2014.08.13
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日本人学校での教育実践だより ー第5回ー

広島県公立小学校 教諭 中村 祐哉

 ハワイ州・パールハーバーより ~「休暇」を本気の「教材」へと変える!~

 今回は,アメリカ合衆国ハワイ州にあるパールハーバー近くのカフェからこのつれづれ日誌をお送り致します。

夏休み,先生方はどのように過ごされていますか?各種研修や研究発表等でお忙しい先生方も多いとお察し致します。

 私も別の連載やコラム執筆・9月からの研究授業に向けての教材研究,そして9月末から10月末まで,ほぼ毎週末入っております大阪・福岡・新潟・名古屋会場で行われる国際理解教育・日本人学校希望者への講演会講師の準備を進めているところです。

 さてさて,今回のつれづれ日誌一行目に入れたこの一文…私は,夏と冬に教材研究を兼ねて日本各地や海外に出発しています。日本国内はもちろん,世界各国への入国数も,もうすぐ30カ国に迫る勢いです。今年はここパールハーバーで小学校第6学年の社会科の教材づくりをおこなっています。

 なぜこのようなことしているのか…それは,教師は授業の中で出来る限り「自分の目で見て肌で感じたこと」を子どもたちに伝えていく必要があると思うからです。

 現地に実際に足を運び,そこで作られた教材こそ「本物の生きた教材」と言えるのではないでしょうか。そうでなければ,特に私の専門とする社会科などでは「先生,教科書に載っているよ!」となってしまうのではないでしょうか。

 私は,「スーホの白い馬」を教える(知人教員のサポート)ならモンゴルへ行き実際に馬で高原を駆け馬頭琴やホーミーの音色・声色をこの耳で聴き,日本と関わりの深い国々を学習するなら教科書に記載のある「中国」「韓国」「アメリカ合衆国」に行き,「暖かい地方の暮らし」を学習するなら沖縄へ「寒い地方の暮らし」を学習するなら新潟・北海道へ行き教材づくりをしてきました。もちろん,特に研究授業があったからというわけではありません。

 ここでは書ききれないほど多くの場所に足を運び,その場の空気と感じたことを各教科の学習指導要領に沿った教材へと変えて,日本に持ち帰り子どもたちに伝えてきました。

 だからこそ夏や冬には「休暇」を「教材」に変える時間とし,その国やその街の空気を感じてきました。「教材」はそこまで本気で作り込んでいくべきものだと思っています。そこまでする価値があるものこそ「教材」と呼べるのではないでしょうか。

 これからも「本物の生きた教材づくり」を続けていきたいと思っています。また今後の日誌にて紹介していきたいと考えております。

 さて,前置きが長くなってしまいましたが,今回は日本人学校シリーズ・ついに最終回の「日本人学校の運動会」について等をお送りしていきたいと思います。

 

上海日本人学校の運動会

私が上海日本人学校に勤務していた2012年度は,反日デモ激化に伴い,休校措置が取られた週が開催予定日だったため,翌週の平日開催を余儀無くされましたが例年は9月半ばの土曜日に開催しています。

  上海日本人学校の運動会は、ひとことで言うならば「壮大」です。日本の学校でも一大学校行事のひとつである運動会ですが,本校の場合,運動会当日は,児童・保護者・教員・学校関係者・領事館関係者・報道関係者を合わせると5000人以上が来校します。

そのため,毎年その準備や進行は大きく異なります。簡単に言うならば、毎年一から新設校の運動会をつくりあげていくイメージです。初回の職員会提案は9月開催ながら5月には行われます。そこから練りに練って当日を迎えます。

また,参観予定者数があまりにも多いため,その対応策としてパブリックヴューイングを校内各所に多数設置しました。これは,各クラスにある大型プロジェクターと大型スクリーンを活用し,体育館にも巨大スクリーンを用意し,デジタルビデオカメラで捉えたグラウンド様子をリアルタイムで放映するというものです。これによって冷房の効いた教室や体育館でも多くの方々にご参観していただけるよう保健体育部の先生方が工夫されていました。実際,これには大きな盛況がありました。

