2003.05.06
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新時代の学力をつけるワークショップ型授業とは

3月27日、成蹊大学(東京都武蔵市)にて「新時代の学力をつけるワークショップ30」と題したイベントが開催された。タイトルどおり30ものワークショップが行われ、各教室とも満員御礼の大盛況。  新しい時代に必要なのは、暗記中心、知識偏重の勉強ではなく、自ら考え問題を解決する能力である。授業の形態も、教師が教壇に立って多数の生徒に一方的に語りかける講義型の授業から、参加者全員が体を動かし能動的に参加するワークショップ型の授業へと変わっていくのではないか。今回のイベントに参加してそんな思いを強くした。

 
 
授業作りネットワーク事務局長の藤川大祐氏
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

講師の上條晴夫さん。授業づくりネットワークの代表でもある
 
 
 
 
 
 
 
 
 
講師の左口絹英さん
 
 
 
 
 
 
 
 
 

講師の佐久間一生さん
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 今回のイベントを主催した「授業づくりネットワーク」は、「異質なものからの学び合い」「研究方法の革新」「受信者・発信者一体」という理念のもと1986年に誕生した、授業作りの情報交換や研究を進める研究団体。『月刊授業作りネットワーク』(学事出版)を編集し、役立つ授業作りの情報を発信するほか、全国的な研究会を年に4回行っている。今回は2003年第1回目のイベント。

 授業づくりネットワーク事務局長の藤川大祐氏(千葉大学教育学部助教授)が「ワークショップ型授業のすすめ」をテーマに基調講演を行い、イベントの口火を切った。
 藤川氏の定義するワークショップ型授業とは、

 ・子どもの「活動」と「振り返り」のある授業
 ・予定調和ではなく、一人一人の子どもがいることで新たな発見がある授業
 ・「頭で覚える」のではなく「体で感じる」授業(結論ではなく過程を重視する)
 ・実践の中でコミュニケーション能力や問題解決力を高める授業

である。

 とにかく生徒たちが体を動かし授業に能動的に参加する。これらの活動の後には「振り返り」を行い、他人の意見や感想を聞くことで気づきを得る。だれかが突飛な発言をして授業がとんでもない方向に行ってもかまわない。生徒一人一人の個性があるからこそ、新しい発見がある。これがワークショップ型授業である。

■面白いテーマがズラリ。30本のワークショップ!

 基調講演の後、参加者は、30本のワークショップから、好きなテーマを3本選び実際に「ワークショップ」を体感する。各ワークショップは、1コマ90分。講師はすべて、授業づくりネットワークのメンバーである。
 ざっとタイトルを見てみると、
・小学校でできるディベート(講師:池内清)
・リトミックで作る音楽授業(講師:宮良愛子)
・アクティビティを通して学ぶ経済の基礎(講師:新井明)
・テレビCMを使ったメディアリテラシー(講師:鈴木啓司)
・ヒット曲を使った振り付け発明術(講師:早川朋子)
・説教から説得に変える3つの演習(講師:佐々木宏)
など興味深いテーマがズラリ。迷いに迷って

