2014.08.22
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「賽銭泥棒」から考える-プチ心理学-

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

 東北の岩手県大槌町で追悼の献花台で賽銭箱が3度の盗難被害というニュースが入ってきました。

「怒り」を通り越して「悲しい」とインタビューに答えている方がおられました。私も同じ気持ちになってこのニュースに耳を傾けてその詳細を聴きました。
事の次第は理解できました。6月と先月26日にも2度にわたってさい銭箱が壊されて現金が盗まれ、今回で3度目の盗難が見つかったそうです。NHKが全国版で扱ったので話題となったのでしょう。

心理学に詳しいわけではありませんが、人間の感情は不思議なものだとプチ心理学的に考えてみました。不正や不満など正義や公正・公平なことに反する出来事など、通常と違った事が起きると、まずは「驚く」のでしょう。

そして、その事実に対して「怒り」などの喜怒哀楽の感情が生まれます。でも今回はその「怒り」の持っていき場所がないような状況の中であれば、次は「悲しさ」を覚えたようです。でもこの「悲しい」ことが続くと、今度は「無気力」「無感情」「無感動」へと繋がっていくのではないでしょうか。

さらに「うつ状態」に近いものになる場合もあるのではないでしょうか。人の感情の変化は、この仮説のように直線的で単純に進むとは限らないのかもしれません。もっと色々な要因が複雑に絡み合うことが多いかも知れないはずでしょうが。


ある一つの出来事があった場合に、「こころ」が破綻しないように、それぞれの精神段階で、不安定になっている「こころ」を、安定するように浄化する方策を講じることが、精神衛生上大切になってくるような気がします。

これができないから人の「こころ」って難しいのかもしれません。
正常な「こころ」の状態を簡単に維持できるのであれば、何も改めてとやかくここで取り上げるほどのことはないのかもしれません。「こころ」のバランスを欠いたり、支障がある人が増えてきているように思えています。本来なら私たちの「こころ」は、バランス良く保とうと自衛反応をすることができるようになっているはずです。では、「こころ」が破綻しないように日常の私たちはどのような対応をしていることが多いのでしょうか。

今回の事件では、賽銭箱を管理する住民グループ事務局長が、同じような被害が続かないように、賽銭箱の管理を検討すると紹介されていました。賽銭箱の設置の有無を含めてのことをいってるようです。同じような「悔しい」事件が続かないことを私も願いたいものです。

 さて、皆さんはどのように今回のようなケースを考え行動するのでしょうか。

  私は、まず知り合いの人に、たとえば「昨日の賽銭箱盗難の事件知ってる」と話題を切り出し、自分の情報と自分が感じた気持ちも共有できる人を増やすことを始めるかもしれません。こうすることで、自分1人の抱えている情報や負担を、自分以外にも理解してくれる人がいるということで安心感が出てくるような気がします。話せる人がいることは非常に大事ですね。聴いてもらえる人がいること自体が非常に大切なことなのかもしれません。

 また別の方法は、日記などに書き込みをするかもしれません。頭の中で悶々とさせるのでなく、自分が感じたことを「書く」という作業を通して吐き出すことがよいかもしれません。日記という形式にこだわる必要はありません。メモ程度に書きつづることでも良いかも知れません。言語化することが大事ではないかと考えます。言語化することは、思考を整理することに通じて、冷静に物事をとらえ直すことができ、「こころ」の安定には効果的ではないかと思っています。

 ネット情報を利用することはどうでしょうか。同様の件に関して別の情報を探すことで、自分が得た情報が一方的で偏ってないかが確認できます。新たな視点で物事を捉えることも可能になるのではないでしょうか。私の場合は、大槌町以外の他の場所でも賽銭箱盗難に関する事件が起きていることをネット閲覧で知ることにもなりました。さらに外国人の方の書き込みのあるサイトから、日本の賽銭箱をどのように見ているのか、新たな気づきとなることありました。そもそも賽銭箱の歴史や構造についても垣間見ることもできました(Wikipedia等参考)。多様な物の見方、視点で物事を見るように心がけることも重要です。

 前の段落に関連しますが、狭い考え方にとらわれず、できるだけ大きな視点から物事を捕らえ直すようにしたいものです。今回の場合は「賽銭泥棒」から「窃盗」「万引き」「人の物を取る行為」へと広げて、その是非や善悪について考えて見ることもできたら良いのかもしれません。

他にもあるかもしれません。色々な方法で「驚き」「悲しさ」の状態を緩和することができるようです。そして「諦め」や「無気力」および「うつに似た状態」へ繋がらないように自浄努力に心がけたいものです。

皆さんの夏休み後半が達成感成就感で締めくくることができますように。

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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