2015.04.03
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クラスの出会いをプロデュースする教師力

広島県公立小学校 教諭 中村 祐哉

さぁ!新年度のスタートです!

 新年度がスタートしました。この記事の公開日になります4月3日,学校教職員のみなさまにおかれましては,新年度準備や事務作業・教室整備等で一年の中でも最も多忙な時期の一つといっても過言ではないかと思います。

 新年度,子どもたちの登校日初日に気持ちの良いスタートが切れるよう,私自身も忙しい時期だからこそ丁寧に準備を進めていきたいと思っております。そして,『教育つれづれ日誌~第17期~』もどうぞよろしくお願い致します。

 さて,今回は,第16期ラストの記事に関連付けながら,引き続き『クラスのメンバーとの出会い』にスポットを当ててお話を進めていけたらと思います。『学級開き』か近づくこの時期,新年度のスタートを切る際に教師は,どんなヴィジョンをもって臨むのか,物理的な準備にどんな意味や思いを込めてその準備を行っているのかなど,学級の場面設定ごとに少しずつではありますが考えていきたいと思います。

 

子どもたちの様子を見抜く『学級開き』へ

 新年度,学級スタートの初日,子どもたちはドキドキしながら登校してきます。

 登校中は,久しぶりに出会える友だちと会話が弾み,クラス替えがある学年は,学級編成一覧表が張り出してある前で立ち止まり,自分の名前を探します。そして,新しい教室の新しい座席に座る間もなく,新しいクラスの友だちや以前のクラスの友だちのところへ行ったりしながら,ワクワクの朝を迎えます。体育館での始業式を終えて,初日は回収物や配布物等で忙しく,午前中授業の学校などは,新しい学級担任からゆっくり話をする時間がもてないかもしれません。

 では,限られた時間でどんな話をすればよいのでしょうか?そこで見抜ける学級の子どもたちの様子は?など,学級のパターンごとに考えていきたいと思います。

 

(1)子どもたちのクラス替えがあり,新しい学級担任となる場合

  子どもたちの担任の先生や新しい友だちへのイメージは真っ白です。

 初日は,先生から子どもたち同士をつなぐ楽しい話題を振り,全員を笑顔で下校させる話を中心にしていきます。

 また,そんな中で仲の良かった昨年度までの友だちと別々のクラスになってしまい,気持ちが落ちている子どもなどは初日でも様子をよくよく見ると,必ず見抜くことができます。そのような子どもがいたら,帰り際に,一言声かけをすると「なんでわかったの~?」としょんぼりしながらもビックリして帰宅していきます。その一言があるかないかでその子にとっての大切な一年のスタートは大きく変わると感じています。

 

(2)子どもたちのクラス替えがなく,学級担任のみが新しく加わる場合

  子どもたちの人間関係が出来上がっているクラスに入ることになります。

 初日は,その人間関係を見るのには重要な一日になります。プリントの渡し方から,休み時間の子どもたち同士の関わりまで,担任の先生へのイメージが真っ白だからこそ,垣間見える人間関係があるはずです。

 帰り際には,教師から子どもたち一人一人に声かけをしてから下校させ,教師と子どもが関われる機会をできるだけ多くもちたいものです。

 

(3)子どもたちのクラス替えがなく,昨年度に引き続き,同じ学級担任が受け持つ場合

 担任教師と子どもたち,そして子どもたち同士も人間関係ができている状態での新年度スタートとなります。

 ここでは,『進級したこと』にスポットを当てる話を積み重ねていきます。「先生も○年生 の担任として,みんなと一緒に進級できた喜びがある!」という話を中心に,その学級の担任が2年目となる強みを子どもたちへ伝えます。

 ただ学年が上がっただけには決してならない新しい風を学級に吹き込めるのは,まずは担任の先生のお話や様子・姿勢からです。

 初日は,とにかく子どもたちに「○年生(昨年度)までとは違うんだなぁ!」と感じさせて下校させることに重点を置きたいものです。

 

学級ヴィジョンを伝え「学級目標」を立ち上げるということ

  教師が新年度の学級ヴィジョンをもって学級経営をすることはとても大切なことですが,そのヴィジョンを子どもたちに伝えるということは,もっと重要なことだと感じています。

 小学校低・中・高学年の発達段階に応じて,その伝え方は様々だと思います。ここでは私自身が経験の多い高学年(第5学年から第6学年への進級)を例に取り上げてみたいと思います。

 第6学年への進級に対して,子どもたちへ伝える学級ヴィジョンのお話のキーワードとして,私は「最高学年」「自覚」「責任」「カウントダウン」「プライド」「ヴィジョン」などを挙げています。高学年の場合,言葉の意味を再認識させることで子どもたち自身がそれぞれ学級ヴィジョンを明確にもつことへの指針付けになると感じています。

 例えば,これまで普段なにげなく使ってきた「自覚」という言葉の意味などは,もう一度子どもたちと再考していきます。

 「自覚」とは,「学校生活において自分の立場を常に覚えておくということ」どういうことかというと,常に最高学年である6年生だということを覚えていながら,学校内で行動することができれば,それは最高学年としてふさわしい6年生である,ということです。

 6年生の名札をつけて学校生活を送るということはそれだけ重みがあるものだということを子どもたちに感じさせます。

 そして,これら教師が目指す学級ヴィジョンと子どもたちが目指す学級像を掛け合わせたものが学級目標になります。

 学級目標は,抽象的なものにならないように,具体的な場面を子どもたちそれぞれが想像できるものでなければならないと思っています。

 例えば「仲良く」や「協力」などの言葉を学級目標に入れる場合は,どのような場面でどんなことが達成されれば「仲良く」「協力」という目標を達成できたことになるのか?教師と子ども両者が共通認識のもと,それを把握しておかなければならないと感じています。

 また,学級目標は常に教師も含めて学級全員が頭に入っておかなければ,その目標に向かって日々の学校生活を送ることは難しくなります。

 子どもたちが覚えやすい学級目標を語呂よく作っていくことも工夫のひとつかなぁと思っています。

 

 このような記事を書かせて頂いていると,今から新しい学級の子どもたちと出会える日をとても楽しみに感じます。子どもたちの成長と笑顔のために,新しい学級のスタートまでにきっちり準備を進めたいものです。

 

 さて,次回は4月22日水曜日の更新になります。とにかく多忙な4月ではありますが,読者のみなさまと共に,子どもたちの成長を喜びに,充実したスタートが切れればと思っております。まだまだ未熟な実践ではありますが、次回もぜひご拝読いただければ幸いです。どうぞよろしくお願い致します。

中村 祐哉(なかむら ゆうや)

広島県公立小学校 教諭


「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。

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