「お笑いに学ぶ教育技術(講師:上條晴夫)」

「アサーション~気持ちを伝える話し方~(講師:左口絹英)」

「即興演劇~間違いは罪じゃない~(講師:佐久間一生)」
の3本に絞り筆者も参加した。以下にその内容の一部を紹介する。

■お笑いで教室をあったかくする!
 「お笑いに学ぶ教育技術(講師:上條晴夫)」

 新学期には、なるべく早く子ども達の心をつかみ、学級作りをしていきたいもの。特別に話術にたけていなくても、お笑いのプロでなくても、「教室をあったかく」できる技があれば…。そう思っている先生方は多いのではないだろうか。このワークショップでは、テレビのお笑い番組や落語などをヒントに、ちょっとした笑いを生み出すコツを教えてもらった。たとえば、「あるあるネタ」。「横断歩道を渡っていると、白いところだけ踏みたくなる」とだれかが言って、「そういうこと確かにある」と思ったらみんなで「あるある!」と言うものである。人が見落としがちな日常の些細な出来事からネタを見つけることが、笑いにつながる。子ども達は「ウケたい」「笑いを取りたい」という欲求が強いから、盛り上がること間違いなし。しかし、ここで大切なのが、もし受けなくて場がシラーっとした時の先生のフォロー。「そんなのないない!」とか「何言ってんの」とすかさずツッコミを入れて教室にあったかい笑いが起こるようにする。あくまでも主役は子どもで、先生は、子どもが面白いオチが言えるような前フリをしたり、もし受けなかったときにはフォローする。これが、「教室をあったかくする」コツなのである。

■いやなことははっきりNOと言う!
「アサーション~気持ちを伝える話し方~(講師:左口絹英)」

 アサーションとは、相手の言い分も聞くけれどきちんと自分の意見を伝える、対等な人間関係を促進するためのコミュニケーションスキルである。

 他人から嫌なことを言われても、きっぱりとNOと言えない、嫌なことをされてもやめて、と言えない。そんなことが積み重なるといじめや不登校に発展するかも知れない。こんな時
、アサーションの「自己表現」スキルが役に立つのである。
 このワークショップでは、「頼む人」「断る人」「観察者」の3人一組になって、頼む人は「1000円貸して欲しい」とひたすら頼み続け、断る人はひたすらそれを断り続ける、という体験をした。やってみて、「No」といきっぱり言うこと意外に難しいこと、「No」を主張するとしても相手の言い分を良く聞く、代案を出してみる、など円滑なコミュニケーションをするためにはノウハウがある、ということを実感した。
 最近、過度に傷つきやすく、お互いに傷つけたり傷つけられたりするのを恐れ、適当な会話をつなぐだけで相手に深入りしないコミュニケーションをよしとする若者たちが増えている。こんなことではコミュニケーション力は低下するばかりだ。アサーションの重要性は今後ますます高まっていくのではないだろうか。


 
■間違ってもOK!直感的に体を動かしてみる
「即興演劇~間違いは罪じゃない~(講師:佐久間一生)」

 このワークショップでは、体を使って何かを表現したり、目と目を合わせる(アイコンタクト)だけでコミュニケーションすることを体験した。講師は、舞台を中心に活動する現役の俳優さん。
 面白かったのは、「ナイフとフォーク」というゲーム。数人ずつでグループを組み、講師がたとえば「ナイフとフォーク!」といったら、グループのメンバーで体を使ってその形を作る。メンバーはこの間一切しゃべってはいけない。「私がナイフをやるから、あなたフォークやってね」といった指示が出せない。だから、他人の動きを見て、自分が何をしなければならないかを考えなければならないのである。ここで、おのずと、互いに相手の気持ちを察して助け合う、ということを学ばされる。
 難しい課題が出ると参加者たちから「え~!」と不安の声。
「眉間にしわを寄せてえ~って言うと、創造の扉が閉じてしまいますよ! 眉間を開いて、『はい、やりましょう!』と言ってみてください。そこから、どんどん発想が広るんです」
なるほど。最初恥ずかしがっていた参加者たちも、いつのまにか演じる楽しさに目覚め、体を使って「カレーライス」「北極」「新宿」を表すという荒業もクリア。笑いと活気に満ちたあっという間の90分だった。

 ワークショップでは、傍観者は存在しない。誰もが体を動かし、発言し、ともに授業を作っていかなければならない。講師の方たちは、たびたび「正解はありません、間違いというものはないんです」と言う。それでも最初は恥ずかしさが先に立ち、なかなか体が動かない。しかし、どのワークショップでも、終わるころには汗をかき、まだまだ続けたい、という気持ちになっていたことに驚いた。子ども達なら、もっと短い時間で心をほぐし、好奇心いっぱいでワークショップに参加できるだろう。子どもたちが目を輝かせ、自分からどんどん学びたくなる、ワークショップ型の授業なら、それが可能になるに違いない。

(取材・構成:学びの場.com)


授業づくりネットワークのホームページ
http://www.jugyo.jp/


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