2014.06.19
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学級が安定するツールはつくれるのか?

東京学芸大学教職大学院 准教授 増田 謙太郎

「学級の安定こそが学力向上につながる。」

と、とある校長先生に先日ご指導いただいた。

 

学級が荒れている、そんな状況では、学力なんかおぼつかない。

それはそうだろう。簡単にイメージしやすい。

 

けれど、これは学級とか学校だけのことではない。

 

 

例えば、家庭。

家庭だって、安定していた方がいいに決まってる。

あの子も安定した家庭の子ならもっと伸びるのに・・・と、無責任に思う教員は多い。

 

 

例えば、国。

国だって安定していた方がいいに決まってる。

教育力が上がれば、国家の力も高まる。有名な話だ。

 

 

例えば、人間。

人間だって人格が安定していた方が学力は伸びるだろう。

邪念ばかりじゃ、テスト前の勉強がおぼつかなくなるのは、みんな知っている。



 

「学級の安定こそが学力向上につながる。」

個人で学力を上げる方法はたくさんある。
たくさん教材が開発されている。学力だけをあげるのであれば、本屋さんにいけばたくさんツールが売っている。

 


学級が安定するようなツールってあるのだろうか?

学級が安定すれば、学力が上がる。

それなら、ツールでもなんでも頼って、学級安定を目指すべきでは?

 

いやいや、結局、ツールに頼った学級安定は、教員にとってつまらないのだろう。だから、あったとしても流行らない。

 

教員だって、生身の人間。

おもしろいな、つまらないなといった感情で日々動いている。

 

どうしても、教育ツールは、子供目線で作られることが多く、使う教員のことはあまり考えられていない。

いや、違うな。教員が使いやすいように考えられているのだけども、教員という職業集団の感情の幅広さに気付いていないのかも。万人受けするものは、結局誰もが使いにくい。

 

ツールを開発する人は、そういう教員という職業集団の感情の機微に気付いたほうがいい。ナイーブさや、デリケートさに(笑)。

 

校務のIT化なんかもそうかも。
もちろん助かる教員も多かった。でもついていけずに、相当な学級安定の技量をもった教員が苦しんでいたりする。

結局、ひとりひとりのニーズに合わせたということになってしまうのかな。
ひとりひとりのニーズに合わせるのは特別支援教育の本筋!

特別支援教育のノウハウが、なにか大きな発明につながる日がくるのだろうか。社会全体に影響を及ぼすような。

増田 謙太郎(ますだ けんたろう)

東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。

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