第3回目の投稿記事です。新学期が始まり1ヶ月が経過しましたが、こんな子がきっとクラスにいるのではないかと思います。今回は「じっと座っていることができず、すぐに離席してしまう子」を取り上げます。
小学校に巡回相談にうかがうと、まず始めに、校長室に案内されます。私は、その瞬間から子どもたちの「気になる様子」を見つけることにしています。
ほとんどの校長室には、遠足(1年生は入学式)などで撮影したクラスごとの集合写真が飾られていますが、クラスの中に何人かは、首が傾いた状態で写真に写っている子がいるのです。集合写真では、みんながよい表情で写るよう、一定時間の静止が求められます。ところが、その子たちは静止を持ちこたえることができず、姿勢が崩れてしまうのです。写真撮影だけですからそれほど長い時間ではないと思いますが、それでも首が傾いてしまう。ということは、授業中であればもっと姿勢が崩れるはず。姿勢が維持できなければ、当然のことながらじっと座り続けることも苦手なので、離席や立ち歩き、落ち着きのなさが目立つのではないか・・・と推察するわけです。パッと見の判断ですから、首を傾けて写っている子がみんなそうだということではありません。しかし、その子の状態像を読み解くヒントになると感じています。実際にお話をうかがいながら「もしかしたら、この子ではないですか?」とたずねると、かなりの確率で重なることもわかってきました。
その後、教室をたずねます。担任の先生は、「何をするともなく、フラフラと動き回ることが多い」とか、「座っている姿勢がよくない」といった日々の様子を見て、「落ち着きがない、集中力がない」と分析されることが多いようです。実際に見せていただくと、たしかに、離席が多かったり、椅子に座っていても頬づえをついていたり、背もたれを身体の脇に入れるように肘をのせていたり、足を組んでいたり、机に伏せていたり、いつの間にか椅子の上に膝立ちになっていたりしています。場合によっては、座っていたと思った矢先に床に落っこちていることもあります。多くの場合、常に先生から注意される対象になります。
「気持ちがだらけている」、「やる気がない」、「根気がない」と思われるぐらいであれば、まだよいほうなのかもしれません。時には、性格・しつけ・家庭環境などの問題にすり替えられてしまいがちです。直立できない、机にうつぶせ、床に寝転がることを「深刻な体力低下」の影響だとする見方も根強く存在します。こうした一面が決してないとは言いませんが、見た目の行動だけで判断せず、頻繁に離席せざるをえない背景に、こんな要因があるのだと知っておいてほしいと思います。
私は、座っている姿勢が維持できない背景には、
(1)バランスの崩れを感じ取る感覚がうまく働いていないため、姿勢の維持や調整に気を配りづらい。
(2)身体の筋肉の入れ方や、関節の動きを感じ取る感覚がうまく働いていないため、体の動かし方の細かい調整が難しい。
といったつまずきがあるのではないかと分析します。回転しながら安定を保つコマのようなものだと考えるとわかりやすいかもしれません(写真参照)。動きながらなんとかバランスを保ち、フラフラし始めたと思ったら、一気に回転をやめ横たわる・・・そんなイメージをもっています。決して、「だらけたい」わけでも、「やる気がない」わけでもありません。感覚の使い方や出力部分につまずきがあるために、そう見られてしまいがちなのです。
さて、具体的な支援の方法です。
離席が多い子であっても、常に「不適応」なのではないと思います。短い時間だけなら集中できる、得意な科目のときには他の科目より乗り気、楽しみな給食の間は落ち着いているなどの様子を見せてくれると思います。45分まるまる集中させようと考えず、5~10分のまとまりを作って「適応」しやすい授業にしてはいかがでしょうか。
「短時間集中繰り返しタイプ」の授業を心がけている先生方には共通の特徴があります。
(1)1枚にまとめられるプリントでも、あえて小プリント4枚くらいに分ける。(1回の作業時間を短めに設定できる。)
(2)動きたくなってしまう子に、教材配布などのお手伝いの役目を設定する。(さりげなく動いてよい時間が設けられている。)
(3)教科書の必要な部分だけを小分けにプリントにして配布する。(読む分量を少な目に設定する。)
(4)「○分まで頑張ろう」と、終わりの時間を事前に示す。(見通しを持たせる。)
その一方で、私は、体育の時間をうまく活用できないだろうかとも考えています。体育の授業には、「体ほぐしの運動」、「体づくり運動」があります。この時間をもう少し多めに(できれば通年で)設定してみてはいかがでしょうか。小学校の全ての授業の中で、姿勢の維持の仕方、筋肉の入れ方、関節の動かし方に気付けるのは、おそらくこの時間しかないのではないかと思うくらい重要な時間だと思います。
あらためて言います。特別支援教育とは、「子どもの抱えている問題とその原因を正しく知り、授業に活用する教育」だと思います。
小学校に巡回相談にうかがうと、まず始めに、校長室に案内されます。私は、その瞬間から子どもたちの「気になる様子」を見つけることにしています。
