2015.12.17
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「テロとの戦い」と「学校教育」

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

もうすぐクリスマス、そして年末年始になります。

子ども達にとっては楽しい日々なのだろうと思います。

教師にとっては、成績処理など、一仕事が残っていますが、それを終わらせれば、冬休みです。

もうひと踏ん張りがんばりましょう。

 

ところで、今回は、世界平和や国際政治と学校教育について書きたいと思います。

 

 

最近、日本は平和なのだとよく感じます。

フランスのような大規模なテロはないですし、シリアのように空から爆弾が降ってこないですし、北朝鮮のように独裁国家でもないです。

 

しかし、こういった日常(平和な日々)は、場合によってはあっという間に壊れてしまう可能性があるとも感じています。

もし、テロリストが本気で日本でテロを起こそうとしたならば・・・。

日本の平和なのんびりとした日々は一変するはずです。

 

基盤の部分に「平和」があるからこそ、日本にいる人たちが様々な活動を行うことができています。

経済活動もそうですし、教育もそうです。

勿論、娯楽などもそうです。

もし日本でテロが起こったら、テレビからお笑い番組がなくなるでしょう。

経済活動も制限を受けるはずですし、旅行どころではなくなるはずです。

学校における教育も少なからず影響を受けるでしょう。

その最たるものは第二次大戦末期の学校における軍事教練などでしょう。

 

東日本大震災では、日本は非常に大きな打撃を受けました。

日常の暮らしが一変しました。

私自身、ガソリンを買いに長い列に並びましたし、計画停電では電気のない暮らしの心細さと不便さを体感しました。

しかし、福島に住んでいる人間ではない私は少しずつそういった経験を忘れかけているように思います。

私だけでなく、日本中の人がそうなのかもしれません。

原発が動き始めています。

あれだけ放射能は怖いと思ったはずなのに・・・。

 

日本がまた戦争に巻き込まれるようで私は不安でなりません。

戦争を実体験した人達は、すでに高齢になってきています。

少しずつ人数も減ってきています。

日本人の多くが「もう絶対戦争は嫌だ」と思ったであろう時から70年以上が過ぎ、今の私が東日本大震災の時の放射能の恐ろしさを忘れつつあるように、今の日本中の人たちが戦争への恐怖を忘れつつあるように感じます。

 

 

さて、最近の国際状況を見ると、テロが拡大しているように見えます。

暴力が暴力を呼び、暴力の連鎖が続いている状況です。

 

パリでの大規模なテロがあった後、シリアに関してトルコとロシアが揉め出しました。

アメリカで銃の乱射事件も発生しました。

テロ事件だということで捜査が進んでいます。

イギリスでもナイフを使った事件が発生しました。

 

日本人として少し悲しいことは、BBCなどの欧米のメディアでは、自爆テロを報じる際、「KAMIKAZE Attack」と表現していることがあることです。

第二次大戦末期の旧日本軍の決死の攻撃がこのような形でクローズアップされるのはとても悲しく、心が痛みます。

 

テレビの報道番組では、テロの解決の糸口がなかなか見出せないと評論家が話していました。

確かにその通りなのでしょう。

これだけ世の中が複雑になり、経済的にも文化的にも多面的に国々が絡み合って成り立っている現在の状況においては、何かを大事にしようとすると他の部分で不都合が生じるのでしょう。

そんな状況であるからこそ、私はもっとシンプルに考えていくことが大事なのだと思っています。

 

フランスやイギリス、アメリカなどの各国は「テロは卑劣だ」と言っています。

しかし、ISの立場からすると、「空からミサイルを落として、民間人も含め、多くの人を殺害しているフランス、アメリカ、ロシアなどの方が卑劣だ」と言っています。

また、ロシアとトルコの問題に関しても、ロシアは「トルコはISの石油を買っている」、トルコも「ISの石油の売買にはロシアの男が関与している証拠がある」と言い合っています。

 

少し離れた立場から見ると、そのどちらもあっている部分はありますし、間違っている部分もあるのだと思います。

小学生の喧嘩も全く同じです。

それぞれの主張はそれ自体正しい場合が多いです。

「相手が悪口を言ってきたから、ぶった・・・」「口で言っていたのに、ぶってきたから蹴り返した・・・」

私が子どものけんかなどのトラブルを指導する際は、相手ではなく、自分に目を向けさせます。

ある程度の事実確認をした後に「今回のトラブルで、自分の問題点はどこなのか?」と聞いていきます。

相手を批判している限り、通常、揉め続けます。

それぞれが、「悪口を言ってしまったのが悪い」「口で言われたのに手を出したのが悪い」という部分に話を持っていきます。

そして、最後は、それぞれが「もう少しだけ努力をするように、我慢をするように」と伝えます。

「もう少しだけ」というのがポイントです。

自分自身の問題として、「もう少し」何ができるのかを考え、それを実行していく。

もちろん、戦争やテロなどの問題はお金や宗教など様々なものが関係し、子どものけんかのように単純ではありません。

しかし、現在の世界の状況を見ると、もっとシンプルに考え、対応していかなければ、問題が解決していかないように思います。

 

現在の日本の状況は、まだ直接的にテロとの戦いに巻き込まれていないように感じます。

しかし、時間の問題で様々な形でテロとの戦いに巻き込まれるような気がします。

自衛隊の派遣もそうですし、オリンピックを控えた東京など日本の都市部におけるテロの発生もあり得ます。

原子力発電所やダムなどの重要施設が狙われるということもあり得ます。

 

何かあってからでは、遅いのではと思います。

原発の事故が起こって、初めて、放射能の恐ろしさを実感するのでは駄目だということです。

想像力を働かせ、トラブルを未然に防ぐことにエネルギーをかけるべきだと思います。

これは、次元が違いますが、私が普段、学級経営で行っていることと全く同じです。

 

それと共に、教育に今まで以上に力を入れていくことが大事なのだと思います。

ノーベル平和賞を受賞したマララさんが言っているように「教育」には大きな可能性があります。

小さな頃から平和についての考えを深めていくことは大事なことです。

先ほど書いたように戦争は子どもの喧嘩に構造が似ています。

子どもに小さい頃からトラブルの対処法を学ばせ、平和の尊さを伝えていくのです。

日本の世界に置ける位置付けについてもしっかりと教えていくことも大事でしょう。

唯一の被爆国であること、侵略戦争を起こしその後負けたこと、歴史的に中東諸国との関係が良いこと、宗教に寛容であること、奇跡的な経済復興を成し遂げたことなどです。

そういった日本の独自性がテロとの戦いおいて、日本が果たすべき役割につながっていくと思います。

 

 

日本の幸せな暮らしが一変してしまうような出来事が起こらないことを心の底から願います。

 

日本が平和であり、世界が平和であることを願います。 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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