この4月から通常の勤務(小学校の教員)をしながら、通信制の大学院(放送大学大学院)に通っています。
教員と大学院生の生活を1か月送りました。
現役教師が通信制の大学院で学ぶ利点について書きたいと思います。
現役教師が大学院などでキャリアアップのために学ぶにはいくつかの方法があります。
一つ目は、勤務校には行かず、長期出張のような形で研修に出るものです。
これは、自分が研修に出ている一年間または二年間の不在の間、補充のための臨時の教員が勤務校で代わりの仕事をしてくれます。
もちろんそのために年間数百万の費用がかかります。
大学院などの学費は自分で払うことが多いですが、その間の給与や身分は保障されています。
研修後は、教育委員会の指導主事や教頭、校長などの管理職へステップアップしていく場合が多いです。
これは条件が良いこともあり希望者も多く、倍率が高く、なかなか試験を通ることができません。
また、様々な面で、行政(教育委員会)からの影響を多く受けるため自由に研究などができない場合もあります。
具体的には、研究のテーマが指定されることなどがあるというものです。
二つ目が、「休職」しながら、大学院などに通うものです。
10年ほど前に、「大学院修業休業制度」というものができました。
これは、休職扱いなので、給料は出ませんが、身分は保証されたまま、専修免許取得のために大学院に通ったり、国外の大学などに留学したりすることができます。
期間は、1~3年とされています。
上で書いた派遣よりも給料出ていない分、自分の意志で決められることが多いです。
こういった人を大学院側も想定しており、勤務校での実践を大学院の単位として認定するという制度もあります。
こういった制度を上手に利用することで、一年間で大学院を修了するということも可能になっています。
詳しくは各大学のHPなどで調べてみてください。
私は、上の2つと違った、「通常の勤務をしながら、通信制の大学院に通う」というものです。
上の2つと比べ、忙しさはあるのかもしれませんが、それ以上のメリットがあると感じています。
現役教師が通信制の大学院で学ぶことのメリットの1つ目は、「研究対象が目の前にある」ということです。
現役教師が大学院などで学ぶ際、研究の対象は子ども達になることが多いです。
例えば、「○○の歴史的変遷」など資料を読み込むような研究もありますが、通常は子どもを使って、どのような変容があるかという研究になります。
そういった際、目の前に、調査の対象となる子どもがいる場合、研究がスムーズに進むことが多いと思います
また、大学院では修士論文に向けた研究だけでなく、通常の授業を受け、単位の取得も目指していきます。
そういった授業の中で、興味深いと感じるものにたくさん出会います。
最新の理論などがそれに当たります。
私は大学を卒業してから、約20年になります。
その間の教育界の進歩を、今、身を持って感じています。
最新の理論を聞くと、是非試してみたいと思うものです。
自分が担当している子どもが目の前にいれば、様々なことを試すことができます。
委員会からの派遣の場合や休職の場合、その年に担当している自分のクラスの子どもがいないので「気軽に試す」ということがやりにくい状況です。
研究授業などをしようとしても、他の人のクラスを借りて行わないとならないので、打ち合わせの難しさや子ども把握の難しさなどがあります。
自分のクラスを持ったままで、様々な研究ができるということだけでも大きなメリットだと感じます。
2つ目は「経済的なメリットがある」ということです。
先ほど書いたように様々な形で現役教師が大学院へ行くことができます。
教育委員会からの派遣や休職制度を利用する場合は、通学制の大学院に行くことが一般的です。
その場合、学費が大きな問題になります。
通常の学生と同じように学費を支払わなければならないので割合高額になります。
大学院生ですが、基本的にそれなりに所得があるので、奨学金などはもらえないことがほとんどです。
学費については、例えば次のようになります。
通学制国立大学法人の場合
東京学芸大学教職大学院2015年入学
入学金282.000円 授業料535.800円(年額)
2年間合計 約135万円
通学制私立大学の場合
玉川大学教職大学院2015年入学
授業料を含む支払総額 1年次955.200円 2年次825.200円
2年間合計 約180万円
通信制大学の場合
放送大学大学院2015年入学 ←私の場合です
入学金48.000円 授業料11.000円(1単位当たり)22単位必要なので220.000円
研究指導料 176.000円
2年間合計 約45万円
この様に授業料に大きな違いがあります。
放送大学大学院は、通信制の中でも最も学費が低額な学校です。
他の通信制の大学院も放送大学程ではないにせよ通学制よりは低額であることが多いです。
現役教師の中で大学院などで学ぼうと考えている人は、家庭を持っている人も多いと思われます。
そうなるとどうしても「お金の使い道」ということを自分だけの考えではなく、家族全体で考えなくてはならなくなります。
約50万円や100万円のまとまった額であれば、「住宅ローンの返済」、「子どもの教育費」、「家族の旅行」、「退職後の備え」など様々なことに充てることができます。
そういったことを考えると、通信制大学院の「学費が低額である」ということは大きなメリットになります。
家族の説得もしやすくなると思われます。
金銭面でのハードルが低くなることで可能性が出てくる人もあると思います。
現役教師が大学院(大学院だけではありませんが)で学ぶことで、教育という仕事の面だけでなく、活動的に生きるということにつながっていくと感じています。
是非、色々なことを検討し、スキルアップにチャレンジできると人が増えるとよいと思っています。
私の大学院での研究や日々の教育実践をまとめているHPがあります。
実践で使ったパワーポイントのデータなどもあります。
興味のある方はご覧ください。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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