最近、小・中学校からの研修依頼の内容が様変わりしてきました。教務主任の先生方の自主的な勉強会や、教育相談担当者の研修会などからの依頼が立て続けに舞い込んできたのです。私は校務分掌では教務や教育相談を担当したことがありません。「特別支援教育の話でいいんですか?」と念押ししながらたずねると、それを聞きたいのだというご回答。
そもそも、教務とは、教育課程の検討・作成から授業・学籍・成績・儀式的行事に関するとりまとめまでを広範囲に受け持つ学校運営の幹の役割を果たす重要なポジション。また、教育相談も子どもたちの学習面・生活面・進路などの相談から保護者相談などを束ねる大切な仕事です。そのどちらの立場も特別支援教育の実践の知を欲している・・・。特別支援教育が「特別な子への特別な対応」といった誤解から一歩抜け出し、学校種を超えて授業改善や学校運営に大きく関わることを実感してくださっていることの証左です。
私は、研修の場で、子どもたちのつまずきの事例をたくさん紹介し、そこにどんな背景があるのか、改善のきっかけとなるのはどんなことなのか、適切な関わりをしていくとどの程度まで成長するのかなどを徹底的にお伝えします。つまり、問題行動を羅列的に紹介するといった、ありがちな研修のスタイルは一切用いないようにしています。
多くの小中学校の先生方にとって、「○○障害の特徴は・・・」とか「○○障害の医学的な判断基準は・・・」といった研修は最も興味・関心の持てない内容であり、ほとんどの場合、研修を企画した方の意図に反して不発に終わります。かえって反発を招く結果になることも少なくありません。そうした研修をたくさん目にしてきたからこそ、私は上記のような研修スタイルが必要なのだと思っています。「先生方に理解を求める」タイプの研修ではなく、いわば「先生方の観察眼が鋭くなる」タイプの研修スタイルです。
観察眼がするどくなるということは、つまずきの背景(理屈)をよくわかっている、ということに他なりません。縄跳びができないことがなぜ気になるのか、姿勢が悪いことにどんな背景があるのか等が理解できているからこそ、学習や行動の中からつまずきを見い出せるようになるのです。「~は」と書くべきところを「~わ」と書いてしまったり、文字枠に適度におさまる文字を書けなかったりすることのつまずきがわかるからこそ、チェックリストやアセスメントシートなどにチェックがつけられるようになるのです。
ところが、こうした“訓練”を積まずに、気になる子の行動特徴を羅列したチェックリストやアセスメントシートだけをポンと手渡し、「気になる子がいたらつけてください」といった対応を行う自治体・学校がまだまだ少なからずあります。予想以上に少ない数値が出た場合、それは、気になる子が少ないという安堵の報告ではなく、むしろ、子どもたちの困り感を見抜ける教師が少ないのではないかという危機的状況の可能性を示唆していると分析するべきです。
チェックリストは、あくまでも大人側の観察眼を養う目的で活用すべきです。冒頭でご紹介した先生方が、特別支援教育の枠を超えた領域から特別支援教育を見つめなおそうとするのは、きっと自らの観察眼を養おうとする意欲の表れなのだろうと思います。
そもそも、教務とは、教育課程の検討・作成から授業・学籍・成績・儀式的行事に関するとりまとめまでを広範囲に受け持つ学校運営の幹の役割を果たす重要なポジション。また、教育相談も子どもたちの学習面・生活面・進路などの相談から保護者相談などを束ねる大切な仕事です。そのどちらの立場も特別支援教育の実践の知を欲している・・・。特別支援教育が「特別な子への特別な対応」といった誤解から一歩抜け出し、学校種を超えて授業改善や学校運営に大きく関わることを実感してくださっていることの証左です。
私は、研修の場で、子どもたちのつまずきの事例をたくさん紹介し、そこにどんな背景があるのか、改善のきっかけとなるのはどんなことなのか、適切な関わりをしていくとどの程度まで成長するのかなどを徹底的にお伝えします。つまり、問題行動を羅列的に紹介するといった、ありがちな研修のスタイルは一切用いないようにしています。
多くの小中学校の先生方にとって、「○○障害の特徴は・・・」とか「○○障害の医学的な判断基準は・・・」といった研修は最も興味・関心の持てない内容であり、ほとんどの場合、研修を企画した方の意図に反して不発に終わります。かえって反発を招く結果になることも少なくありません。そうした研修をたくさん目にしてきたからこそ、私は上記のような研修スタイルが必要なのだと思っています。「先生方に理解を求める」タイプの研修ではなく、いわば「先生方の観察眼が鋭くなる」タイプの研修スタイルです。
観察眼がするどくなるということは、つまずきの背景(理屈)をよくわかっている、ということに他なりません。縄跳びができないことがなぜ気になるのか、姿勢が悪いことにどんな背景があるのか等が理解できているからこそ、学習や行動の中からつまずきを見い出せるようになるのです。「~は」と書くべきところを「~わ」と書いてしまったり、文字枠に適度におさまる文字を書けなかったりすることのつまずきがわかるからこそ、チェックリストやアセスメントシートなどにチェックがつけられるようになるのです。
ところが、こうした“訓練”を積まずに、気になる子の行動特徴を羅列したチェックリストやアセスメントシートだけをポンと手渡し、「気になる子がいたらつけてください」といった対応を行う自治体・学校がまだまだ少なからずあります。予想以上に少ない数値が出た場合、それは、気になる子が少ないという安堵の報告ではなく、むしろ、子どもたちの困り感を見抜ける教師が少ないのではないかという危機的状況の可能性を示唆していると分析するべきです。
チェックリストは、あくまでも大人側の観察眼を養う目的で活用すべきです。冒頭でご紹介した先生方が、特別支援教育の枠を超えた領域から特別支援教育を見つめなおそうとするのは、きっと自らの観察眼を養おうとする意欲の表れなのだろうと思います。

川上 康則(かわかみ やすのり)
東京都立港特別支援学校 教諭
障害のある子どもたちの指導に携わる一方、特別支援教育コーディネーターとして小中学校を支援してきました。教育技術の一つとしての「特別支援教育」を考えていきます。
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