2008.02.21
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学習支援員、介助員を効果的に活用するには

東京都立港特別支援学校 教諭 川上 康則

第24回目の記事です。今回は、介助員や学習支援員などの活用について取り上げます。

平成18年度までは、都道府県や市町村の独自予算の枠内で行われてきた介助員さんや学習支援員さんの活用ですが、特別支援教育元年として位置付けられた今年度からは、支援員2万1千人に相当する約250億円の地方財政措置が行われています。その予算が平成20年度には、約360億円に増額され、3万人の支援員さんが措置されることになりました。この人数は、全国の公立小・中学校の数とほぼ同じで、各校に1名の割合で配置されるということになります。詳しくは、文部科学省HPの以下のアドレスをご参照ください。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/005.htm

また、業務内容の棲み分けがなされていた介助員と学習支援員(たとえば介助員さんは食事や排泄や車いすの移動補助、学習支援員さんは学習面や行動面のサポートといった具合)の立場ですが、両者の業務内容の重なりが大きいことを考慮し、「特別支援教育支援員」という広い呼び名で整理されることとなりました。これにより、様々な場面での弾力的な活用がみこまれます。今回の記事も、介助員さんを含んだ意味で「支援員」を使いたいと思います。

とはいえ、「各校に一人なんて少なすぎる・・・」なんていう声も聞こえてきそうです。最近はあまり耳にしなくなりましたが、2年前くらいまでは研修の講師で呼ばれて出かけると、必ずと言っていいほど「それで、人はつく(予算化される)んですか?」と質問される先生が学校に一人はいました。

人的措置があるというのは確かにありがたいことだと思いますが、たくさんの教室に巡回相談にうかがった経験から言えば、それで全て解決!とは言いきれないところに教育の場の難しさがあります。支援員さんにほとんど丸投げ状態で、担任としての関わりが皆無に近いほど少なかったり、逆に、支援員さんがついたことで、おんぶに抱っこ状態になり自分からは動こうとしなくなった子がいたり・・・。大人どうしの打ち合わせがほとんどないため、先生と支援員さんがお互いのよさを引き出しあえないというケースもあります。

そこで、支援員さんが配置された場合の効果的な活用のコツを5点ほど挙げます。
(1) 支援員さんの勤務時間を授業時間だけに限定せず、打ち合わせ時間を含めるようにすること。
(2) 特別支援教育校内委員会や校内研修会には同席してもらい、情報を共有すること。
(3) 教室内での立場を明確に決めること(基本的には担任がメインに関わり、支援員さんは黒子役に徹する)。
(4) 支援員さんのフェードアウト計画を立てること(最終的には支援員さんが目立たなくなることが目標になります。頼り切らない環境に徐々に移行していくこと)。
(5) 別の立場の人間(例えば管理職の先生やコーディネーターの先生など)が教室に入り、ティーム・ティーチングが機能的に行われているかを評価・修正する機会を設けること。

支援員さんの活用法を論じる一方で、財政事情が苦しい自治体にある小学校の中を巡回させていただくと、「自分たちでやるほかない!」と自身の指導力の向上を目指す先生に出会うことがあります。「人的に手厚い環境=教育環境の良さ」とは言いきれない、何かがありそうな気がします。最終的には、どちらの立場においても人的な環境に左右されない指導力を追求する姿勢が重要なように思います。

ところで、支援員さんの多くは教師志望の大学生です。彼らと話すと、子どもたちのサポートに携わりながら、担任の先生の一挙一動をつぶさに観察していることがわかります。そのうち、支援員経験者が教師として採用され、教壇に立つ日が来るでしょう。学生時代から養ってきた感覚を役立てることができれば、きっと支援を必要とする子どもの気持ちも、支援員の立場もわかる教師になることでしょう。

特別支援教育は、次世代の教育環境を醸成する教育なのかもしれません。

川上 康則(かわかみ やすのり)

東京都立港特別支援学校 教諭
障害のある子どもたちの指導に携わる一方、特別支援教育コーディネーターとして小中学校を支援してきました。教育技術の一つとしての「特別支援教育」を考えていきます。

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