児童の取り組み等は,日本の小学校のスタイルと大きな違いはありません。各学年表現があり,徒競走や団体競技といった形が主流です。ただし,表現は四学年が「エイサー(沖縄県)」・五学年は「ソーラン(北海道)」,そして六学年が「組体操」というのは固定演目です。北海道から沖縄,そして中国や上海をイメージした表現が行われます。そして全学年,毎年衣装となるTシャツやハッピを注文し,当日はお揃いのユニフォームで本番を迎えることができます。ユニフォームに初めて袖を通した時の嬉しそうな子どもたちの笑顔はとても輝いていました。

また,その運動会の様子はプロカメラマンの写真以外にもデジタルビデオカメラ四台を駆使して多角的に捉えたDVDにまとめられ,運動会総集編として保護者の方々にも販売されます。私たち教員にとっても今後の指導に生かすことのできるDVDです。

このように様々な準備を本格的には二ヶ月半の間おこない,運動会が成功を迎えた後の達成感は何物にもかえられない素晴らしさがありました。そして、私たちが忘れてはならないこと。それは,全ては子どもたちの笑顔のために…というものが全教員の共通認識の中で進められたことに大きな意義を感じることができました。

 

上海市の大気汚染(PM2.5)や鳥インフルエンザに伴う学校側の対応

 昨年度始め本校は,上海市の大気汚染と鳥インフルエンザ流行に伴う対応を経験しました。

まずは,大気汚染ですが,一昨年度11月頃から今年度5月末あたりまでは特に大気の状態が悪く,子どもたちが安心して屋外での学習に取り組めるものではありませんでした。

これは,在外教育施設・日本人学校中華人民共和国地区校長会でもその対応が大きな議題にあがったもののひとつです。

そこで本校では,同じ上海市にある浦東校と共通の屋外活動指標を作成し,日々の大気の状態に迅速に対応できるようにしました。

上海市発表のPM2.5による大気汚染レベルを基準として指標を割り当て,高レベルの汚染時には,屋外学習活動等をすべて禁止(これには理科の観察や休憩時間の外遊び等も含まれます)にしました。

次の段階は,体育科の屋外授業の中止と休憩時間の外遊び禁止のように段階を追って活動に制限をかけるようにしていきました。一日に二度,放送があり今の大気の状態から判断がおります。子どもたちの健康と安全を第一に考えながらも学習活動を円滑に進めていくという判断を迫られた日々でした。

 

次に,大気汚染と同時期に重なったのが鳥インフルエンザの流行です。

ここでは,上海市教育委員会から出された規定に沿って,児童には毎日の検温を家庭でおこなってもらい,担任が体温チェックカードを日々,確認するといった対応を取りました。本校がある区内でも鳥インフルエンザの人への感染が確認されてからは,上海市衛生局を中心として行政からより徹底して拡大防止の安全策が取られていきました。鳥インフルエンザに対する警報が解除されるまで,このような日々の学校での対応が続きました。子どもたちの健康を守るために学校は徹底した衛星管理も行っていきました。これは危機管理面でも非常に大切で,教職員が一丸となり取り組みを進めたもののひとつでもありました。

 

さて,ここまで5回にわたり日本人学校の教育実践シリーズをお送りして参りました。連続して最後までご拝読いただきまして大変感謝致しております。

次回からは,学級経営・教科指導に関することに日誌の内容をシフトしていきたいと思っております。

つれづれ日誌読者みなさま,まだまだ暑い日が続きますが,どうかお身体ご自愛ください。

私は,残りの8月の日々も学校の子どもたちのために「熱くなれる暑い夏」にしていければと思っております。それでは次回もお楽しみに!

中村 祐哉(なかむら ゆうや)

広島県公立小学校 教諭


「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。

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