先日、文科省と財務省で小学校一年生の1クラスの人数についての予算がニュースで話題になっていました。
財務省が、小学校一年生の1クラスの人数を現状の35人から40人にすべきだとし、それに対し、文科省が現状の35人を維持すべきだと示していました。
結果的には、文科省の主張の通り、現状維持と言うことで落ち着きました。
文科省が小1のクラスの人数を少なくしたいのには理由があります。
子どもと学校の関係においては、2つの大きな壁があるとされています。
一つが「幼稚園・保育園」と「小学校」の間の壁で、そこで起きる問題を「小1プロブレム」と言います。
もう一つが「小学校」と「中学校」の間の壁で、そこを「中1ギャップ」と呼びます
文科省の統計においても、中1が最も不登校が多いとされており、問題の難しさを表しています。
どちらの壁も学校システムの違いに原因があるとされています。
少子化により、幼稚園・保育園は、個性のある教育・保育をする園が増えています。
これは、私立の園が多く、経営を安定させる必要性からも他の園との違いを出そういう個性化の影響からだと考えられます。
様々な個性があり、それは良いことだと思われますが、それによって小学校での学習に不都合が生じる場合があります。
のびのびと自由に活動させるタイプの園もあり、ある程度の規律を求める小学校のやり方とぶつかる場合があります。
また、発達障害を持つ子どもが近年増えてきているとされています。
様々な統計があるのですが、文科省の発表によると普通学級に在籍する子どもの6.5%に発達障害があるとされています。
1クラスを40人とすると、クラスに2~3人いることになります。
そういった子どもが教室で落ち着いて過ごせない場合もあります。
周りの子どもにちょっかいを出したり、教室を出て行ってしまったりと、教師の指示に従えない状況になることがあります。
そういった状況において、小学校一年生のクラスの人数を減らすことは、方法として、とても良い方法です。
担当する子どもが少なくなればなる程、細かい部分までケアーすることができます。
そうしないと「幼稚園・保育園」と「小学校」の仕組みの違いが悪い影響を与え、不適応を起こすケースがあります。
以前は、そういった仕組みの違いを乗り越えていく中で子どもが成長していくという考え方がありました。
確かにそういった面があるのですが、「育ち」というプラスの面よりも「不適応」というマイナスの面が大きく出ているのが現状の「小1プロブレム」だと思います。
ところで、小学校一年生を含めて、低学年(小1、小2)の重要性について、少し違った点から話を進めます。
私が以前勤務した学校で、年に一度行われる学力テストの平均点の推移を追って調べたことがあります。
そういったことをしてみると、小1や小2でうまくいっていなかった学年は、テストの点数に数年間影響を与えていました。
小1では、「小学校での学び方」を学びます。
椅子の座り方、話の聞き方、ノートの取り方・・・。
こういったものをしっかりと身に付けることが出来ないとその後(小2以降)の学びの質を大きく下げてしまいます。
また、算数に関しては小2の学習が後々の学習に大きな影響を与えます。
これは「九九」が原因となっています。
小2のクラスが荒れており、九九をしっかりと身に付けることができないままで小3になってしまうとその影響は甚大です。
小3以降の算数の授業はほとんどの内容で九九を必要とします。
学習内容(2桁×2桁の筆算のやり方など)は理解できても、実際に計算すると九九の不十分さから答えは間違っているということになってしまいます。
2桁×2桁の筆算ですと、九九を含めた計算を10回程度正確に行わないと正解になりません。
小2でうまくいっていなかった学年の学力テストでの数値は小6になるまで低い数値を推移しました。
低学年の時の学級の状態がその後の学びに大きく影響を与える典型的な例です。
この様に小学校の低学年の学びの状況は、その後の学びに大きな影響を与えます。
これから、幼稚園、保育園から小学校への入学の季節となります。
親や教師が配慮することで、スムーズなスタートを切ることができます。
良い春を迎えてください。
「学研ママノート」というサイトに小1プロブレムについて私が取材を受けたものが公開されています。
興味がある方はご覧ください。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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