秋の読書週間が始まっていますね。
「○○週間」と言っているのに、
なぜ2週間(10月27日から11月9日)
の期間が設定されているのかご存知ですか。
Wikipediaの「読書週間」によると
1924年に日本図書館協会が11月17日から11月23日までを
「読書週間」ではなく、「図書週間」と制定していたようです。
1933年には「図書館週間」と改称され、出版界では「図書祭」が
開催されていました。
しかし、戦争の影響で、1939年には一旦廃止されました。
終戦後1947年に、「読書週間実行委員会」が、日本出版協会、
日本図書館協会、取次・書店の流通組織、その他報道・文化関連団体など
30あまりにより結成され、第1回「読書週間」が行われたそうです。
この時は、1週間だけでした。
2回目からは、「1週間では惜しい」ということで、
文化の日を挟んで2週間になり、現在に至っているそうです。
皆さん
「ガッテンだ」とボタンを押していただけたでしょうか。
さて、本校では、この時期にちょうど間に合わせたかのように
「図書だより」が発行され、その紙面の中で
新規購入図書が紹介されていました。
私は次の2冊を貸ました。
『モリー先生との火曜日』と
『まんがでわかる7つの習慣』でした。
『モリー先生との火曜日』は、
難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)に侵されたモリー・シュワルツ教授が、
死を前にして、かつての教え子であるジャーナリストのミッチ・
アルボムに贈った「最後の授業」を記録したもので、
1997年にアメリカで出版されベスト・セラーとなった
ノンフィクションであります。(Wikipedia参照)
ice bucket challengeとも関連しているので興味を持ちました。
『まんがでわかる7つの習慣』は、
フランクリン・コヴィー・ジャパンが監修し、
漫画家の小山鹿梨子さんが描いておられます。
『7つの習慣』という書籍名は知っていたのですが、
マンガのほうが取りかかり易そうなので選んでみました。
自己啓発書のようなものというのが第一印象でした。
読み進めていくうちに、これはマンガを用いているので
私よりも中高の生徒に是非読んでもらいたい本ではないかと
感じました。
「7つの習慣」とはどのような習慣を言うのかについては、
以下の目次の項目で理解していただけるでしょうか。
1.主体的である
2.終わりを思い描くことから始める
3.最優先事項を優先する
4.Win-Winを考える
5.まず理解に徹し、そして理解される
6.シナジーを創り出す
7.刃を研ぐ
大切なことは、これらの「7つの習慣を知ること」ではなく、
「7つを習慣化すること」のようです。
ここで1つ1つの習慣を紹介はできませんが、
目次の中の3つのワードについて紹介します。
(1)Win-Win
「自分も勝ち、相手も勝つ」こと。交渉で問題を解決するために、
双方にプラスとなる関係のことを言うそうです。
人間関係のパターンには、このWin-Winを含めて6つあり、日ごろ
私たちが直面している人間関係は、Win-Loseという
「自分が勝ち、相手が負ける」関係だと分析しています。
教師と生徒や、生徒間、教師集団の人間関係にちょっと生かすことが
可能かもしれません。
(2)「シナジー」
この言葉は見慣れないという方もおられませんか。
もともとは生理学用語で、
「2つ以上の筋肉,神経,刺激,薬物などが協働的に作用して,
相乗的な効果を生むこと。
転じて企業活動における職能分担,いわゆる分業および専門化が
個々の活動の合計以上の相乗効果を生むこと」のようです。
(サイト:コトバンクのブリタニカ国際大百科事典の項参照)
(3)「刃を研ぐ」
自分を高めることを意味しています。
自分の器を育てることであるそうです。
コヴィーは、4つの側面からバランスよく「刃を研ぐ」ことを
勧めています。
体調(肉体)、観点(精神)、自律性(知性)、つながり(社会・情緒)の
4つの側面に分けています。
肉体的側面で「刃を研ぐ」とは、運動によって体をメンテナンスすること。
精神的側面で「刃を研ぐ」とは、自らの価値観を深く見つめること。
知的側面で「刃を研ぐ」とは、情報収集力や選択力を磨くこと。
