2015.08.28
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

夏休み明けに担任が配慮すると良いこと ~夏休み明けには「昼寝をしない」という宿題を~

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

そろそろ夏休み明けの学校が始まった頃でしょうか。
夏休み明けは、教師にとっても子どもにとっても少し厳しい時期です。
この時期を上手に乗り切り、充実した二学期のスタートへとつなげていきたいものです。

ところで、夏休み中に文科省から驚かされる統計が発表されました。
子どもの自殺に関するもので、42年間の子どもの自殺を日にちで整理したものです。
その統計によると、子どもの自殺が最も多かったのは、「9/1」だそうです。
「4/11」「4/8」と続いています。
その後は「9/2」「8/31」だそうです。
夏休み明けと年度はじめの時期が特に多く、夏休みの後半(8月中旬以降)は、どの日にちも多いものとなっているそうです。

小学校の現場にいる感覚としては、確かに夏休み明けに子どもが様々な学校への不適応を起こすということに納得です。
「登校渋り」から「不登校」へとつながることもあり得ます。

こういった時期に教師が配慮することで、子どもがスムーズに学校生活に戻ることができます。
今回は、「夏休み明けに担任が配慮すると良いこと」をまとめました。

なぜ、夏休み明けが子どもにとって厳しいのかというと、それは「リズムが狂っている」からです。
夏休みの期間に、生活のリズムが崩れてしまうことが多いのですが、具体的には「体」と「心」についてです。

「体」とは、睡眠、食事などの乱れです。
夜遅くまで起きていて、次の日の朝が起きられない。
昼寝などをすることもできるので、夜に寝る時間がさらに遅くなってしまい、悪循環に陥ってしまう可能性があります。
学校がある日とは違い、その日その日にやらなければならない宿題もありません。
そういったことが、夜遅くまでテレビを見たり、ゲームやスマホなどをしたりということになる可能性があります。
特に男子は注意が必要です。
小学生の歩数について調査した研究に、平日と休日の歩数を比べると、男女共、平日よりも休日の方が歩数が少なかったのですが、男子の方が歩数の減り方が大きかったというものがありました。
これは、女子よりも男子は休日にあまり身体活動をしない人が多いということになります。
ゲームなどに触れる時間が多くなっているのではないかと推測されます。
夏休みは、暑さなどの影響もあり、子どもがあまり外遊びなどをしない傾向にあります。
テレビ・ゲーム・スマホなどと関連した生活の乱れに注意が必要です。

 次は「心」についてです。
夏休みは、大半の時間を自分のペースで過ごすことができます。
自分がやりたいことを自分のペースでやっていたものが、急に学校が始まって、学校のリズムに合わせないといけなくなることが子どもの大きなストレスになる可能性があります。
また、一年生を中心に「母子分離ができない」ということもあるかもしれません。
幼稚園や保育園から小学校へ入学直後の4月によく見られる「母子分離ができない」というものが夏休みを経たことで、また出てしまうようなケースです。

では、今書いたような「体」や「心」のストレスに対して、どの様に学校で対応していくと良いのかについて書きます。

まず、「体のリセット」です。
これは、体を動かすということが重要です。
特に、朝に体を動かすことで、血流がよくなり、目が覚めます。
運動は、体をリラックスさせ、睡眠のリズムを整える働きがあるとされています。
まだまだ暑い時期ですが、そういったことに配慮しながら、軽い運動などに取り組みます。
その際は、鬼ごっこなど子どもが互いに関わり合いを持てるような遊びの要素のある運動がおすすめです。
もう一つ、体に関して大事なことが「昼寝をさせない」ということです。
夏休み明けの数日は、給食がなかったり、早く家に帰ったりすることも多いです。
そういった日々で、家に帰ってから午後に昼寝をしてしまうと、夜に寝る時間が遅くなります。
保護者にも協力してもらいながら「昼寝をしない。早寝早起きをする。」という宿題を出すことも良いアイデアです。
そういった宿題を出すことで、親にも子どもにも、生活リズムを整えることを意識させることができます。
生活リズムを整えるために私がしていることがもう一つあります。
この記事が公開される時点では、少し遅いのですが、夏休みが終わる少し前に子どもたちに残暑見舞いを送るというものです。
夏休みが終わる10日程前に、私は子ども達に葉書を出すようにしています。
「もうすぐ夏休みが終わります。生活リズムを整えるように。」と書いて送ることで、子どもも大人も生活リズムに気を配らなければと思ってくれることを狙っています。
特に親を意識しており、葉書なので、親も目を通すことで、親が生活リズムへの配慮をして欲しいという願いです。

次は「心のリセット」です。
大人であり、教師である私も、長期休業明けは、気分が落ち込みます。
「面倒だな」「嫌だな」という気持ちを抱えるのは、自然なことです。
学校が再開し、友達と遊べる事などで、嬉しくてたまらないという子どももいるかもしれませんが、私のようにテンションが下がっている子どもも多いはずです。

ここでも、おすすめは「運動」です。
うつ病や不安障害の人に対して、軽い運動をするという療法があるそうです。
体を動かすことで、ネガティブな気分が発散されるという効果があるそうです。
「楽しい」という要素も大切でしょう。
子どもに、「やはり学校は楽しいな」と思ってもらえれば、他にストレスがあったとしてもそれを乗り越えていける可能性が高まります。
学校だからできることで、楽しさを味合わせたいです。
一人でやるバーチャルなゲームなどとは違った、人との関わりの中での遊びなどに取り組んでいきます。
体のリセットも兼ねた運動系の遊びも良いですが、「学習ゲーム」もおすすめです。
「学習ゲーム」とは、勉強に関連した遊びのことです。
例えば、「地図記号などを使った神経衰弱」「百人一首」「カルタ」「ビンゴ」などです。
子どもは夢中になります。
バーチャルなゲームとは違った魅力があるのでしょう。
学習に関連するものであれば、一学期の復習や二学期の学習の導入にもなり、一石二鳥です。
また、「理科や生活科などの観察や実験」などを取り入れる学習も「学習ゲーム」同様、子どもが意欲的に取り組みます。
理科に関係する「ネイチャーゲーム」もおすすめです。
木、花、昆虫などを利用します。
暑い時期なので、水を利用した遊びは心地良いです。
海や川がそばにある学校では、それらを利用したアクティビティが最適かもしれないです。

 教師が少し配慮することで、子どものトラブルは防げるものもあります。
順調な新学期となることを願っています。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop