2015.03.23
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クラスの別れをプロデュースする教師力

広島県公立小学校 教諭 中村 祐哉

 進級によるクラスのメンバーとの別れ

 3月…温かな日差しが降り注ぐ日も増えてきた今日この頃。

 子ども達が4月から進級する学年でクラス替え(複数学級ある学校)がある場合,1年間,もしくは2年間を共に歩んで来たメンバーとの別れは必ずやってきます。

 子ども達のその別れに対する感じ方は様々です。ここでは別れという言葉を選んでいますが,プラスファクターの言葉を使ってこの時期を表現するなら,それは別れを越えた先にある子ども達の成長を,子ども達自身に掴ませ,実感させる時期でもあるということです。

 それはこの時期にしかできないことであり,4月になってからではなかなか難しいことです。

 4月になれば,「どの子と同じクラスになるのかな?」「新しい担任の先生はどんな先生なのかな?」と子ども達は自然と気持ちを前へと切り替えていきます。

 つまり,この時期にしか感じることのできない気持ちを子ども達により感じさせてやりたいのです。

 今回は,この必ずやってくるクラスの別れをプロデュースするための教師の手立てやアプローチを,まだまだ未熟な私の実践ではありますが,ご紹介させて頂ければと思います。

 

 今までのクラスの積み上げを最後の一日で振り返る

  修了式・卒業式前夜は,学校に泊まり込むくらいの勢いで,最後の一日に向けてのプロデュースを開始します。

 仕事に関しては,今できるものや頼まれたものはすぐに取りかかり,時間を生みたいタイプの私ですが,これだけは,どうしても前日の子ども達の下校後にしか始めることができません。

 ここでは,私がクラス最後の一日に向けて手を加えて準備する教室内の3カ所について,場所ごとにその過程をまとめていきたいと思います。

 

1.子ども達の机上…『○年○組卒業証書』・『このクラスでの最後の一日を迎える私へ』・『保護者からの手紙』

 子ども達の机上には,一人一人に対して担任である私が色画用紙で心を込めて作った『○年○組卒業証書』を置いていきます。

 みんなで撮った集合写真や,その子の頑張ったシーンを貼り,一人一人に手書きのメッセージを添えて,担任の印鑑も押して…開くだけで子ども達が「わあ~」と感嘆の声が洩れるくらい作り込んだものを置きます。

 そして,その横に置くのは,『過去の自分』から『今の自分』当てた手紙です。

 これは4月の段階からすでに準備しておかなければならないものですが,学級がスタートしてから一週間程度経った時期に『このクラスでの最後の一日を迎える私へ』(第6学年なら『卒業する私へ』)という内容で子ども達に『未来の自分』に宛てた手紙を書かせておきます。ほとんどの子ども達は忙しい4月のことですから,目の前にこの手紙が現れるまで,この手紙を書いたことすら覚えていません。これを一年間,担任が預かり,この日,子ども達の机に置いておきます。

 机上の手紙を見ながら,子ども達はみんな「これ書いた書いた~」と,とても懐かしそうに,また手紙に書いた自分になることができているか,などを確かめながら読んでいました。

 最後に,『○年○組卒業証書』『このクラスでの最後の一日を迎える私へ』(卒業する私へ)の下に,もう一枚お手紙を置いておきます。封筒は,なにも書いていないまっさらなものを使います。そして,その手紙は全員で開きます。

 送り主は…子ども達の保護者です。担任から最後の懇談会などで内緒で保護者に手紙のお願いをし,子ども達への思いを込めて書いて頂きます。この手紙を開いた瞬間,これまでの明るく穏やかな笑顔が溢れる雰囲気から,クラスの空気感は一変。子ども達はその手紙を真剣なまなざしで読み,特に高学年の子ども達の多くは,涙します。

(※ここで子ども達から自然に溢れ出てくる涙を,自然に流すことのできる学級経営とクラスの雰囲気づくりを一年間でおこなっておく必要もあります。)

 特に,普段の学校生活とは違って,家庭の中では,なかなか素直な態度を表せないことが多い子ども達の方が,この手紙に心打たれ,感動と感謝の気持ちを改めてもったと言っていました。

 子ども達の机上にはこの3点を準備します。

 

2.学級掲示…『一年間発刊してきた学級通信』

 修了式の日までに,私はクラスの掲示物は常掲のものも含めて最後の一週間で全て外します。

 それは,子ども達にクラス最後の日が近づいてきていることを教室環境からも意識させると共に,これからの活動を際立たせるためでもあります。

 子ども達が下校した後,今まで一年間発刊してきた200枚にもおよぶ学級通信の全てを貼り出します。

 教室全体を取り囲み,廊下にも掲示が出てしまうほどの量です。修了式の朝,学級通信に囲まれた教室に入ってきた子ども達は,驚きと共に,さっそく友達と学級通信を眺めながら,思い出話に花が咲いていました。

 

3.黒板…『子ども達全員の似顔絵』・『担任からのメッセージ』

  黒板は,『子ども達全員の似顔絵』(図画工作科で作ったもの,または担任がチョークで手書き)と『担任からのメッセージ』でいっぱいにします。

 毎年,子ども達の様子や実態に沿って書く内容は様々ですが,私が必ず入れているフレーズは,

 『今日まで歩んで来た一歩は○組みんなで歩んだ一歩 明日歩む一歩はあなた自身の一歩』

という言葉です。新しいクラスや中学校に向けて,最後は子ども達を送り出すことが担任の使命です。

 いつまでもあのクラスがよかったと子ども達に言ってもらえることは担任としては大変幸せなことですが,この送り出すということができなければ,本当の別れをプロデュースしたことにはならないと感じています。

 そして,文末は『○組みんなの人生の応援団長! 担任 中村祐哉』で黒板の担任からのメッセージを締めくくります。

 

 子ども達の前で感じた想い・願いを全力で伝えること

 ここまで前夜に準備を行なえば,あとは当日最後の授業である学級活動の時間のプロデュースです。

 プロデュースといっても最後は,子ども達の前に立ってから感じたことを想いや願いを込めて全力で伝えています。

(※ここまでの学級活動の時間を使って,子ども達同士の振り返りは終えておきます。)

 ここで話す内容ももちろん考えていくのですがあえて,決め込まずにその場に立ち自分自身が感じたことを伝えています。『 クラスのみんなとの思い出−今の気持ち−これからみんなに期待すること』の3つを柱として話していますが,私自身が,毎年ここで涙が溢れてしまいます。

 話を終えた後,最後は,布製の学級旗を作っているクラスなら,学級旗をクラスの人数分に切り分けます。

 切り分けた学級旗の1ピースを胸に,いつかまたピースを合わせて出会える日を夢見て…そして,手にした学級旗1ピースを,一年間頑張ってきた自分への自信の証と変えさせて…しっかりと子ども達の背中を押し,次のステップへ向けて送り出してやりたいと思います。

 

 さて,つれづれ日誌も第16期最後の執筆となりました。第15期から引き続き一年間,私の拙い実践のご紹介ではありましたが,御拝読くださり本当に感謝の気持ちでいっぱいです。また4月からの第17期でお会いできますことを心より楽しみに致しております。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。御拝読,ありがとうございました。

中村 祐哉(なかむら ゆうや)

広島県公立小学校 教諭


「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。

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