社会・情緒的側面で「刃を研ぐ」とは、人間関係においても自分の価値観に
忠実に振る舞うこと。
私はアンバランスに自己研さんをしているのではないだろうかと
振り返ってみました。
どの章も頷きながら、なるほどと納得し読み進めました。
さて、私が個人的に興味を持ったのは、Chapter5-2の
「4段階の聞き方で相手を深く理解する」という部分です。
「4段階の聞き方(傾聴)」には、(同掲書p133参照改編)
(1)「話の中身を繰り返す」聞き方
たとえば、
「勉強が嫌いなんだ」に対しては、
「勉強が嫌いなんだね」
(2)「話の中身を自分の言葉に置き換える」聞き方
「勉強にやる気が出なくて」に対しては、
「そうか、学校に行きたくないんだね」
(3)「相手の感情を反映する」聞き方
「今日は休んでもいいかな」に対しては、
「なんだか疲れているみたいだね」
(4)「自分の言葉に置き変えつつ、感情を反映する」聞き方
「今日は休んでもいいかな」に対しては、
「疲れているようだから、学校に行きたくないんだね」
があるそうです。
これは、実はカウンセリングの手法に通じる部分が
あるのではと思いました。
これらの4段階の傾聴は、スキルに留まるのでなく、
あくまで心から「相手を理解したい」という誠意があってこそ
意味があるので、上辺だけの傾聴(もどき)は、相手を傷つけ、
人間関係に最悪の結果をもたらすものだと忠告しています。
この傾聴で注意しなければならないことがもう1つあります。
それは、
「自分の場合」にあてはめて聞くことをやめることだそうです。
自分の世界を通して相手の世界を決めつけることは避けるようにする
ことが大事なのです。
私は頻繁に「自分の場合」にあてはめて聞き、そして
アドヴァイスじみたことをしていました。
誤った傾聴の例として次の4つを紹介しています。
(1)「解釈」(2)「評価」(3)「助言」(4)「探り」です。
(1)「解釈」の例としては
「自分は外で遊ぶことが楽しかったから
息子もきっとアウトドアが好きなはず」
(時代錯誤があり、テレビゲームや
モバイルゲームなど戸外での遊びをする子ども
人口も少ない現状とかけ離れている誤った解釈をしている)
(2)「評価」の例としては
「私も昔は夢を見たけれど、それは現実的でない」
(「現実的」というのは、その人の評価、価値判断でしか
ないのではないか)
(3)「助言」の例としては
「勉強をした方が身のためだよ」
(「上から目線」だとも誤って解釈されがちである)
(4)「探り」の例としては
「学校で先生に叱られたんだって?」
(「叱られた」からどうしたのか。「叱られた」ことが
必ずしも悪いことではない。「叱られた」にも理由があるのを
聞いてくれないのか。という気持ちになってしまうことがある)
私は、
「自分の世界を通して相手の世界を決めつけるような」聞き方を
知らずに行ってきたことに「ギクッ」としてしまいました。
ついつい無意識にやってしまっている「聞き役」に反省しきりです。
だからこの章に注目したのかもしれません。
コヴィー氏は、7つの習慣は、行動のアドヴァイスであり、
知識(行動の意義を理解すること)、
スキル(効果的な方法で実行すること)、
意欲(自分が変わろうと努力することを誓うこと)
の3つの要素と合わせて
毎日歯磨きをするように
人格を高める行動を習慣として身につけることが
秘訣であると勧めています。
私は7つの習慣を完璧にできるようにとは思いません。
できたら良いのかもしれませんが、
なんだか苦しくなりそうな気がしています。
1つ2つつまみ食いすることから始められないかと
思っています。
原著者のコヴィー氏には叱られるかもしれませんね。
少なくとも1冊の本が
私に大切な振り返りと思考の機会を与えてくれることに
なりました。
何よりも新鮮な物の考え方に出会う扉を開いてくれたのです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
皆さんにも良い本との出会いが
この読書週間でありますように。
岩本 昌明(いわもと まさあき)
富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。
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