2014.11.27
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小学校は子どもの健康を守る最後の砦

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

最近、小学校の重要性について考えています。

小学校は、様々な意味で子どもの成長において重要なものです。

その中でも「健康」に関しては、特に重要なのではないかと思います。

 

現代の日本は、世界でも最も進んだ高齢化社会だと言われています。

平均寿命も男女とも世界のトップクラスです。

そういったことからすると日本が非常に健康的な国のように感じます。

しかしながら、現状はそうではないと思われます。

それらが顕著に表れているのが現在の「沖縄」です。

「長寿」と「沖縄」というと、日本の中でも代表されるような長寿地域という印象です。

昔の沖縄の暮らしでは、ビタミンやタンパクを豊富に含む豚肉を豊富に摂取していたこと、塩分の摂取が少なかったことなどが特徴でした。

現在の沖縄では、若い世代を中心に肥満などが大きな問題となっています。

2012年のBMI(ボディマス指数:肥満を示す指数)についての調査では、女性が1位(最も太っている)、男性が3位という結果となっています。

第二次大戦後、アメリカの占領による食生活の欧米化が進んだこと、鉄道が発達していないことによる車社会であることなどが原因とされています。

 

これらは、10年、20年後の日本中の全ての地域の姿を示しています。

現在、長生きしている世代の人達は、粗食の中を育ち、現代の医療技術の恩恵を受けて長生きをしています。

子どもの頃から、油などの多い食生活を送ってきている現在の中年以下の人達は、その親の世代とは明らかに違った様相を示すと思われます。

 

また、貧困などでも難しい問題があります。

朝食抜き、夜ご飯がお菓子等の偏った食生活の問題です。

貧困の問題と関連し、親の余裕のなさなどが子どもの食生活、そして健康に大きな影響を与えています。

家庭での食生活は、様々な調査によっても、その子どもの学力に影響を与えます。

格差が連鎖し、広がっていくことになります。

 

そういった状況にある日本において、学校(特に小学校)は、効果的な方策を行うことができる可能性を秘めています。

小学校は、基本的に全ての人が通うものです。

また、小学校に通う年代は、生活習慣を作り上げる頃と一致します。

小学校における学校教育活動の中に効果的に健康教育の要素を盛り込んでいくことができれば、日本の姿が変わる可能性があります。

今の日本の社会では、様々な形で高齢者にお金を掛けています。

医療費も膨大な額となっています。

そういったものの一部を学校教育活動のための費用に移すことで、予防のための活動の質を大きく上げることができます。

小学校において、医師、看護師、フィットネスインストラクター、栄養士などの専門的な職業の人を多数動員し、質の高い健康教育を行うことができれば、日本の将来が変わる可能性があります。

 

教育とは未来への投資だと言われています。

子ども達の健康を守るためには、学校が「最後の砦」なのではないかと思います。 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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