2015.01.28
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公開ケーススタディを聴講して

東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard) 綿引 清勝

  先日、明治大学で行われた、発達障害臨床研究会の公開ケーススタディを聴講してきました。つれづれ日誌にも掲載されている川上康則先生や植竹安彦先生が執筆された「発達支援実践塾」の出版記念ということでしたが、200人が収容できる会場は満席で、休日でも一生懸命学ぼうとする先生方がたくさんいることに驚きつつも、大変嬉しく思いました。

 

 ケーススタディを通して

 当日は、A君のケーススタディを通して、子どもを分析していくプロセスがフロアを交えながら分かりやすく解説されていきました。

 日常生活や授業などのやり取りの中で、子どものちょっとした仕草や行動から様々なサインを読み解いていく。「パズルのピースを集めてどんな絵であるかを読み解く」というお話がありましたが、アセスメントで重要なのは、心理検査を実施することだけではなく、むしろ様々な観察場面を通して子どもの実態を正確に把握し、理解するかということを改めて実感する内容でした。

 今回は、触覚防衛が強いことから、まずはそれを軽減し、人とやり取りをする力を高めていくことで、認知も育っていくという成果が報告されていましたが、そのような視点は、今回のケースに限らずたくさんの子どもたちを支援していく上で応用ができると思います。

 防衛反応が強いお子さんは、心理検査を実施する場面でもなかなか本来の力を発揮することができないことがあります。これは、他の学習場面においても同様のことが言えるでしょう。ですので、今回のケーススタディで報告されたような支援の方略は、一見すると教科の指導から離れてしまっていると感じることがあるかもしれませんが、急がば回れの本質を突いた見事な実践だと感じました。

 

 ケーススタディの中でもありましたが、子どものつまずきに対する仮説を立てる際、誤学習や未学習のせいにしてしまっている事例をいくつか見てきました。確かにそういった要因が間違いではないこともあるのですが、「基礎的なことが身に着いていない→やる気が起きない」、「やる気が起きない→基礎的なことが身に着かない」と循環論に陥っていることがある感じます。こうなると、実態が正確に把握できず、間違った支援につながることがあります。伸びないことは当然ですが、場合によっては後退する危険性があることも忘れてはいけないと思います。

 では、原因に対する仮説や、それを読み解いた後にどうすればその子に力が付いていくのかという指導に対する仮説など、様々な仮説を的確に立てていく力が、身に着いていくのでしょうか。

  詳しくは、著書を読んでみると具体的な事例や解説など、実際の現場に役立つ内容が分かりやすく書かれています。子どもの様々な気になる行動は、氷山の一角でしかなく、実際には見落としがちな部分に重要なヒントが隠れていることがあります。

 自分自身、子どもを「みる」目をしっかりと養っていきたいものです。

 

心にゆとりをもって

 さて、前回は人的強化子と物的強化子について書かせていただきました。単に大人の感情をぶつけるだけでは、子どもはどうすればよいのかを学習することはできません。また、上記のように子どもを冷静に分析していくには、ある程度心と身体が安定した状態であることが必要だと思います。

 特に、思うような子どもの変化がなかなか見られない時は、つい焦って過剰に接してしまうこともあるかもしれません。自分の実践を振り返っても、「あそこでもう少し待ってあげても良かったかな?」と思うことはありますし、「今日は失敗したな」と反省は日々繰り返しています。

 ただ、子どもを注意する時は、あくまでもその行動に対して注意を促すことが重要で、個人を否定するような言葉や態度は望ましいとは言えません。特に余裕がない時は、基になった原因や理由を追及し、自分を正当化したり、自分の思いをぶつけたりしてしまいがちになります。

 大人の社会でも誤解されていると思うことがありますが、相手の問題点の指摘にこだわってしまい、最低限の配慮を欠くようなことはあってはなりません。そういったことができなければ、ひいては子どもへの配慮も欠けていくことにつながる危険性もあります。

 アクセルやブレーキは「あそび」があることが重要です。指導者としても、どこかで自分自身を許す「あそび」を大切にしていく必要があると思います。それが、子どもたちを許し、受け止めることにつながっていくのではないでしょうか?

 そして、ただ許すのではなく、その失敗を次につなげるようにしていくことがポイントなのでしょう。

 

 「言い方」

 

 「伝え方」

 

 子どもに限ったことではありませんが、何が一番効果的な伝わり方をするのか、丁寧に考えていきたいものです。

 

 年度末へ向けて慌ただしくなってきました。

 いよいよラストスパートです。

綿引 清勝(わたひき きよかつ)

東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard)
東京都内の知的障害特別支援学校で中学部、高等部を経験後、現在は小学部の自閉症学級を担任。自身の実践を振り返りながら、子ども達が必要としている支援とは何かを考えていきたいと思います。

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