2014.12.03
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スコットランド独立投票と寄席から見る教育

広島県公立小学校 教諭 中村 祐哉

『選択すること』・『受け止めること』・『伝えること』

 11月下旬に私用で東京方面に行く機会がありました。

 その際,スコットランドで羊飼いをして暮らす夫妻(旦那様:スコットランド人・奥様:日本人)とお食事をさせていただく場がありました。

 また,今年3月末まで中国・上海日本人学校にて勤務しておりましたが,海外で生活する中で,自分が29年間,日本文化を直接肌で感じてこなかったということを痛感し,帰国したら必ず日本の伝統的な文化に直接触れる機会を出来るだけ多くもつと決めていました。

 そこで,今年は寄席・国立演芸場で人生初の「落語」も聞いてきました。

 この2つの経験から,子どもたちへの教育について考えさせられることがいくつか?ありました。

 考えさせられたテーマがここの小見出しにもあります『選択すること』・『受け止めること』・『伝えること』の3つです。

 今回は,この大きなテーマを広い視点・多面的な視点から教育へのつながりについて考えてみたいと思います。

(※そこで今回は前回告知していた内容を変更してお送りさせていただきたいと思います。申し訳ありません。)

 

スコットランド独立投票から学んだこと 『選択すること』『受け止めること』

 スコットランドで暮らす夫妻とは様々なお話をさせていただきました。

 私自身が,高校生時代イギリスにホームステイをし短期留学していた経験があり,お話を伺う中で非常に懐かしい気持ちにもなりました。

 学生時代は,中学校・高等学校の社会科教育や都市社会学が専攻だったこともあり,いつも海外の方とお話する際は,その方々が暮らす国や地域,風土や文化といった内容にどうしてもベクトルが向いていきます。

 そんな中,今回はスコットランドに住まわれているお二人でしたので,今年の9月18日に行われた「スコットランド独?立住民投票」について実際に投票された旦那様の声を伺うことができました。

 投票日当日は,投票場に向かう道中でも悩みに悩んで最後まで悩んだ結果,自分で答えを出し,「スコットランドの独立に賛成」の一票を投じられたそうです。

 結果は,「スコットランドは独立しない」というものでした。

 しかし,旦那様は「結果を受け止めて,これからも夫婦でスコットランドを愛していくよ。みんなが悩みながらも結果が出た(結果を出した)ということがスコットランドが前に進んでいく一歩なんだ」と笑顔でお話されていました。

 このお話を聞く中で私が感じたことは,物事に対して「自分で選択する力を付ける重要性」と様々な事象に対して「自分の中で納得する受け止め方」ができる術を身に付けさせる大切さでした。

 考えてみると私たちの暮らしは日々,小さな選択の繰り返しで生活しています。

 また,何気ない小さな選択から人生を決める大きな選択まで,選択することは生きることと非常に密接な関係にあると言えます。

 今回これだけ大きな一票を投じる中で,自らの思いを込めてどちらかを選択しなければならない…こんな場面で悩みながらも?自分の意思をはっきり提示できる,まさにそこまで本人が受けた教育の力というものが大きく発揮される場なのではないでしょうか。

 

 グローバル化した社会の中で『選択力』を高める教育というのは非常に重要であると感じました。

 

 続いて「受け止め方」についてです。私は今回のお話で,多様な意見の中で自分とは異なる意見を受け入れていく姿勢というものは,民主主義の世には必ず必要になってくることだと改めて感じました。

 それは,どんなことも自分が多数派になることもあれば,少数派になることもあるからです。

 「どちらが正しいのか?」と正解を求められているわけではないのです。

 もし,正解を求められているのであれば,選んだ答えが100%プラスの要素しか生んではならないということになります。

 現状を見据えて,今できるベストを見つけ,選択していくことが最も大切であることを感じるとともに,学級の中でも子どもたちを育てていく上で身に付けさせたい力だなぁと感じました。

 

落語から学んだこと 『伝えること』

 人生初の落語を聞き,国立演芸場を後にしながら私は非常に高揚した気持ちになりました。とても有意義な時間でした。

 落語家のみなさんは,誰にでも身近にある立ち話のような小話から落語をスタートします。

 そこからあまりにもスムーズに落ちのある話(落語)へとつながっていく?話術と,それを補う卓越した技でもある仕草に感銘を受けました。

 話の内容は誰にでも伝わりやすく,そして何よりどれも想像しやすいものでした。また,それを補う仕草でよくわかりやすくなる…まさに教師が身につけると教育現場における様々な場面で弾力的に生かすことのできる素晴らしい力だと思いました。

 私たちは子どもたちに『伝えること』を仕事にしています。もちろん子どもたち同士の『伝え合う力』を育てることもしています。

 今回の落語では,改めて『伝えること』に関して,わかりやすさと想像のしやすさが非常に重要だということを痛感した時間でした。

 それを子ども達に身につけさせていくために,どのような手だてがあるのかということを,その手だての意義と共に再考していきたいと感じました。

 

さて,次回は12月22日(月曜日)の連載になります。今年は,次回の22日が締めの一本となります。

師走に入り何かとご多忙な時期かと存じますが,またぜひご覧いただければと思います。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

中村 祐哉(なかむら ゆうや)

広島県公立小学校 教諭


「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。

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