学習の始まりに
新しい学習がスタートする時に、子供たちにどのように動機付けをしていくのかを考えることは特別支援教育だけに限ったことではないかと思います。学習のねらいを伝えたり、学習内容を伝えたり、学習のゴールを伝えたり、関連する事柄を伝えたり、子供たち自身が課題を設定したりと様々な手法を用いて各教員が工夫しながら設定するものだと思います。
私のところでは、単元の始まり、新しい学習の始まりに写真や動画を用いて具体的な学習内容を伝えていくことが多いです。その内容は、子供たちの特性やねらいによって様々です。学習過程を伝えることが効果的な子供もいますし、学習のゴールを伝えることが効果的な子供もいます。それらの違いを教員が把握しながら、学習の成果がより高まる方法で伝えていくのです。
伝えたい内容を厳選する必要
視覚的な情報を中心に子供たちに合わせて学習について伝えていきますが、あれもこれも全て伝えたのでは、子供たちは何が大切で、何をすればよいのか整理することに多くの時間と力を奪われてしまい、本来必要な学習にたどり着く前に息切れしてしまいかねません。そこで、伝えたい内容を厳選する必要があります。基本的には5W1Hで考えればいいかと私は考えています。その中でさらに軽重をつけて整理する必要があります。いつもと内容が大きく変更になる時は内容を一番に、場所の変更を伴う学習の時には場所の変更をいつもより詳しく、というように子供たちが必要とする内容をよく考え、伝えたい内容を厳選していかなければなりません。
伝えたい内容を厳選する作業
私の場合は、講師のお仕事をさせていただく時と同じように伝えたい内容をメモに書き出し、整理をするところからスタートします。アナログ中のアナログ仕事です。この作業を抜いてしまうと私の場合はあまりうまくいった試しがありません。ですから、ノートにねらいや内容、内容のつながりなど必要事項を起こして情報を構造化することから始めることにしています。そこから必要に応じて、デジタルの教材化する作業をします。写真は全体がいいのか、部分を拡大するのがいいのか、配色はどうかなどの項目をチェックしながら作業を進めます。動画の場合も同じように必要な箇所に注目できるかをチェックしながら撮って加工し、つなげます。動画の場合は、どこでつながりを切るかも子供たちの思考に影響を与えることを最近になって改めて意識するようになりました。活動の手順などは一連のつながりを意識してつなげますし、学習ごとのつながりを示したい時には、映像を切って伝えなければなりません。
この作業をする時に、最近多く使用しているのがアプリのデフォルト機能です。具体的には、iMovieという動画編集アプリの予告編を作成する機能です。この機能は、よくある映画の予告編みたいなものを作成する機能ですが、これは絵コンテで動画のつながりを示すように予め設定されています。この絵コンテの設定を参考に学習と学習のつながりを考えることで、無駄な映像を省き、伝えたい中心的な内容をしぼって伝えらえるのではないかと考え、使用しています。これにより、無駄な動画撮影や編集が減り、その分、より内容の厳選作業に費やせるようになってきました。もともと教育用に作られたアプリではありませんが、その機能を吟味することで、教育用のコンテンツを作成するのに十分に役立てられるのではないだろうかと考えています。
実際の学習の様子
実際にこの機能を使って作成した動画を学習の導入や、学習後の振り返り場面で活用することを始めています。
子供たちは食い入るように画面を見ながら、これから展開される学習への期待感を高めているようです。また、学習後には、自分たちの学習活動がダイジェストで確認できるので、自分たちがどのような学習をして、どのようなゴールにたどり着いたのかをわかりやすく理解できるようになってきているのかと思います。
予め絵コンテ上で、子供たちの学習活動をイメージして、つながりやピックアップしたい場面を予測しておくことで、より指導のイメージをつかむという教員側の効果もあるのかとも感じているところです。
郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)
北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。
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