2015.02.24
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『学力をのばす美術鑑賞 ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』

『どこからそう思う? 学力をのばす美術鑑賞 ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』(フィリップ・ヤノウィン著、淡交社刊)をご紹介します。

「ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ(VTS)」とは、学習者がグループで対話を介して美術鑑賞するための教育プログラムです。

教師は、
「何が起こっているのだろう?」
「どこからそう思う?」
「もっと発見はある?」
 という三つの問い掛けを使いながら、子ども達の鑑賞を深めていきます。美術を通して学習者の「観察力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」を育成するこの教育手法は、図工・美術だけでなく国語、算数・数学、社会、理科など他教科へも応用できるメソッドである所が特長です。
 
 例えば、算数の文章題で、問題文の意味を皆で議論しながら解かせる。社会では権利章典の一節を「鑑賞」したり、中東の地図を見て時事問題を考えさせたり、といった授業が行われているそうです。実際に、年間10回のVTSによる鑑賞授業を取り入れたアメリカの学校で、子ども達の学力が伸びた、学習意欲や自己肯定感が高まった、という報告がなされています。

本書『どこからそう思う? 学力をのばす美術鑑賞 ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』は、元ニューヨーク近代美術館(MoMA)教育部部長のフィリップ・ヤノウィン氏が、20年以上の実践経験を基に書き下ろしたものです。「コミュニケーションを通した教育に関心はあるが、どうやって導入したらいいのかわからない」「そもそもVTSって何?」と思われている小中学校の教員に向けて書かれており、極めて実践的な内容になっています。本書を読んでVTSに興味を持たれたら、あなたの教室でもぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

『学力をのばす美術鑑賞 ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』

著 :フィリップ・ヤノウィン
翻訳:京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター
出版:淡交社
価格:2500円(税別)

【京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター】

2009年4月に、人が人との間で生きていくために最も重要な要素であるコミュニケーションのあり方・育て方について、美術教育の現場から問い直してみようという目的で設立された。
美術の分野から、コミュニケーションの問題と「生きる力」の向上にアプローチする。
http://acop.jp/

文:内田洋行教育総合研究所 研究員/アート・コミュニケーション研究センター 嘱託研究員 平野智紀

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