学力調査のデータ分析を学力向上につなげよう! ~全国学力・学習状況調査を活用した石川県の研修リポート~
石川県教員総合研修センターが、県内280校全ての⼩学校・中学校の研究主任各1名を対象とする学力向上スキルアップ研修を開催しました。近年、教育現場でのデータ活用が注目されるなか、客観的なデータを使って子どもたちや学校の学力状況を明らかにするスキルの習得を狙ったものです。
その研修プログラムの中から、内田洋行教育総合研究所が担当した学力調査分析ワークショップについてリポートします。
石川県のこれまでの取組
教科 | 小6 | 中3 |
---|---|---|
国語A | 2位(79%) | 1位(82%) |
国語B | 1位(64%) | 2位(77%) |
算数/数学A | 1位(85%) | 2位(69%) |
算数/数学B | 1位(53%) | 2位(53%) |
このように石川県の子どもたちが高い学力を維持しているのは、石川県教育委員会や現場の教員の継続した取組の成果といえるのではないでしょうか。
県教育委員会は金沢大学と連携し、全国学力調査の結果から、県内の子どもたちの現状や課題、各学校の取組と成績の相関関係などを分析することに力を入れています。
そしてその分析結果は、県の学力向上の中長期的指針にも反映されます。「いしかわ学びの指針12か条」(2011年)と、その改訂版である「学びの12か条+(プラス)」(2017年)は、過去の全国学力調査の分析結果を踏まえて策定されました。
とくに「学びの12か条+」では、「いしかわ学びの指針12か条」以降の各学校での取り組みの成果をうけて子どもたちの課題が深化したことが反映されています。
例えば、改訂前に
4「『書くこと』『読むこと』を通して、考え方を身につけさせる」
となっていた指針は、学校で「書く」活動が定着したことや、教員の「書く」ことに対する指導の手立てが開発・共有されたことを受け、
5「目的や条件に応じて『書く』、必要な情報を『読む』態度・姿勢の醸成」
に変わりました。この指針のもと各学校では、より高いレベルで文章を組み立て記述できるような指導の研究が活発になることが求められていきます。
このように石川県では、県独自で学力調査のデータを分析し目標を立て、それを実践した結果を新たな目標にフィードバックするという、学力データ活用のPDCAサイクルが確立されています。そして次のステップとして、学校単位でそのサイクルを回すことが目指されています。教員自身が学力データを最大限に活用して授業や指導の改善をはかることで、各学校の学力を底上げし、県内の地域間や学校間にある学力差を縮めようとしています。
学力向上スキルアップ研修とは
以上のような背景があり、今年度より「学力向上スキルアップ研修」が行われました。この研修はデータ活用のスキルを習得し、新学習指導要領で目指されている学びを実現するための授業改善の方策を深く理解するために行われました。
県内の地域を3つに分け、それぞれ1日かけて行われた研修では、午前に学力調査分析ワークショップでデータ分析を体験し、午後には金沢大学の加藤隆弘准教授の講義を受け、全国学力調査分析が「いしかわ学びの指針12か条」「学びの12か条+」にどう活かされたか、指針をどのように日々の指導に繋げるかを学んだり、石川県教育委員会から教育施策についての説明を受けて改善の方向性や必然性への理解を深めたりしました。
今回の研修は1回きりで終わるものではなく、今後3年間をかけて学力データを活用する研修が計画されています。その間には各学校においても、学力調査を学力向上に活かすチームづくりを進めることが目指されています。
学力調査分析ワークショップレポート
ここからは、内田洋行教育総合研究所が担当した学力調査分析ワークショップについてレポートします。
主なプログラム
- 9:40~10:10 話題提供
- 10:10~10:55 グループワーク①
- 10:55~11:40 グループワーク②
- 11:40~12:00 全体共有
- 12:00~12:15 ふりかえり
話題提供
グループワーク①
<参加者の声>
「設問ごとに解答類型を組み合わせた学力分析の仕方を体験したことで、課題をより明確にする方法を学ぶことができた」
グループワーク②
<参加者の声>
「それぞれの情報を持ち寄ると『やはりそうか』ということから『えっ?意外』と思うことまであり、今後の方向性を見つけるのに有効だと思った」
全体共有
<参加者の声>
「同じ課題でも、捉え方・まとめ方に違いがあり、勉強になった」
「自校でもやってみたいです」
学力調査の帳票は、子どもたちの学力だけではなく、学習状況や学校の取組の成果と課題など、様々なことを読み取ることができる情報の宝庫だといえます。研修に参加した教員たちは、複数のデータと、日頃学校で感じていることを重ね合わせて改善の手立てを探ることに手ごたえを感じ、学校で実践するイメージを掴んだようでした。
最後に、模造紙の中で「石川県の児童が伸ばすべき資質・能力」として挙げられたものをいくつか紹介します。
- 学習したことを実生活に活用する力
- 自分で課題を見つけ自分で解決する力
- 多様なものの見方・考え方ができるようになるために、人とのつながり、体験から学ぶ力
- 根拠をもって自分の考えを「持つ」、「選ぶ」、「表す」力
- 要点・ポイントを意識して、読んだり書いたりする資質・能力
関連情報
【学力データ活用に関するお問い合わせ先】
株式会社内田洋行 教育総合研究所
教育データ活用推進担当:TEL 03-3555-4796
関連リンク
参考資料
構成・文・写真:内田洋行教育総合研究所 研究員 加藤紗夕理、伊藤志帆
※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)