2007.11.16
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黒酢飲料と「やる気」

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

巷は相も変わらず健康ブームのようである。様々な健康に良いと言われる食品や飲料水が氾濫している。私もご多分に漏れず、健康には人知れず気を配っているつもりである。幸いかな「健康オタク」というほどには至っていないと思う。

でも実は、ほんの2週間前から黒酢飲料を試みている。半額キャンペーン・セールに踊らされて1セット(18本入り)を購入したのが始まりである。格別健康面で何かを期待したわけではない、まあ駄目もとという気持ちでとりあえず朝夕1本ずつ飲み始めた。この手の飲み物として当たり前なのだが、酸っぱくて、喉こしは良くない。幾らかむせながら我慢して飲んでいた。最初の2日間は格別体調の変化を覚えなかった。

不思議なことに3日目からは変化が出てきたのである。まず目覚めがすっきりするのである。さらに身体の節々に痛みを伴っていたものが、スーと消え、身体が軽く感じられるようになってきたのである。黒酢飲料は、少なくとも私には驚くほど「効果」があったようだ。

話は飛びますが、英語の学習方法で、「そのやり方は、効果があるとか効果がないとか」という言い方をすることがある。生徒一人ひとりの英語に対するモチベーションが多様である現状では、一律に効果的な方策を見いだすことは、非常に難しくなっている。しかし、可能なら黒酢ほどの効果とまで言わないが、生徒一人ひとりのレベルに応じた何か効果的な指導方法を取ることが出来ないものかといつも頭を悩ましている。

たとえば、この飲み物を飲むと英語の発音が良くなり、別の飲み物を飲むと英文法の理解が進み、この飴やスナックを取ると、長文読解ができるようになる等のサプリメントや飲料水があれば良いのではないでしょうか。「これを食べるとビタミンBが摂取できますよ」のように、学習や教科や分野に効果的な食品って、近い将来開発されないでしょうか。それとも私が知らないだけでしょうか。このためには、脳生理学分野と摂取食品の関係(もし何らかの関連があればの話ですが)についての研究の必要性があるのでしょうか(こう書いていますが、個人的には、私はサプリメント的なものからの栄養素の摂取は好んでおりません)。

また、こんな例もあります。白い粉を「これは、あなたの症状によく効く薬ですよ」と言って渡された患者さんは、それが、サトウや小麦粉の類であっても、症状が緩和されたり、改善され、治療されることがあるということを聞いたりします。これはどういうことでしょうか。白い粉を薬だと理解し、その薬は必ず身体に効果があると思いこむことで、病気が直ってしまうことですね。「病(やまい)は気から」とよく言ったものです。

黒酢飲料は、私にとって、実は上の例のように、何か安心を与えてくれる代替えになっています。この飲料水を飲むと身体に良いのだと「刷り込み」が行われているようです。これを飲むだけで、一日のスタートが軽くなります。また夕方に飲むことで、「今日の疲れも取れるぞ」という気持ちになります。もうこのような場合、実際の効能や成分をとやかく詮索する必要はないのです。これは身体に良いと「信じること・思いこむこと」で、結果として体質や体調や気分が改善されるのであれば、これで良いとすべきではないでしょうか。非常に「非科学的」な話題を提供しています。が「心の持ちよう」というような、科学で解明しにくい何か不思議な事柄が、現実の日常生活にいろいろと影響を与えているのではないかと、私は考えています。

「やる気」「動機」というと、何か栄養剤や薬のように対処療法的で効果的な何か物体があるのではないか思い、ずっと捜しています。また、脳のどこかに「やる気」を支配する部位や「やる気」に関する分泌物質があり、そのスイッチを押せば、「やる気」が出てくるのでないかと短絡的に想像していました。「オズの魔法使い」のドロシーがライオンやかかしやブリキのロボットと一緒にエメラルド王国を探し歩いたように。実際あるのかも知れません。今のところはよく分かりません。
しかし、「これは、効果があるぞ」と心から信じることや「あの先生は信頼できるぞ」と思わせること等の「心理的な」部分が、「やる気」を起こす上で比重を占めることが大きいのではないかと感じてきています。

今、私は、「黒酢飲料」にあまり頼らないようにしようかと考えています。どういうことかというと、現在、1日に2本飲んでいます。それを1日に1本にし、次は2日に1本にして、少しずつ「黒酢飲料」に依存しないようにしてみようと思っています。
現実的には、酸味が身体にも健康面でも良いのは承知していますので、黒酢に変わる同様な酸味のある食生活を心がけたり、黒酢に似た代替え品を探し求めたりしようと画策しています。ある一つのことだけを信奉する危険性を回避したいからであります。

もう一つ、私の身体がこの「黒酢飲料」に慣れてきて、効きが弱くなってきて、毎日の飲料する本数が増えることになり、もっと濃い「黒酢飲料」を必要とすることにならないように心配しているからです。「黒酢飲料」に対して免疫力というか抵抗力というか、私の身体が麻痺しないようにもしたいからです。おっともう一つありました。経費節約のためにです。

実際の英語指導で、ある学習活動のパターンに慣れてくると、それはマンネリ化し、生徒らの「やる気」が乏しくなってきます。それを防ぐためにある程度変化を持たせる活動や指導法の改善が求められると思います。

さて、疲れが身体に残っていると感じている皆さま、黒酢飲料って本当に良いですよ。少々噎(む)せることがありますが。騙されたと思ってお試しください。なお効果は個人差がありますことをご了承ください。
P.S.皆さん各自が気分転換用のお好みの飲み物があれば、それは黒酢でなくても、ドリップのコーヒーでも、ティーパックの紅茶でもかまわないのです。くれぐれも私は決して、その筋の販売員ではありません。

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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