在外教育施設への道
私が,日本人学校(上海)への赴任したのは2012年4月初旬のことでした。
文部科学省(文部科学大臣)指定在外教育施設で働く教員は,
1.各都道府県等自治体・文部科学省の選考を受けて派遣に至る文部科学省在外教育施設派遣教員。
2.主として海外子女教育財団の公募(任命権者は各日本人学校・補習授業校)から各校の書類選考・面接選考等を受けて赴任する専任教員。
3.各日本人学校・補習授業校による学校独自の選考によって直接採用・現地採用という形で任用される教員。
というように大きくわけて3つの採用からなる教職員集団です。1.2に関しては基本的に希望者が赴任地を選択することはできません。
ここから数回に亘り,私が日本人学校で経験させていただいたこと・日本人学校での取り組みと実践(学級担任をしていた5・6学年の取り組みについてが主となります)などを中心に日誌をすすめて参りたいと思います。これから在外教育施設に赴任される方・希望される方にとって,この日誌が少しでもご参考になれば,執筆者としてこの上ない喜びです。
そして,ここでの日誌がこれからの国際理解教育・海外子女教育・在外教育施設等への幅広い理解と関心へつながることを願いながら今回からの日誌はスタートです。
上海市と上海日本人学校の概要
中華人民共和国は人口約14億人,国土面積は日本のおよそ26倍という広大な国土と5000年もの歴史をもつ国です。
上海市は,人口約2400万人で,在留日本人の数は2014年4月の最新のデータで約4万9000人となっています。
位置は鹿児島県佐多岬とほぼ同緯度に位置しています。南東貿易風帯に属しているため,夏は南東風が強く,高温多湿となっており,冬は,北西風が強く,空気も乾燥し足元から冷え込みます。四季もはっきりしており,実際に暮らしてみて夏と冬が長く,春と秋が短い印象です。急激な物価上昇と共に経済発展を遂げる上海。上海の摩天楼を吹き抜けるビル風は,これからどこへ向かっていくのでしょうか。非常に興味深いところです。
つづいて上海日本人学校の概要と沿革についてです。上海日本人学校は,1975年に発足した「上海補習校」までさかのぼります。日中国交正常化のわずか3年後のことでした。その後、1987年に「上海日本人学校」として正式に設立されました。
現在,指定在外教育施設としては世界最大の日本人学校となっています。
日本人学校ならではの特色ある教育カリキュラム
上海日本人学校の教育は,学校目標「自ら学び,明るく,やさしく,たくましく,国際性豊かな児童を育成する」に則り、「独歩博愛」という校訓のもと,日々の教育活動に取り組んでいます。
「語学」の授業では、中国語・英語を全ての学年でおこなっています。中国語は語学力に沿って4グレード・英語も2グレードにクラス分けをおこない,子どもたち個々の語学力に寄り添った授業が展開されています。それぞれネイティブの語学専科教員が指導にあたります。英語においては,All Englishで授業がおこなわれます。また,家庭科の授業においても英語が取り入れられており,裁縫・調理実習も英語を織り交ぜながら進められています。
「総合的な学習の時間」は,現地校との交流を基本的にどの学年もおこなっています。日本と中国の子どもたちが,それぞれの国の文化や考え方を知ることのできるとても意義深い時間だと感じました。私の担任していた第5学年では,日本人学校と中国の現地校にお互いの児童が出向き,年間二回の交流を計画・実行していきました。
またここからはカリキュラムとは直接関係しませんが,現地校との交流は子どもたちだけではなく,教職員同志の学校視察や意見交換会もおこなわれます。
実際に中国の公立小学校の先生方とお話し,教室や掲示物も視察させて頂いた中で私が一番に感じたことは,児童個々の努力とそこから得られる結果をとても大切にしているということです。
子どもたちができたことや頑張れたことは,教師から大きく評価され,その喜びから児童は,次へのやる気や頑張りが生まれるという考え方だと感じました。
そんな意見交換会の最後に私は,こんな質問をしてみました。
私 「教師になって一番嬉しかったこと・やりがいはなんですか?」
中国公立学校教員「子どもたちの明るい笑顔に毎日出会えることです」
この瞬間,日中両国の教職員も自然と笑顔になりました。教育者として世界共通の思いが感じられた瞬間でもありました。
さて,次回6月24日(火曜日)も引き続き日本人学校で経験させていただいたこと・日本人学校での取り組みと実践を中心につれづれと書かせていただければと思います。次回もお楽しみに!
中村 祐哉(なかむら ゆうや)
広島県公立小学校 教諭
「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。
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