2007.07.27
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参議院選挙と投票率等に関して

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

この週末は参議院選挙の投票日になる。この日は、私は私用が入っており投票にいけないので、期日前投票をすませてきた。さて、毎度の選挙ですが、いくつか気になることがあるので指摘して問題提起の形としたい。

まず1つ目は、投票時間の繰り上げである。投票時間が全国30%の投票場所で終了時間が繰り上げられるという総務省の発表があった。これは、今の時代に逆行していると朝の番組のコメンテーターが指摘していた。その通りだと私は思う。私たちの生活スタイルが良いか悪いかは別として、夕方以降にも投票できる従来までの形が好ましいと考える。それを平成の大合併で投票用紙を開票場所まで運ぶ時間がかかるからといことを、投票の時間を繰り上げる理由の一つにしている。
こんなことでよいのだろうか。選挙管理委員会は、開票の心配も大事なのだが、投票率を上げる努力をする事が、本来大事ではないのであろうか。そもそも選挙制度は、私が生まれてから、色々と変化している。

2つ目は、投票率を上げるための方策である。このことで選挙管理委員会は取り組みを真剣にしてきたであろうか。正直言って、社会保険庁の事件まではいかないにしても、選挙管理委員会も「親方日の丸」的な発想や仕組みのままで旧態依然としてないだろうか。投票率を上げて、そして国民の意向を選挙で反映するように、本当に考えているのか首を傾げてしまう。
これだけ、社会が数値目標やら説明責任等言葉に汲々しているのに、投票率などに関して数値目標を掲げた選挙管理委員会はあるのだろうか。法的にそのような事をする必要がないのであろうか。別の事務所関係の経費でも、どなたかも法律に従って処理しているので「問題ない」と発言していたが、そういう問題ではないと考える。

オーストラリアは罰金制度を導入していると聞く。投票は権利であるばかりであるだけでなく義務となっている。投票に行かないと原則として50ドル以下の罰金を支払わなければならない、とのこと。だから、投票率はいつも100%に近い。イタリア、ギリシア、ベルギー、ルクセンブルクなど、ヨーロッパにも一部が義務制になっている国があるらしい。投票率に応じて地方交付金の配分を変えてみる方法もあるのではないでしょうか。
(参考http://plaza.rakuten.co.jp/seiyan36/diary/?ctgy=3

国政選挙ではないが、ある地方の首長選挙などでは、投票率が30%程度であっても、当選が確定してしまう事態がしばしば見られた。低い投票率は、非常に危険というか異常な事態であるとは誰も指摘しない。それどころか、「今回も投票率が低くなりました、残念ですね」程度の解説で終わってしまっている。投票していない70%近くの人が、(あり得ないが仮定の話として)全員別の候補にもし投票すれば、十分結果がひっくり返ることになるのである。なのに、誰も異議を唱えていない。本当に日本は、平和な国なのである。

今日本は、法治国家であるとか民主主義が行き届いていると思いこんでいる人が多い。私は、決してそうでないと考えているし、憂えている。一人ひとりの意見や現状や困窮具合等が、社会の変革や改善に反映しているとは余り思えない。政治が国民の意識や現状からどんどん乖離していると思う。
「これは変だぞ、おかしいのではないか」と思っても、それを声に出して訴えたりする機会や方法が知らされているとは言えない。これだけの高度情報化社会の中で生活していながら、適切に行動を起こすことや、声を上げる方法が分からないままにされている。民主主義法治国家という名の下に、結局は「多数決が正しい」という専政的政治が横行しているだけのような気がして心配である。

3つ目は新聞放送などマスコミの心意気である。話は前後するが、マスコミも、開票時間が繰り上げられるという事実の報道をしておしまいになっていないであろうか。このことで何が問題であるのかを、新聞の編集に携わっている方は、この記事に対してどんなスタンスや考えをもっているのかマスコミの一人としての立場を明らかにしていないような気がする。そして、購読している私たちへの投げかけがないのである。一方通行で、双方向でないのである。この記事に限ったことではないのです。投票時間を繰り上げないようにするためにどうしたら良いのかなども紹介してほしいのである。投票時間はいつまでだと良いのか、問いかけてほしいのである。投票時間は誰のためのものでしょうか。有権者のためのものであるべきではないでしょうか。

たとえば、「次のメールアドレスまで皆さんの反対意見賛成意見を集約しましょう。」で、あってもいいのである。「FAXを次の期日まで送って思いとどまらせましょう。」とか、「○○の大臣まで意見を集約しませんか。」等、具体的な行動を提案や道筋を紹介してもらいたいのである。今のままで新聞などマスコミは、何か報道規制を引かれているしか思えないもどかしい状態や現状のままに終わってしまうようである。The pen is mightier than the sword.(ペンは剣より強し)の心意気はどうしたのか。「言論の自由」は絵に描いた餅化してしまったのか、とても心配である。

単純に投票率を上げれば全てが丸く収まるというわけではないが、投票率を上げること一つでも、国民全員で真剣に考えてみてはいかがでしょうか。「板垣死すとも自由は死なず」と言ったとされる板垣退助等を始め、日本の歴史の中で、尊い血を流してまで様々な苦難を乗り越えて確立してきた「普通選挙制度」を、後輩の私たちは重みをきちんと感じて受け継いでいくべきではないでしょうか。

そうです、学校教育の中で、きちんと選挙の意味と投票をすることを教えていくことも、一つの解決策になるかもしれません。投票を「国民の義務の一つ」に格上げすることも考えてみても良いかもしれません。思い切って投票すると住民税が10,000円還元されるとか、投票した人が何か得をするようにできませんでしょうか。今も旧態依然とした名前だけを連呼する選挙カーが、私の家のそばを、立候補者かウグイス嬢のかすれた哀願口調でがなり立てながら、通過していきました。本当にこんな選挙で日本は良いのでしょうか?

だれか私を選挙制度抜本的改革審議会(仮称)の審議委員の一人に推薦していただけないでしょうか(笑)。おっと、少し話が大きくなりすぎたかもしれません。教育と選挙のリンクを考えてみました。

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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