2016.01.26
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「小1プロブレム」へ対処する方法

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

1月も終わりになります。

日本全国、寒い日が続いています。

元気でお過ごしでしょうか?

 

今回は、幼稚園・保育園から小学校へのつながりについて書きたいと思います。

 

幼稚園・保育園から小学校へのつながりは、互いの学校の違いなどが原因とされる「小1プロブレム」などが知られています。

それぞれの学校のシステムの違いなどにより、子どもが落ち着いて小学校一年生の生活を順調に行うことができない状態とされます。

幼稚園・保育園から小学校の段階だけの問題ではなく、小学校から中学校の段階でも同様の問題があります。

それらは「中1ギャップ」と呼ばれます。

学校における不登校の人数が最も多いのは、中1だとされています。

これは、小学校と中学校のシステムの違いなどが原因で、子どもが学校に行かれない状態になっているものです。

小学校と中学校との段差についても様々な課題があるのですが、今回は、幼稚園・保育園から小学校の段差について話題にしたいと思います。

 

幼稚園・保育園から小学校の段差については、幼稚園・保育園と小学校のシステムの違いが原因の一つだとされています。

しかし、最近の学校での様子や報道などを見ていると、システムの違いだけではなく、それぞれの子どもの多様性の問題が大きく関わっているように感じます。

近年、小学校に入学してくる子ども達、そして、その子どもに大きな影響を与えている保護者が様々な意味で多様化しています。

 

「読むことができない名前」「金髪などに染めた頭髪」「色とりどりのランドセル」

 

こういった目立つ部分だけでなく、学校からは見えにくい所でも様々なことがあります。

 

「子どもに朝食を食べさせない」「子どもに暴力を振るう」「夜遅くまで遊びで連れ回す」

 

こういった様々な背景を持った子ども達が小学校に入学してきます。

小学校の基本的なシステム(椅子に座り、良い姿勢で、教師の話を聞くスタイル)は明治5年の学制以来変わってはいません。

このような古いシステムでは、現在の多様化した状況に対応できない部分もあります。

これまでの小学校で通常に行われてきたやり方を通そうとすると様々な摩擦が生じます。

それらが現在「小1プロブレム」として表れているものだと思います。

 

そういったことに対する対策が考えられ、取り組まれています。

幼稚園・保育園の教員と小学校の教員が様々な形で交流をしていくことなどです。

子どもについての情報交換を行い、子ども理解を深めるということをねらっています。

小学校への体験入学などを実施している学校もあります。

新入生が少しでも小学校に慣れることなどが目的です。

 

そういったこと以外に非常に重要だと私が思っていることが「小学校の教員の考え方」です。

先ほど書いたように小学校のシステムは昔ながらのものです。

授業は、椅子に座り、黒板を用いて、ノートに字を書きながら行われます。

こういった「当たり前」のことができない子どもは「困った子ども」とされます。

小学校の教員が思う「こうあるべき」というものを少し柔軟にすることで小1プロブレムの問題は少し改善できるかもしれません。

小学校という「型」に当てはめることを強調しすぎず、その「型」を少し広げたり、柔らかくしたりするということです。

小学校一年生は「学び方を学ぶ」時期であるため、「型」に当てはめることに重点を置きすぎる場合があります。

そうなると、どうしても担任は子どもを叱る場面が増えてしまいます。

それでは、子どもと担任との信頼関係を十分に築くことができず、悪循環に陥ってしまうこともあります。

担任が「長期的な視野で考えるようにすること」や「子どもの置かれた背景を理解すること」などで、子どもへの接し方に少し変化が出てきます。

そういったことの積み重ねが、スムーズな小学校の生活のスタートにつながるのだと思います。

 

小学校一年生、特に始めの時期の過ごし方は、その後の学校での学びにおいて非常に大きな影響を与えます。

大げさに言えば、その子どもの人生にも影響を与える程のことです。

そういった時期がスムーズに送れることを願います。

 

 

これから寒い時期、そして学年末の忙しい時期となります。

身体を大事になさってください。

 

 

以前、小1プロブレムについて書いた文章があります。

また、私の研究や実践をまとめているページがあります。

興味のある方はご覧ください。

 

「小1プロブレムにどう対処していくのか」 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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