2014.11.17
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体育の構造化

東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard) 綿引 清勝

 第一回の投稿「授業を考えるに当たって」で、四大教師行動について説明させていただきましたが、今回は体育の授業の構造化についてお話しをさせていただければと思います。

 構造化には大きく、「物理的構造化」、「時間の構造化」、「活動の構造化」の3つがあります。

 

 物理的構造化は、机の配置や教材の置き場所などを工夫することで、「何がどこにあるのか」や「ここで何をすればよいか」を分かりやすくします。

 

 時間の構造化は、スケジュールの活用です。活動の始めと終わりが理解できるよう、スケジュールを提示しておくことで、活動全体の流れを理解するには有効な手だてだと言えます。

 

 活動の構造化は、スケジュールの活用です。「左の箱から部材を取り出し、組み立てた製品を右の箱に入れる」というように、活動の流れをスムーズに分かりやすくします。

 

  このような観点は、教室の中での学習に限らず、体育でも同様のことが言えますし、むしろ活動のスペースが大きくなる体育だからこそ、大切にしたい視点だと思います。

 

マネジメントの工夫を

 体育は、様々な用具を使う場面がありますが、できるだけ自分たちで準備や片付けをする場面を設けるようにしています。友達や先生と一緒に用具を運ぶ活動は、共同的な学習場面であり、子どもたちの社会性を育てていくために有効な手段の一つです。また、自分で準備することで、学習に対する意欲が変わるお子さんもいます。

 こういった活動は、教師行動としてはマネジメントに位置付けられます。マネジメントには準備・片付けだけでなく、集合、移動、待機などもマネジメントに含まれます。

  体育で子どもが褒める場面を増やしていくためには、どうしても運動学習場面を増やす必要が出てきますが、そのためには、このマネジメントの時間をどう工夫するかが重要なポイントになります。

 特別支援学校でよく見られる「一列に並んで一人ずつ順番に」といったお替り型の学習形態では、必ず待ち時間が長くなり、子どもの学習量が減るので、よっぽどでなければ私はそのような学習形態は取りません。

 たまに、「見るのも学習」という先生もいらっしゃいますが、体育に関しては、まずは動いてからだと考えています。また、見るだけでは学習が難しいお子さんもいますし、見てるだけでは体育の学習にはなりません。

 ある高等部の事例では、50分の授業でA君の運動学習時間は15分程度でした。その内訳をみると、準備運動、整理運動、10分間走が大半を占め、実際に「ボールを蹴る」という活動はわずか1分程度でした。

 どうやら、主担当の先生にとっては、目の前の子どもが順番に入れ替わっていることで、授業全体で子どもが動いるような錯覚に陥ってしまうことがあるようです。

 「長い待ち時間の末にお目当てのアトラクションにたどり着ける」ということもありますが、それでもファストパスやシングルライダーなど、待ち時間を軽減する手だてが取られているのではないでしょうか?

 だからこそ、授業の構造化を進めることにより、子どもが1対1対応でなくても活動に取り組める環境づくりが重要になります。

  マネジメントにおいては、集合場所を決めておく、活動場所の近くに集合するといった工夫がありますし、移動の回数を減らすことも大切です。ゼッケンを配るといったことも、わざわざ授業中に一人一人グループを確認しながら配布するのではなく、事前に表を掲示し、授業の始まりの段階で配るようにすると、それだけで時間配分が大きく変わってきます。

 

 わざわざ大がかりなことをしなくても、ちょっとした気遣いでできる構造化があります。分かりやすい授業を、子どもたちと一緒に創っていきましょう。

 寒くなってきました。風邪や胃腸炎が流行る時期でもあります。無理をせず、目の前にいる子どもたちのとの時間を楽しみましょう。 

綿引 清勝(わたひき きよかつ)

東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard)
東京都内の知的障害特別支援学校で中学部、高等部を経験後、現在は小学部の自閉症学級を担任。自身の実践を振り返りながら、子ども達が必要としている支援とは何かを考えていきたいと思います。

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