2014.12.22
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子どもと教師をつなぐ日記

広島県公立小学校 教諭 中村 祐哉

 毎日の日記『カレーライス日記』じゃイヤだ!

 みなさま,師走に入りいかがお過ごしでしょうか?

先週,日本列島を包み込んだ大寒波で広島県内の私の勤務校でもプールが凍るまで冷え込みました。

早朝?から多くの先生方と共に,子ども達の安全のために行なった雪かきで流した汗は,とても清々しく気持ちのよいものでした。

 

 さて,今年最後のつれづれ日誌のテーマは,年を締めくくりに当たって基本に立ち返ったものをと思い『日記』を選びました。

小見出しトップにある『カレーライス日記』とは,私の造語でクラスでも浸透しているものです。

 4月当初に日記の宿題を出すと,

「〇〇くんと子ども広場でおにごっこをして遊びました。とても楽しかったです。また遊びたいです」

というパターン化された日記を提出する児童がいます。

このタイプの日記を書く児童は,次回もその次も同じような日記を書いて提出してくる場合があります。

 このようなパターン化された日記を『カレーライス日記??』と呼んでいます。

もちろん,語弊がないよう補足すると,?私自身はカレーライスが大好きですし,そのことを言いたいわけではありません。

「どんなにおいしく大好きなものでも,毎日続くと飽きてしまう」という意味です。

 

 では,?この『カレーライス日記』を書く児童に対して,どのような教育的アプローチが必要なのでしょうか?

 まずは4月の学級開き直後,初めて日記の宿題を出す段階で日記の意義やその大切さ,日記への取組み方についてきちんと時間をとって説明します。

ここでの指導を徹底することがその後一年間の日記を充実させるために非常に重要になっていきます。

 その中で『カレーライス日記』への指導の一環として,以下の3つの?サポートを行ないながら,日記の宿題を出していきます。

 

(1)テーマ設定型日記の宿題を出す…毎日の日記のお題を教師側から提示したり,児童から募って宿題として出す。

(2)フリーのお題の際に使える『日記お助けネタ探しブック』の配布…テーマ設定型日記が書けるようになると,テーマ無しのフリー日記へ移行する。いきなりフリー日記になると何を書いたらいいのかわからなくなる児童には,『日記お助けネタ探しブック』(4月の日記指導時に配布)を参考にさせる。これには,日記のネタになるきっかけが数多く書いてある。登下校中のこと・欲しい物のこと・習い事のこと…などそこから見つけて書けるようにする。大切なことは,毎回きちんと書いて,必ず提出させるということ。

(3)10句点日記の宿題を出す(中学年以上)…(1)と(2)ができるようになると,10句点以上の文で日記を構成させるようにする。②の段階で丁寧な指導を入れておくと,この(3)で,だらだらと内容を引き延ばすような日記にはならない。小さなことがらでも,たくさんの思いを詰め込める日記にできる。

 

 この3点に,国語科や日々の指導の中で,児童それぞれの語彙数と表現力の向上を図っていけば,内容のある「宝物にできる日記帳」へと仕上がっていきます。

 

第6学年『100日日記』に込められた思い

 昨年度担任した6年生では,学年6学級で『100日日記』に取組みました。

卒業に向けての小学校生活残り100日間(登校日)を彩る学年を挙げたとても大きな取組みです。

学級?担任の教師は,毎日クラス全員の日記に目を通して,コメントを書きます。

ここでは,この『100日日記』に込められた思いや教育的効果について考えてみました。

 

1.継続は力なり。子ども達が100日続けたという達成感を味わうことができる。

2.自分の生活を振り返り,卒業前100日間の子ども達自身の心と行動の記録になる。

3.100日間,毎日文章を書くことで磨かれる文章構成力。

?4.子ども達の小学校生活を締めくくる大切な宝?物となる。

5.子どもと教師が続けることで卒業に向けた思いが共有される。

 

 ここで挙げた5点以外にも,『100日日記』に取り組むことの教育的意義や効果はまだまだあるでしょう。

 この『100日日記』,卒業式前日だけは預かります。

卒業式の朝,担任教師から子ども達一人ひとりへラストメッセージを書き込んで,子ども達一?人ひとりの机の上に置くこともおすすめします。

 

教師から見る子どもの日記

 このように日記というものは,きちんと順序立てて取組んでいくことで子ども達への情操教育等に非常に大きな効果があるものだと感じています。

 私は,作文と日記は似ているようで異なる別物だと感じています。担任教師側としても,子ども達個々の状況や思いを知ったり,感じとったりできる大切なアンテナが日記です。

 私は時間が十分に取れる際は,子どもたちが書いた文量を越えるコメントを返すよう心がけています。クラスが40人近い学級の時も続けていました。「日記を提出したら,先生の返事が楽しみ!」となることで書くことへの意欲にも繋がります。

 これを通じて,教師の子ども達の日記への評価というものも非常に重要だと言えるのではないでしょうか。

 

 さて,次回つれづれ日誌の連載は年明け2015年1月8日木曜日の更新になります。

今年度は執筆を始めた春から,私のまだまだ未熟で拙い文章にお付き合い頂きまして,本当にありがとうございました。

来年度もどうぞよろしくお願い致します。それでは,よいお年をお過ごし下さい。 

中村 祐哉(なかむら ゆうや)

広島県公立小学校 教諭


「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。

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