講師の仕事
昨年度から今年度にかけてICTの活用についての講師の依頼を多数いただくようになりました。これは私が勤務している学校が研究助成をいただいて教育実践させていただいていることが大きいかと思います。
以前は、自閉症のお子さんの指導・支援についての講師の依頼をいただくことがほとんどでした。私自身もまだまだ勉強の身ですが、私などがお話することで少しでもお役に立てるのなら、ということでお受けしていました。
今回は、この講師の仕事をお受けして、お話しさせていただく際に私が最近特に気をつけていることについて、少しだけ書かせていただこうと思います。
ニーズを知ること
ひとえに講師の仕事、特別支援教育におけるICTの活用と言っても、お話する相手が違えば、そのニーズはかなり違います。依頼をいただく団体や学校の事務局の方々が考えているニーズ、研修会に参加いただく方々のニーズ、研修会を終えた後のニーズ、ニーズと言っても本当に様々だなというのがこの一年間で実感できました。同じ研修会に参加してくださった方でも、教員や保護者の方、デイサービスの方やヘルパーの方まで様々にいらっしゃいますので、そのニーズは本当に多岐にわたります。
そのニーズをできるかぎり具体的に知ることが何よりも大切だと考えています。ですから、事務局の方々には、時間の許すかぎり、これでもかとご質問をさせていただくようにしています。たぶん、事務局の方々も本当にしつこいなぁとあきれられているかもしれません。しかし、この部分をさぼってしまうとだいたい研修会は上手くいきません。
もちろん、実践力があり、お話にも説得力がある方が講師である場合、参加者の皆さんの多くは、その方のお話を聞きにいくわけですから、私ほどしつこくニーズの調査を行う必要はないのだと思います。
ただ、特別支援教育におけるICTの活用に関する分野、特にタブレット端末の活用に関する分野は日進月歩の分野だと思いますので、このニーズ自体もまだまだ固まっていないのだと思います。そんな中でお話をさせていただきますので、私にとってこのニーズを知るという作業は欠かせないものなのです。
ニーズからわかること
多くのニーズ調査をさせていただいて、共通して多いのは、
「実践事例を知りたい」、「導入方法を知りたい」
そして、ダントツなのが
「便利なアプリを教えてほしい」
です。このニーズはどの参加者が対象の研修会でもダントツに多いと感じています。もう少し厳密に言うと
「便利なアプリの使い方も含めて教えてほしい」
ですね。これは実践を進めている校内での実技研修でもまだまだ多いニーズだと思います。
ニーズに応えることと私の主張
これは必ずしも一致していません。呼んでいただくわけですから、もちろん会の主旨や参加される方々のニーズにお応えするようにお話は組み立てさせていただきます。ただし、私が取り組んでいることから今の私が考えている主張も組み込ませていただくようにしています。これは、事務局の方々と打ち合わせをする際にプレゼンのプロットに必ず組み込んでご提示するように気をつけています。その上で、事務局の方々のご了承をいただき、お話させていただきます。
具体的にはこちらで何度もお話させていただいている「魔法ではない」ということです。そして、上手くいっている事例と合わせて上手くいかなかった事例を実際の子供たちの変容を加えてお話するように気をつけています。
いま各地でICTの活用が進んでいますので、これからますますいろいろな事例が報告されるようになるかと思います。その際に、批判的に事例を検証することが求められてくるかと思います。いまはまだ成功事例を多くの方々と共有することが一番に求められていることかもしれませんが、この先、ICTの活用が一過性のものではなく、継続的に、日常的に活用されるツールになるためには、うまくいっていない事例から学ぶことが大切になるかと私自身が考えているからです。ここの主張の共有をブレずにお伝えすることが、私が最近気をつけていることです。
郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)
北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。
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