今回のつれづれは、私のホームグラウンドでもある特別支援学級での授業づくりに関する話です。
「知的障害のある子どもの教科指導は、生活に生かせるものでなくてはいけません。」
と、研究授業か何かで講師の先生から、よく教わるフレーズです。
「生活に生かせる」教科指導って?
「だから、たとえば算数だったら、お金の計算をするの。机上の学習だけじゃ、理解できないのだから。レストランごっことかして、割り勘の仕方とかを教えるのよ。そうすれば、ほら、生活に生かせるでしょう。」
で、いいのだけど。
安直すぎる!(笑)
こういう安直なことが、まかり通ってはなりません(笑ってられない!)
私が考える「生活に生かす」教科指導とは、3つの要素があります。
動機、プロセス、そして言語。
では「割り勘」を例にとって説明します。
動機
「レストランでみんなで食事をしました。同じ金額ずつ割り勘しましょう。」
これは、イメージしやすいと思います。通常の学級でもこういう発問をします。
プロセス
「お会計は19986円。えっと、今いるのは7人だな。」→金額と、人数の確認。
「19986円を7人で割ると・・・」→わり算
「ひとり1998円。じゃあ2000円集めよう。」→おおよその数
「おつりが14円返ってきた。じゃあ、これをまた7で割ってみんなに渡そう」→わり算
このプロセスを、算数的思考とか、合理的思考とかいうのです。
言語
「割り勘」って何だ? 「会計」って何だ? 「おつり」って何だ?
「1998円なのに、なんで2000円集めるの?」
「おつりが14円返ってきたとき、どうしたらいいの?」
こういうことを言語で説明できるかどうか。
人間の思考は言語です。言語でこの一連の意味をわからなければ、思考もできないのです。
生活に生かせる教科指導。
これは一昔前に流行った「生きる力」と同じ。
そして、最近流行りはじめているESD(持続発展教育)も同じ。
動機
教育用語でいうところの「関心・意欲・態度」です。
プロセス
「課題解決学習」は昔からありますね。
言語
「言語活動」というのが新設される時代です。
特別支援教育だからといっても、教育の根幹は同じだと思うのです。
専門の殻にこもらずに、何か大事なのかを、掘り下げて考えたいものです。
増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
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