2017.10.04
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意外と知らない"不登校"(vol.1)

意外と知らない

日本には、不登校の小中学生が12万6000人もおり、憲法に明記されている教育を受けさせる義務・教育を受ける権利にも問題が生じています。第1回では不登校が社会にどのように認識されてきたかを振り返ります。

不登校とは

「不登校」とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし、「病気」や「経済的理由」による者を除く)を言います。

平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によれば、不登校(年間30日以上欠席)の小学生は27、583人(0.4%)、中学生は98、408人(2.8%)いるそうです。これには保健室登校や、適応指導教室・フリースクールに通って出席が認められている児童生徒は含まれていません。また高等学校になると義務教育ではないため退学となり、人数はわかりませんが、中学校卒業後も引きこもり状態のままになってしまう子どもが相当数いると考えられています。

学年別不登校児童生徒数のグラフ
学年別不登校児童生徒数のグラフ

出典:文部科学省 平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について(確定値反映)より

不登校児童生徒の割合の推移のグラフ(1,000人当たりの不登校児童生徒数)
不登校児童生徒の割合の推移のグラフ(1,000人当たりの不登校児童生徒数)

出典:文部科学省 平成27年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について(確定値反映)より

「不登校の人数分だけ原因がある」というように、不登校になった原因・背景は様々ですが、文部科学省が2014年に出した「『不登校に関する実態調査』~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~」では、「不登校が継続した理由」の回答から次の5つの類型に分けられています。

不登校の継続理由による5つの類型化

類型名
割合
無気力型(無気力、何となく不安で行けない)
40.8%
遊び・非行型(遊びや非行、学校を休むのを悪いと思わない)
18.2%
人間関係型(学校内での人間関係のトラブル)
17.7%
複合型(複数の型の要因が合わさっている)
12.8%
その他型
8.7%

不登校に対する理解の移り変わり

1960年代、それまでは結核などの病気や、経済的理由、戦後義務教育化された中学校への家庭の無理解が主な長欠理由でしたが、徐々に「学校や勉強嫌い、不良化」などの精神的理由による長欠者の割合が増えてきて、社会に認識されてきます。文部省による調査は1966年に始まりました。当初は一種の神経症とされ、「登校拒否症」として精神科病院に入院させられるなど治療の対象となっていました。

1980年代に入り、「登校拒否(年間50日以上欠席)」の小中学生は2万人を超えます。1983年、文部省は「生徒の健全育成をめぐる諸問題―登校拒否問題を中心に―」という手引書を全国の中学校、高等学校、教育委員会に配布しますが、1980年代の終わりには4万人へ、1990年代の終わりには12万人へと急増していきます。この間、「更生施設」で子どもが暴行を受けて死亡する事件なども起きています。

出典:文部省 1983年手引書「生徒の健全育成をめぐる諸問題―登校拒否問題を中心に―」より
原因や背景
個人の性格傾向(不安傾向が強く、優柔不断で、適応性や柔軟性に乏しく、未成熟さや神経質な傾向が強い)、家庭(過保護や過干渉といった親の養育態度、家族の人間関係、学業成績を最大の関心事とする傾向)、学校(学習、部活動、教師や友人との対人関係など)、社会(学歴偏重の風潮、核家族化や少子家族化が進むなど社会環境の急変)における種々の要因が複雑に絡み合って起こる。
学校が取るべき基本的な姿勢
1.怠け者と見なしたり、親が甘やかしていると決めつけるなど誤った捉え方をしないように、全教師が登校拒否に対する理解を深め、連携協力を図るとともに、教育相談を充実するなど指導体制を確立する。
2.一人ひとりを大切にする個別指導を重視し、生徒全員が学校で存在感を持てるように学校生活の改善、充実を図る。
3.早期発見に努め、粘り強く指導する。
4.家庭、教育センター、福祉事務所、病院など関係機関と十分に連携する。
登校拒否のタイプ
1.不安を中心にした情緒的な混乱による神経症型
2.精神的な疾患の初期症状
3.ずる休み型
4.体の発育や学力の遅れなどから劣等感を持ち、集団に適応できなくなる型
5.転入学時の不適応、いやがらせをする生徒の存在などによるもの
6.学校生活の意義を認められないといった考え方から進路変更を求めるもの

1992年、学校不適応対策調査研究協力者会議報告で、「登校拒否は(特定の子どもだけに起こる病気ではなく)誰にでも起こり得るものであるという視点に立ってこの問題を捉えていく必要がある」として認識の転換が求められました。また、学校に行かなくても、学校外の公的機関や民間施設で相談・指導を受けていれば、進級も卒業もできるようになりました。この頃、フリースクールに通う場合も通学定期券を利用できるようになりました。

1995年、スクールカウンセラー制度の公立校への導入が始まります。また1998年、呼び方が「登校拒否」から状態を表す「不登校」に変わりました。

出典:文部省 1992年「登校拒否(不登校)問題について」-児童生徒の「心の居場所」づくりを目指して-より
1 登校拒否問題に対応する上での基本的な視点
(1) 登校拒否は誰にでも起こり得るものであるという視点に立ってこの問題を捉えていく必要があること。
(2) いじめや学業の不振、教職員に対する不信感など学校生活上の問題が起因して登校拒否になってしまう場合がしばしば見られるので、学校や教職員一人一人の努力が極めて重要であること。
(3) 学校、家庭、関係機関、本人の努力等によって、登校拒否の問題はかなりの部分を改善ないし解決することができること。
(4) 児童生徒の自立を促し学校生活への対応を図るために多様な方法を検討することがあること。
(5) 児童生徒の好ましい変化は、たとえ小さなことであっても、これを自立のプロセスとしてありのままに受けとめ、積極的に評価すること。