ほとんどの校長室には、遠足(1年生は入学式)などで撮影したクラスごとの集合写真が飾られていますが、クラスの中に何人かは、首が傾いた状態で写真に写っている子がいるのです。集合写真では、みんながよい表情で写るよう、一定時間の静止が求められます。ところが、その子たちは静止を持ちこたえることができず、姿勢が崩れてしまうのです。写真撮影だけですからそれほど長い時間ではないと思いますが、それでも首が傾いてしまう。ということは、授業中であればもっと姿勢が崩れるはず。姿勢が維持できなければ、当然のことながらじっと座り続けることも苦手なので、離席や立ち歩き、落ち着きのなさが目立つのではないか・・・と推察するわけです。パッと見の判断ですから、首を傾けて写っている子がみんなそうだということではありません。しかし、その子の状態像を読み解くヒントになると感じています。実際にお話をうかがいながら「もしかしたら、この子ではないですか?」とたずねると、かなりの確率で重なることもわかってきました。
その後、教室をたずねます。担任の先生は、「何をするともなく、フラフラと動き回ることが多い」とか、「座っている姿勢がよくない」といった日々の様子を見て、「落ち着きがない、集中力がない」と分析されることが多いようです。実際に見せていただくと、たしかに、離席が多かったり、椅子に座っていても頬づえをついていたり、背もたれを身体の脇に入れるように肘をのせていたり、足を組んでいたり、机に伏せていたり、いつの間にか椅子の上に膝立ちになっていたりしています。場合によっては、座っていたと思った矢先に床に落っこちていることもあります。多くの場合、常に先生から注意される対象になります。
「気持ちがだらけている」、「やる気がない」、「根気がない」と思われるぐらいであれば、まだよいほうなのかもしれません。時には、性格・しつけ・家庭環境などの問題にすり替えられてしまいがちです。直立できない、机にうつぶせ、床に寝転がることを「深刻な体力低下」の影響だとする見方も根強く存在します。こうした一面が決してないとは言いませんが、見た目の行動だけで判断せず、頻繁に離席せざるをえない背景に、こんな要因があるのだと知っておいてほしいと思います。
私は、座っている姿勢が維持できない背景には、
(1)バランスの崩れを感じ取る感覚がうまく働いていないため、姿勢の維持や調整に気を配りづらい。
(2)身体の筋肉の入れ方や、関節の動きを感じ取る感覚がうまく働いていないため、体の動かし方の細かい調整が難しい。
といったつまずきがあるのではないかと分析します。回転しながら安定を保つコマのようなものだと考えるとわかりやすいかもしれません(写真参照)。動きながらなんとかバランスを保ち、フラフラし始めたと思ったら、一気に回転をやめ横たわる・・・そんなイメージをもっています。決して、「だらけたい」わけでも、「やる気がない」わけでもありません。感覚の使い方や出力部分につまずきがあるために、そう見られてしまいがちなのです。
さて、具体的な支援の方法です。
離席が多い子であっても、常に「不適応」なのではないと思います。短い時間だけなら集中できる、得意な科目のときには他の科目より乗り気、楽しみな給食の間は落ち着いているなどの様子を見せてくれると思います。45分まるまる集中させようと考えず、5~10分のまとまりを作って「適応」しやすい授業にしてはいかがでしょうか。
「短時間集中繰り返しタイプ」の授業を心がけている先生方には共通の特徴があります。
(1)1枚にまとめられるプリントでも、あえて小プリント4枚くらいに分ける。(1回の作業時間を短めに設定できる。)
(2)動きたくなってしまう子に、教材配布などのお手伝いの役目を設定する。(さりげなく動いてよい時間が設けられている。)
(3)教科書の必要な部分だけを小分けにプリントにして配布する。(読む分量を少な目に設定する。)
(4)「○分まで頑張ろう」と、終わりの時間を事前に示す。(見通しを持たせる。)
その一方で、私は、体育の時間をうまく活用できないだろうかとも考えています。体育の授業には、「体ほぐしの運動」、「体づくり運動」があります。この時間をもう少し多めに(できれば通年で)設定してみてはいかがでしょうか。小学校の全ての授業の中で、姿勢の維持の仕方、筋肉の入れ方、関節の動かし方に気付けるのは、おそらくこの時間しかないのではないかと思うくらい重要な時間だと思います。
あらためて言います。特別支援教育とは、「子どもの抱えている問題とその原因を正しく知り、授業に活用する教育」だと思います。



川上 康則(かわかみ やすのり)
東京都立港特別支援学校 教諭
障害のある子どもたちの指導に携わる一方、特別支援教育コーディネーターとして小中学校を支援してきました。教育技術の一つとしての「特別支援教育」を考えていきます。
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