プロ野球投手だった桑田真澄さんが、次のようなことを言っていました。
日本中、何百というチームを見てきたけど、
子供達を怒鳴り散らしている
指導者ばかり。
怒鳴らないと理解してもらえないほど、
私には指導力がないんですと、
周りに言っているようなもんだよね。
数年前のわたしのことを知っている人は、「それはあなたのことでしょ?」と笑うでしょう(笑)。
そうです。
わたしは、子供に怒鳴ってばかりいる教員でした。
それが「指導力」だと思っていたから、それが正しいと思っていたから。
先日、ある後輩教員より、こんなことを相談されました。
「わたしは、虫の観察とか、実験とかやる意味がわからない。実体験なんか関心がない。いかに言語だけで、子供を指導しているのだなあと。」
人間の思考は、言語です。
言語がなければ、思考ができません。
「言語」という視点をもってみると、
怒鳴る指導とか、体験重視の指導とかは、いかに思考停止を誘うかということです。
「よく考えろ!」というのはわたしたちの常套文句ですが、よく考えられるように、言葉の力を高めてあげるのが、わたしたちの大きな仕事であるはずです。
怒鳴ることは、指導者だって体力を使います。
体験させることは、計画準備段階から、それはとてつもない労力を使います。
指導者側の怠慢なんかではないのです。
事実、熱心な先生、子供にいろんな体験をさせる先生は評価が高いでしょう?
でも労力を使い、なんとなく子供たちが成長している姿を見ると、自分の仕事への満足感を得ることにつながってしまうのです。
その指導が正しいという信念にかわってしまう。
指導者側の、誤のインセンティブとでもいいましょうか。
こうして、極端な指導はエスカレートしていく・・・。
こういうことを言うと、全く叱らない教員がいいのか、全く体験をしない方がいいのか、みたいなことになってしまいがちですけど、それも違うと思います。
わたしだって、叱るときは声を大きくして叱ります。
体験だって必要です。
一日中、怒鳴ってなくてもいいでしょ?って、話です。
なんでも体験ばかりじゃなくてもいいでしょ?って、話です。
エスカレートを防ぐには、バランス感覚でしょ?って、話です。
増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
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