラムのコース:高校生コース/第4期/アカデミック・ショート
留学先/期間:イギリス /3週間
留学先機関:ロンドン芸術大学
将来は日本のファッション業界の飛躍に貢献できるようなアパレルマーチャンダイザーになりたいという土田さん。そのためには、流通の専門知識、人間関係を構築する力、アイデアを形にする力を持っていることが必須条件だと考えました。今回は上記の力を身につけるため、トビタテの留学支援を利用し、イギリスのファッション芸術大学へ3週間留学しました。
そこでは、世界中から集まる留学生とともに販売戦略を考えプレゼンテーションを行う授業に参加。実際の客層や商品イメージを可視化する方法や、スタイリングを通して社会にメッセージを送る表現方法を学びました。すべてのアクティビティをグループワークで行ったことで、人間関係を構築する力やアイデアを形にする力が身についたと実感できたそうです。
中でも彼女にとって一番の財産となったのは、同い年のイギリス人の女の子との出会い。彼女は、地球に優しい“エシカルファッション”について、SNSで情報発信をしていました。“エシカルファッション”とは、環境だけでなく、服を作る労働者の人権にも配慮した服を装うことを推奨するものです。「私は今まで、誰がどこで服を作っているのか、なぜ安いのかを考えたことがありませんでした」と、土田さんは自分の知らないところで誰かを傷つけていたことにショックを受けたと言います。これをきっかけに、土田さんは日本に帰国後、エシカルファッションショーのアシスタントを務めたり、様々な機会を利用してエシカルファッションの提案を行う活動を始めました。「将来は、エシカルファッションを取り入れた販売戦略を考えたい」という具体的な夢も見つかった土田さん。3週間という短い留学期間でも、この先の長い人生に大きな影響を及ぼす貴重な経験となったようです。
『第4回トビタテ留学成果報告会』開催概要
日時:2019年2月3日12:00~18:00
場所:文部科学省3階講堂
文部科学省が官民共同で取り組む留学促進キャンペーン『トビタテ!留学JAPAN』では、主な取り組みとして、100%民間の寄付を財源とする返済不要の奨学金「日本代表プログラム」を運営し、高校生・大学生を6,000名支援している。
2018年秋に、留学より帰国した約160名の学生たちが全国7地域で予選大会に参加。そこで選ばれた高校生10名と大学生12名が、本大会で留学の成果を報告。留学体験を振り返り、学んだこと、感じたことを、自らの言葉で生き生きと発表した。
構成・文・写真:学びの場.com編集部 写真提供:トビタテ!留学JAPAN
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