2000年頃から不登校の割合は横ばいとなります。2003年、不登校問題に関する調査研究協力者会議最終報告を受けて、「ただ見守るのではなく、働きかけるべき」と方針が転換されます。また、2005年には自宅学習も出席扱いにできるようになります。

出典:文部科学省 2003年「不登校への対応の在り方について」より
1 不登校に対する基本的な考え方
(1) 将来の社会的自立に向けた支援の視点
不登校の解決の目標は、児童生徒の将来的な社会的自立に向けて支援することであること。したがって、不登校を「心の問題」としてのみ捉えるのではなく、「進路の問題」として捉え、本人の進路形成に資するような指導・相談や学習支援・情報提供等の対応をする必要があること。
(2) 連携ネットワークによる支援
学校、家庭、地域が連携協力し、不登校の児童生徒がどのような状態にあり、どのような支援を必要としているのか正しく見極め(「アセスメント」)を行い、適切な機関による支援と多様な学習の機会を児童生徒に提供することが重要であること。その際には、公的機関のみならず、民間施設やNPO等と積極的に連携し、相互に協力・補完し合うことの意義が大きいこと。
(3) 将来の社会的自立のための学校教育の意義・役割
義務教育段階の学校は、自ら学び自ら考える力なども含めた「確かな学力」や基本的な生活習慣、規範意識、集団における社会性等、社会の構成員として必要な資質や能力等をそれぞれの発達段階に応じて育成する機能と責務を有しており、関係者はすべての児童生徒が学校に楽しく通うことができるよう、学校教育の一層の充実のための取組を展開していくことがまずもって重要であること。
(4) 働きかけることや関わりを持つことの重要性
児童生徒の立ち直る力を信じることは重要であるが、児童生徒の状況を理解しようとすることもなく、あるいは必要としている支援を行おうとすることもなく、ただ待つだけでは、状況の改善にならないという認識が必要であること。
(5) 保護者の役割と家庭への支援
保護者を支援し、不登校となった子どもへの対応に関してその保護者が役割を適切に果たせるよう、時機を失することなく児童生徒本人のみならず家庭への適切な働きかけや支援を行うなど、学校と家庭、関係機関の連携を図ることが不可欠であること。

2016年の不登校に関する調査研究協力者会議「不登校児童生徒への支援に関する最終報告」を受けて、現在は「不登校は問題行動ではない」、支援の仕方も「再登校を目標にするのではなく、多様な教育機会を確保すべき」という認識になっています。

出典:文部科学省 2016年「不登校児童生徒への支援の在り方について」 より
報告においては、不登校児童生徒を支援する上での基本的な姿勢として、
(1) 不登校については、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得ることとして捉える必要がある。また、不登校という状況が継続し、結果として十分な支援が受けられない状況が継続することは、自己肯定感の低下を招くなど、本人の進路や社会的支援のために望ましいことではないことから、支援を行う重要性について十分に認識する必要がある。
(2) 不登校については、その要因や背景が多様・複雑であることから、教育の観点のみで捉えて対応することが困難な場合があるが、一方で、児童生徒に対して教育が果たす役割が大きいことから、学校や教育関係者が一層充実した指導や家庭への働きかけ等を行うとともに、学校への支援体制や関係機関との連携協力等のネットワークによる支援等を図ることが必要である。
(3) 不登校とは、多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということであり、その行為を「問題行動」と判断してはならない。不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し、学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが、児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要であり、周囲の大人との信頼関係を構築していく過程が社会性や人間性の伸長につながり、結果として児童生徒の社会的自立につながることが期待される。
という観点が示されたところです。
1 不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方
(1) 支援の視点
不登校児童生徒への支援は、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があること。また、児童生徒によっては、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。
2 学校等の取組の充実
(4) 不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保
不登校児童生徒の一人一人の状況に応じて、教育支援センター、不登校特例校、フリースクールなどの民間施設、ICTを活用した学習支援など、多様な教育機会を確保する必要があること。

日本の小中学校には事実上留年が無いため、1日も登校していなくても、その学年の学習内容を全く理解できていなくても「進級」「卒業」することになります。特別支援学級在籍とすると下学年の内容の授業を受けることができますが、いわゆる内申点が付かず、公立の高等学校を受験できなくなるという問題も起きています。

通信制の公立小中学校や、小中学校の卒業程度認定試験がある国もあります。通信制の小中学校は、過疎地や海外に住んでいて近くに学校が無い子どもや、怪我等で通学が一時的に困難になってしまった子どもにも便利なシステムです。より多くの子ども達が正規の義務教育課程を修了できるように、教育システム・選択肢を見直すべき時期に来ているのかもしれません。次回は、不登校の発生メカニズムなどについて紹介します。

参考資料

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 江本真理子

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