意外と知らない"学校教材(理科編)"(vol.2)
理科の「学校教材」のオモテ話・ウラ話をご紹介する3回シリーズ。第2回は、「ロングセラー商品」「近年ヒットした商品」、商品開発者目線による「隠れたおすすめ商品」、今だから話せる「失敗商品」をご紹介させて頂きます。
ロングセラー・ヒット商品 ~売れるのには訳がある~
前回、カタログの話の中でご紹介した通り、学校教材というものは、息が長く、また、その種類も多くあります。メーカーにもよりますが、ざっと見積もって約20,000点。その中でも売れる商品、売れない商品はもちろんあります。
長年に渡って愛されてきたロングセラー商品、また、学習内容の変遷等により、近年ヒットした商品の一例をご紹介します。
ロングセラー商品:顕微鏡KLシリーズ
ヒット商品:物の重さ比較セット
【番外】再ブレーク商品:頑丈手回し発電機(リミッター付き)
商品開発担当者の目から見た、隠れたおすすめ商品
【電球作製実験器】
近年LEDの発展と共に、フィラメント電球は姿を消しつつありますが、エネルギー変換の代表的な例と言えば、電気から光への変換でしょう。この電球作製実験器はフィラメントに身近なシャープペンシルの芯を用いて、電気→光の変換実験が手軽に行えるものです。変換実験だけならば、リード線と電源装置があれば行えますが、比較的高電圧・高電流が流れ、発熱するため、安全面への配慮が重要です。この実験器を使えば容器の中で行えるので安全に実験ができます。また、以下に示すような気体を注入する応用実験も手軽に可能であることから、単純ながらなかなか面白い実験器となっています。
実験の具体例としては、シャープペンシルの芯をフィラメントとして発光させる通常の実験方法の他に、中央の気体注入口から二酸化炭素・窒素などの不燃性ガスを注入し、本物の電球に近い状態を作り出すことで発光時間が大幅に伸びるようになります。電気の変換実験と同時に、気体の性質や、科学の生活での利用にまで幅を広げて授業展開ができます。暗幕で部屋を真っ暗にして実験するととっても感動的ですよ。
【石油・石炭標本】
小資源国日本としては、エネルギー問題に無関心でいるわけにはいきません。とりわけ現在の一次エネルギー構成比の大半を占めるのは石油・石炭(石油 約41%,石炭 約25%/出典:資源エネルギー庁 総合エネルギー統計2014)ですが、本物の石油(原油)に触れたことがある人はなかなかいないと思います。
また、アメリカを中心としたオイルシェール(岩石に含まれる石油)開発についても新聞紙上をはじめ、目や耳にする機会が増えてきていますが、この石油・石炭標本は、まさに石油・石炭といった近代・現代の主要エネルギーへの関心を増すことの出来る絶好のアイテムとなっています。なかでも、先のオイルシェールにあたるものがオイルライムストーンという名の岩石です。これは岩石内の細かな空洞に原油成分が詰まっており、この岩石を砕いた際には内部のオイルが揮発して、プーンと原油の独特の臭いが漂います。視覚だけでなく、岩石を砕くという動作、それと同時に発現する臭いによって嗅覚も刺激し、エネルギー問題をリアルに体感することが出来る教材セットとなっています。尚、オイルライムストーンは単品売りもしていますので、砕いて小さくなりすぎてしまった際に補充することもできます。
大きな声では言えませんが、正直イマイチだった商品ってありますか?
メーカーとしては、一度販売した商品は出来る限り長く供給していきたいと思っていますが、それがかなわなかった商品もあります。大抵は製造コストが高くなりすぎたとか、製造ロット数と販売数の乖離があまりに大きかった等、製造上の関係が多いのですが、中には「時代を先取りしすぎた?!」商品もありました。
今でこそtwitterは多くの人が使う便利なサービスですが、これを気象観測に取り入れた商品が2011年に「ツイート気象ロボ(27万円)」として発売されました。温湿度・風向・風速・雨量等の各種気象データを測定し、定期的にそのデータ値をつぶやくというものです。定点観測を、使い慣れたtwitterの画面上でPCやスマホで誰でもどこでも見られるという点、また、フォローしておくだけで他の任意の地点の状況も同様に見られるという点が優れていたのですが、当時はtwitterの認知度もまだ低く、まったく売れなかったため間もなく販売終了となりました。少々時代が早すぎたのでしょうか……。
次回は、先生方のアイデアを商品化する「発明考案品懸賞募集・アイデア募集」、実験器整備の強い味方「理振(理科教育振興法)」に関するQ&A、商品目線による「理科実験の安全管理」をご紹介します。
≪第3回へ続く≫
内田洋行教育総合研究所 研究員 田中俊成
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