2007.11.02
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英字ノートと大学ノートとのコラボレーション?

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

皆さんは、平生の授業で、ノートの取り方をどのように指導しておられるでしょうか。もちろん教科によっても違うと思います。小・中・高と教わった先生によっては、それぞれ個性的なノート指導を受けた想い出もあることでしょうか。

私の授業では、教科書の英文をノートの左側に書き写し、ノートの右側には、日本語訳や熟語や文法や重要構文の解説などを板書するので、自分なりに写すように指導しています。ノートは見開きで使用させています。

特別に目新しいことでなく、どこにでもよくある一般的な英語の勉強方法の一つではないでしょうか。授業に限らず、予習や復習でも同様な指導や指示をしておられる先生方が多いのではないでしょうか。(昨今のコミュニケーション重視の流れでは、このような前近代的な指導ではいけないとお叱りを受けるのかも知れませんが)

私は、英語の文字をきちんと書くことも英語学習の一つだと考えています。そのために、高校生になっても4線が引かれている罫線の英字練習ノートを全員に購入させています。じつは、bとd 、pとq、 tとf、aとdの区別が曖昧であったり、pとP、kとK 、xとX、zとZなど大文字と小文字がはっきり書き分けできていなかったりする場合も少なくないからです。

これらに限らず、正確にローマ字を書く癖をつけるためには、4線があることは大事なのです。上に突き出る文字なのか、下に突き出る文字なのか、大文字小文字の大小の違いを意識させたり、一つの単語内で、他の文字とのバランスに気付かせたりすることも大切になってくるのです。情けないことかもしれませんが、ノートをしっかり作れることも、成績や評価に大きく反映し、それに占める割合も高いのが現状です。

先週になって、一人の生徒A子が突然質問してきました。
「先生、どうして左側が4線、右側が普通のノート(無地またはB型やA型で、6mm罫等)ってないのですか。」(注:実際の会話は富山弁混じりです)
「先生の板書の日本語訳や解説をノートにとるとき、右側の4線が書くのに邪魔になってしまうので、右側は4線がない方がいいです。」
私は
「○○さんがいうようなノートってないのでしょうかね。ちょっと調べてみます。」
と答えておきました。A子さんの何気ない素朴な質問に私は正直「うーん」と考え込んでしまいました。

私の言わんとしていることが、読者諸氏には伝わるでしょうか。中学生の一年、または、小学生の時でも構いません。とにかく英語を学習し始めた頃は、日本全国いたるところで、4線が引かれた英字練習用のノートが使われたと思います。このノートは最初から最後まで4線で出来ています。英語学習の初期では、単語の練習や英文を書く練習用に、この形式のノートは便利で、都合がいいものでした。日本語を書く必要がない段階には最適でした。ペンマンシップのようなワークシートでも、4線が用いられてドリルできるように作られています。

しかし、学年が進行してくると、教科書の本文を写し、日本語訳などをまとめることも必要になってきます。私が指導しているように見開きでノートを使い、左側を英文で、右側を日本訳などにしている場合は、4線が邪魔になってきます。4線の上に日本語訳や解説が重なってしまい、非常に見にくくなるからです。生徒が疑問を唱えてきたのは至極当然なことでした。【写真2点参照】

と同時に、そのような不都合が、どうして今まで全国の英語の教室から聞こえてこなかったのか不思議に思いました。英語科の先生方は今までノートの形式について不便を感じていなかったのでしょうか。学年が進行するにつれて、多分罫線間隔のある大学ノートに移行していって、4線のノートに固執する必要があまり見いだされなかったからではないでしょうか。

でも、私の目の前にいるような状態が、現実に全国の多くの教室であり得るのではないでしょうか。そうすると、A子さんが必要としたノートって需要があるのではないでしょうか。インターネットアンケートを通して、調査してみることも可能ではないかと思います。

早速その日の放課後に、まず、インターネットを使ってコクヨのホームページで検索してみました。目当てのノートはみあたりませんでした。次に県内の大手の文具店に電話をしてみました。「片面が英字練習用で、もう片面がごく普通の大学ノートのものはないのでしょうか」と、直接店員に尋ねてみました。そうすると、今まで見たことも聞いたこともないとの返事でした。

今度は直接ノートを製造している会社へ直談判です。富山県に縁(ゆかり)のあるコクヨさんへ電話をしてみました。(余談になりますが、コクヨさんの創始者は富山県出身の方で、富山大学の黒田講堂を寄贈された方でもあります。)早速、生徒が疑問に思った形式のノートを作っておられないかと尋ねました。事前にネットでみていたものの、もしかしたら「ありますよ」という返事が聞けるのではと、淡い期待をしていたのですが、やはり「存在しない」との事でした。

厚顔無恥な私は、声を大にしてお願いしたいのです。たしかこの「学びの場.com」を運営している『内田洋行』さんは、文房具関連の会社であると聞いています。見開きのノートで、4線が左で、右側が大学ノートのような形式のノートを商品開発していただけないでしょうか。これはヒットしますよ(!?)。

彦麿呂ではありませんが、「英字ノート」と「大学ノート」の「コラボレーション」になぜ今まで気付かなかったのでしょうか。または気付いていたとしても、生徒のためになるノートがどうしたら生まれるのか、私たち教師は考えるゆとりがなかったのでしょうか。困っている生徒たちの声を、私たち教師も吸い上げることをしてこなかったのでしょうか。

もしかしたら英語に限らず他の教科でも、こんな形式のノートがあれば、授業で都合がいいのになあとか、生徒は喜ぶのになあと感じておられる方が、このコラムの読者にもいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方は、ぜひともこちらにお問い合わせ下さい。もしかしたら要望が実現するかも知れませんよ!?

おっとその前に、内田洋行の商品開発部のスタッフの方が、このコラムをご存じないと全く意味がなくなりますね。「灯台下暗し」とはこのことかも知れません。いや生徒の声からこのコラムが書けただけでも「瓢箪から駒」なのかもしれません。

ところでこの声、みなさんに届きましたでしょうか?
note_01.jpgnote02.jpg

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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