2014.06.03
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特別支援学級でできる社会科の授業

東京学芸大学教職大学院 准教授 増田 謙太郎

ぎもん

小学校の社会科の授業は、おおざっぱに言って

「○○について、どうしてか考えよう。」(疑問)

「○○はなぜだろうか、考えてみよう。」(予想)

で、成立しています。

 

社会科の授業が嫌いな子供、苦手な子供は、この「疑問」と「予想」を考えることができない、つまらない、興味を持てないと感じているのではないかと思います。

 

特別支援教育を専門としている私としては、この「疑問」と「予想」の立て方をいかに教えていくかが社会科の授業の支援のポイントではないかと思っています。

現在やっている、特別支援学級の社会科の授業での実践を紹介します。

 

 

疑問を作る

 

よく通常の学級の社会科見学で、

「質問を考えてきなさい」

と、事前に宿題が出されます。

 

こういうとき、だいたい小学生の質問というのは、「量」に関する質問が多いです。

 

「キャベツは どのくらいとれるのです?」

「この機械の大きさは、どのくらいですか?」

 

 

しかし、知的障害の子供の場合、量感が育っていないことが多いので、このような「量」に関することは、あまり疑問に思わないのです。

 

 

それよりも「どうして?」

 

「どうして?」は発達段階としては2歳くらいの子供から普通に現れます。

 

ですので、特別支援学級の社会科では「どうして?」ではじまる疑問文を作る練習をするとよい。

「どうして、バスにミラーがついているのだろうか?」

「どうして、商店街に八百屋さんがあるのだろうか?」

 

こういう学習をすることで「疑問」「質問」ということはどういうものなのか、わかってきます。

 

 

予想を立てる

 

疑問を作ることができたら、次に、その「疑問」対する「予想」を考える学習をします。

 

「予想」というのも、簡単に使ってしまう言葉だけど、このような抽象的思考は知的障害の子供には難しい。

 

これも、「どうして?」という疑問文で投げかけられると、その答えを考えようとするので、子供なりの予想が立てやすくなります。

 

大切なのは「予想」という言葉の定義を子供にしっかりしておくこと。

子どもたちには「思ったこと」「もしかしたら・・・かもしれない。」という言葉で説明するとわかりやすいようです。

 

あるいは、「もしかしたら・・・」ではじまるパターンとして、文章をつくる練習をするとよいです。

「○○先生は、明日、どこに遊びに行くでしょうか?」(疑問)

「もしかしたら遊園地かもしれない」(予想)

こういうやりとりを行っていくことで、「予想」という言葉の意味がわかってきます。

 

それと、「予想は間違えてもよい」ということ。

 

予想を立てたあとは、実際に本で調べたり、働いている人にインタビューするなりして、答えを調べるようにします。

 

 

「疑問」と「予想」

 

早い話、世の中の研究というものはこれで成り立っているのです。

 

大学生の研究でも、疑問と予想が成立していないものが多いと、大学の先生が言っていました。

いわゆる「研究の目的」「研究の仮説」というもの。

 

小学校から、疑問と予想の生成方法をきちんと積み重ねていくと、将来的に研究マインドが育っていくのではないかなあと思います。

 

ちなみに先生方が日々実践されている校内研究はどうでしょう? 「疑問」と「予想」、成立していますか?

増田 謙太郎(ますだ けんたろう)

東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。

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