年度末になります。
慌ただしい日々を送っている方が多いと思います。
体調に気を付けながら、残りの日々を充実させてください。
今回は、新年度を迎えるにあたって小学校の教員が心掛けておくとよいことを書きたいと思います。
特に経験年数の少ない若者をイメージしながら書いていきます。
新年度に陥りやすいトラブルをまとめると次のようなものです。
「距離感」「ペース配分」「限界を知る」
「距離感」とは、子どもとの距離感です。
距離感において大切なことは「バランス」です。
距離は近すぎても、遠すぎても、うまくいきません。
若い先生がしてしまうミスに「子どもとの距離が近すぎる」ということがあります。
子どもと年齢的に近く、共感できるテーマ(ゲームやアイドルなど)もあることなどから、「友達」のような関係になってしまうことがあります。
一見、子どもと教師が仲良く見え、良いのですが、しっかりとした指導ができないことが多くなります。
「だらだら」とした集団になってしまうことが多いです。
細かい部分での指導がうまくいかなくなり、次第に様々なトラブルが発生するようになってしまいます。
途中から急に厳しく指導すると、今度は子どもが教師から離れていってしまうこともあります。
また、始めから非常に厳しい指導をし過ぎるのも上手くいきません。
年度の始めで信頼関係の出来上がっていない子どもに対しては、慎重に関わることが求められます。
「今年の担任の先生は嫌だなあ」と思われてしまっては、その後の学級経営に支障をきたします。
「規律を整えること」と「厳しく指導すること」は異なります。
気合を空回りさせないような注意が必要です。
この様にバランスのとれた距離感が子どもとの関わりには必要になります。
次は「ペース配分」です。
ある本で読んだものに、「学級経営は短編小説ではなく、長編小説である」というものがありました。
学級経営は、一年間という期間を意識して取り組むことが大切になります。
また、教育の意義を考えると、目の前の子どもの「今の状態」も大切ですが、その子どもが「どんな人生を送っていくのか」「将来、どれだけ社会の役に立てるのか」という長期的な視点も必要になります。
「この子は10年後、どうなっているのだろう」と考える機会があるだけで、子どもとの関わり方が少し違ってきます。
ところで、4月にやる気満々、元気一杯でがんばっていた担任が、徐々にペースダウンをしていってしまい、表情が暗くなってしまうということを見かけることがあります。
若い先生は4月の学級開きの際にすべきことを十分に行うことができていない場合があります。
その影響が出てくるのが、新年度が始まってから半月程経った頃です。
うまくいかないことが次々と出てきて、やることが後手に回ってしまいます。
心身とも疲れてきます。
やる気や元気が下がり出し、負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。
最悪の場合、精神疾患を病み、休職、そして退職ということもあります。
経験の少ない教員の場合、始めは少し抑え気味が良いのではないかと思います。
学級担任は、毎日教室に行き、元気な顔で、子ども達に語りかけることが大事になります。
コンピューターを使いその場に居なくともできる職種とは違い、教師は、「その場(教室)」にいなくては仕事にならないタイプの職種です。
その為には、ある程度ペース配分を考え、一年間、休まずに行き続けることがことを心がける必要があります。
最後は、「限界を知る」ことです。
これは、教育の可能性に関することです。
教育によって子どもは変容していきます。
良い指導をすることによって、子どもはより良く変容していきます。
その為に、教師はしっかりとした準備を行う必要がありますし、より良い学級集団を作り上げる必要もあります。
そういった努力は絶対的に必要なのですが、だからと言って、全ての子どもが教師の思っているようにより良くなっていく訳ではないということです。
学校の先生は、自分自身が割と真面目であり、子どもの頃に優等生だった人が多いです。
親が先生だった人も多く、経済面などで苦労をせずに育った人も多いと感じます。
しかし、現実の社会は、様々な形で困難さを抱えた子どもも存在します。
それは、子ども自身の問題(軽度発達障害など)、家庭の問題(親の養育態度や経済的なこと)、地域的な問題などです。
いくら学級担任が熱心にきめ細かく指導を行ったとしても、上に挙げたような理由に関連して、なかなか状況が良くならないことがあります。
真面目な教師程、そのことで自分を責めてしまったり、子どもに厳しく関わってしまったりします。
例えば、家庭の経済的な問題から支払うべきお金が払えていない子どもがいたとします。
その子どもに対して、「お金は期日までに絶対に支払うべきものだ」「給食費を払わない人が給食を食べるのは少し変だ」というようなことを言ってしまっては子どもが可哀そうです。
確かに言っていること自体は正しいのですが、それを言ってしまっては・・・、という感じです
子どもが何とかできることではない場合があるからです。
この様に学校での指導には「限界」があります。
「できる限り」で、ベストを尽くすべきでしょう。
新年度に陥りやすいトラブルとして、「距離感」「ペース配分」「限界を知る」ということについて書いてきました。
先生方、特に若い先生が、こういったことを意識することによって、より良い学級経営ができることを願っております。
教育現場は年々、厳しさを増してきています。
体も心も大切にしてください。
以前、関連した内容で下のような文を書きました。
興味のある方は読んでみてください。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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