2014.12.09
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「逆境の中にこそ夢がある」

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

最近気になる人物が一人います。
それは蒲島郁夫(かばしま いくお)さんという方です。
皆さんご存知ですか。熊本県知事さんです。
熊本県の方はもちろんご存じかと思います。
 

ベネッセ教育総合研究所発行のVIEW21(2014 August号pp55-57)で、
教育再生実行会議委員の知事たちが語るというコーナーの中で、
知事らの教育にかける思い、自県の教育行政についての話が
紹介されています。
(参考:http://berd.benesse.jp/magazine/kou/booklet/?id=4253)

私は、蒲島郁夫知事のユニークな経歴と熊本県が平成13年度から始めた
「海外チャレンジ塾」というものに興味と関心を覚えました。
 

蒲島郁夫知事のユニークな経歴については、高校卒業後、農協に就職し、
農業研修生として渡米。そこで人生の転機を迎えることになります。
ネブラスカ大学農学部に入学、大学院修士課程修了後、
ハーバード大学大学院博士課程に進学し、
政治経済学で博士号を修得します。
帰国後、筑波大学、東京大学教授を経て、2008年に熊本県知事に就任し、
現在に至っているのです。

蒲島知事は次のように語っています。
「私自身の経験から、家庭環境や学業成績に関係なく、
誰にでも可能性は無限大にあると感じています。
そして、夢を持ち、その夢をかなえるための一歩を
踏み出すことが重要だと思います。」

蒲島県政では、「夢をかなえるための一歩を踏み出すことを」
具現化するために、生活保護世帯の子どもに対する支援と、
一人親家族等への支援に取り組んでいるそうです。
具体的には生活保護世帯の大学進学者に対する生活費の無利子貸付や、
一人親の就労支援などがあるそうです。
「子どもの貧困対策」としても、自治体や国が
参考にできることが多いように思います。
熊本県立大学には、生活保護世帯の生徒の推薦入学枠を
設置しているそうです。

蒲島知事自身がアメリカでの大学の学費や生活費の大半を、
大学の奨学金で賄っていた経験から、
「夢を持つ人を社会全体で後押しする制度が
全ての子どもの可能性を広げる」と考えておられます。
私もその通りだと思います。

教育は、受益者負担の原則が基本であるとは思いますが、
家庭だけにその負担を強いるのではなく、
必要としている人には可能な限り日本の社会全体でも
支援する方向に少しずつ向かってほしいと常々願っています。
私は個人的に知事としての立ち位置とバックグラウンドからくる
施策等に関心を持ち、男気のようなものを感じています。
(Wikipediaでは、投票行動に関する実証研究者としての一面や
不正経理発覚の責任を取っての給料減額の件、また
吉本新喜劇への出演等のエピソード紹介もあります)
 


「海外チャレンジ塾」は、グローバルマインドと英語力を
中高段階から育てたいという蒲島知事の経験が元になっているようです。
海外進学等を目指す中高校生が、学校の垣根を越えて集い、
英語力や英文エッセイ作成能力など、海外進学等に必要な能力の
向上を目指します。

グローバル人材の育成のため、海外を目指す高校生、中学生を
応援すると共に、海外進学の環境整備に総合的に取り組んでいます。
その一環として、海外大学進学、国内大学進学後の留学及び
将来グローバルに活躍すること等を目指す高校生、中学生を対象とした
「海外チャレンジ塾」を平成25年度開講したものです。
(参考:「熊本県ホームページ」>私学振興課>熊本時習館「海外チャレンジ塾」の平成26年度塾生を募集します!)

講座の内容は、以下を実施予定にしているようです。
 (1)海外進学対策のためのWEB講座(海外進学コースのみ)
 (2)TOEFL/英文エッセイ対策講座
 (3)グローバル講演会
 (4)グローバルセミナー
 (5)TOEFL受験セミナー
 (6)海外進学に関する説明会
 (7)海外進学に関する相談・助言
 (8)英語合宿(定員30名)(グローバル人材育成コースの高校生のみ)

この事業が蒲島知事の時だけで終わらずに、
熊本県の半永久的な事業として継続されるのであれば良いと願います。
また、各県単位での実施に任すのでなく一つの成功モデルとして
文科省や政府がこのようなアイディアを採用し、
予算化し恒常的に実施可能な事業にしてもらってはどうでしょうか。
将来を担う若者たちへの投資を惜しまない国(社会)で
あってほしいものです。

熊本県が、くまモンやスザンヌだけでなく蒲島知事に出会うことができ
私には少し身近になってきたようです。


追伸
先日書店でNHKラジオテキストのコーナーで、
『Enjoy Simple English12月号』というテキストが目にとまり、
パラパとページをめくっておりました。
すると、偶然なことに驚きました。
12月16日ラジオ第2放送午前9時10分~9時15分
(再放送午後10時10分~15分他)で、
The Ice Bucket Challengeが視聴できることを知りました
(9月9日の拙稿参照)。
インターネットでも番組が視聴できるようになっています。
お時間が許せば皆さんいかがでしょうか。 

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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