2014.09.05
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無重力体験フライトで感じた自分で体験することの大切さ

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

   

 

8月22日に無重力の体験をしてきました。

これまでの人生において体感したことのない感覚でした。

 

無重力になる仕組みとしては、小型ジェット機が高度26000フィート(8000メートル)付近から21000フィート付近まで降下し、その後、急激(45度)に上昇、そして下降(35度)という一連の流れの中で20秒程度の無重力(正確には微小重力)状態を作ります。

 

場所は、駿河湾沖のK空域というエリアでした。

県営名古屋空港を離陸後、名古屋の街を眼下に見て、渥美半島や富士山を眺めながら、実験空域まであっという間に到着しました。

 

写真にあるような環境の中で学校教育において使えるような様々な実験をしました。

小型ジェット機の機内に簡易の実験装置をいくつか設置しました。

(ちなみに後ろに見える「2.02」とはGのことで、この時点で地上の倍の重力がかかっています。メンバーの顔がすこし苦しそうなのはそのせいです。)

私は、右の写真にあるようにトンボの飛び方についての実験を企画しました。


飛行機が急上昇する際にかかる2G(地上の2倍の重力)は、とても苦しく、息がつまる感じでした。
それがしばらく続いたあと、ふっと身体が軽くなりました。
「浮遊感」も「2Gから0Gへの変化」もどちらもこれまで経験したことのない感覚でした。
2Gの時は内臓がしめつけられるような感じで、肺も変化があるためか、息が吸いにくかったです。

 

二枚目の写真は2Gで床に押し付けられている状態のトンボです。

トンボは頭の部分が重たいので、体全体ではなく、頭から押し付けられています。

羽などは構造の違いから、2Gの影響もあまり受けにくいのだと思います。

 

三枚目の写真は、無重力状態でふわふわと浮いているトンボです。

トンボは、無重力になった時、しばらく激しくはばたいた後、羽を動かすのをやめ、少し体を回転させながら、10秒ほど、ふわふわと浮遊してしました。

気絶したか、もしくは、死んでしまったのかと思いました。
重力が戻り、床に触れたら、また元気にはばたき出しました。
この「無重力トンボ」は、10回の無重力体験を無事こなし、空港に戻った後、元気に空へ飛んでいきました。

 

その後、この羽を動かさなかった状態について、その理由について考えてみました。

通常(地上で1Gがかかっている時)は、トンボは何かにとまっている時以外は、羽を動かしています。

これは、自分の体が重力によって下に落ちないようにするためです。

しかし、無重力の状態では、羽を動かさなくとも、下に落ちることはありません。

それなので、羽を動かすのをやめたのではないかと考えました。

 

トンボなどの昆虫を始め、生物の多くは、体の形状を始め、様々な部分に無駄がないようになっています。

進化の中で、無駄が削ぎ落とされています。

無駄が多い個体は生存競争に敗れていってしまいます。

無重力状態で羽を動かすことは、無駄(意味のないこと)なので、動かすのをやめたのではないかということです。

生物の本能のようなものがそうさせたのではないかと思いました。

 

今回の無重力体験では、普段の生活ではあまり意識していないことについて考えさせられました。

「重力」は勿論のこと、「エネルギー」、「空気」、「重さ」などです。

フライト前に予想していたものとは、感覚が違っているものがたくさんありました。

 

やはり自分自身で実際に体験することの大切さを感じさせられました。 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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