2007.04.20
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清掃中の会話から

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

今日一人の生徒(Sさん)と清掃中に話をした。
「先生、○○君は、決まったことをみんなにさせることは出来る人なの。でも、何かを話し合って決めようとすることは得意ではない。私は、どちらかというと逆で、みんなの意見を集約して、まとめる方が得意なの。」
Sさんは、リーダーに2種類あることを、上の事で言いたかったみたいだ。また自分をアピールすることも含めている。
Sさんとの話で、私は「リーダー」にも色々なタイプがあるのではないかと考えるきっかけをもらえた。私は「リーダー」というと、クラスを統率できることで、この中には、当然(1)みんなの意見をまとめることができる(2)決まったことを、全体にさせることができる。(3)みんなの人望がある。(4)勉強・学習ができる。(5)運動神経が発達してスポーツができる。などが含まれると思いこんでいた。
しかし、今回に限らず、最近の「リーダー像」が生徒の間で変わってきているのではないかと感じた。
上のことは、今更のことでなく、小学校や中学校の担任の先生方には周知のことなのかもしれない。本当に小学校や中学校の先生方は生徒児童を一人ひとりに的確な役割や責任を任せて、個々の良いところを伸ばそうと丁寧に指導しておられる。このことには、高等学校側ももっともっと見習うべき事があるのではないかと考えている。
Sさんも、間接的に「先生、私たちの良いところを多面的に評価して、その上で役割を振り分けてください。私も言われたらやりますから」というメッセージを送ってくれたのだと解釈した。このメッセージにどう答えるかを、実はSさんだけでなく、クラスの生徒は様子見しているのではないかと考えると、ちょっと緊張してきた。一方楽しくも思えてきた。がんばろう。
次のことはどうであろうか。「先生、△△さんが掃除していません」とAさんが私に訴えてきた。私は、早速△△さんに「掃除するぞ」と声をかけ、みんなと同じ行動を取れるように促した。廊下で携帯電話をかけていたのである。どの生徒も不公平感を嫌う。先生に清掃をしている人、そうでない人をきちんと見ていて、注意し、清掃をさせるよう期待しているのだと感じた。このサインをうやむやにしてしまうと、今清掃に取り組んでいる生徒たちが、次回から掃除をいい加減にする予備軍へ変わっていってしまう危険が潜んでいる。
清掃中だけでなく、高校生なんだからということでなく、学校生活のあらゆる場面で、一人ひとりの生徒からのシグナルにできる限り敏感にそして、できる限り誠実に丁寧に応対していきたいと考えている。

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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