2014.05.14
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Wonders of Japan

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

「外国人旅行者が気づき驚いた日本」を話題にしたレッスンを先日から授業で扱い始めました。
開隆堂という出版社のEnglish Nowの English CommunicationⅡのLesson4の中で紹介されています。教科書には、公共交通機関が時間通りに運行していること。空港に降り立ったら、マスクをしていて引いたことなど紹介しています。

日本経済の好不調や世界経済の関連もありますが、観光庁の設置など日本政府の後押しと数値目標が設定されて、外国人旅行者が増加の一途を辿っているそうです。
訪日外国人は2003年に521万人であったが、昨年2013年には1000万人を突破しました。(「外国人旅行者数」で検索結果より)

授業では、教科書の内容に入る前に、外国人旅行者の増加のメリット、デメリットについて考えてみました。メリットは、「日本(人)をもっと理解してもらえる」「観光収入が増える」「日本経済への効果が期待できる」などでした。またデメリットについては、「外国語での対応が必要になる」「犯罪の増加に繋がるのでは」という心配も上がりました。(参照:wikipedia「訪日外国人旅行」)(ディベート風に取り組めたら良かったかもしれません)

wikipediaには、北海道や東北や北陸信越などの地域ごとの訪問外国人旅行者の国別統計が1位から3位までの国名を表にしています(2010の統計)。私は、国当てクイズにしてみました。例えば、北陸信越では、1位が台湾 (31.2%)、2位が韓国 (14.6%)、3位が中国 (10.2%)からの旅行者になっているのですが、関東地方はどうでしょうか。1位は中国 (18.2%)、2位は(1.   )(13.8%)、3位は韓国 (10.4%)です。また沖縄はどうでしょうか。1位は台湾 (27.7%)、2位は(2.   )(26.6%)、3位は韓国 (8.6%)となっています。(答えは最後にあります)


次に外国人旅行者に限定したのではありませんが、外国人の方が日本へ来て驚いたことを紹介したサイトを幾つか検索してみました。その中で「外国人が日本に来て驚くこと46個」を紹介しているサイトに出会いました。日本語と英語と両方の記載で驚いたことが紹介されていますので、生徒の英語学習用の資料としても最適でした。(ここで、46個を紹介する紙面がありませんので、皆さんでどうかお立ち寄り下さい)


私は、ALT(Assistant English Teacher)の先生にも、この46の英文を紹介して、この中から「そうだ」と思う項目を選んでもらいました。授業では、「ALTの先生も思ったことが5個あります。どれだと思いますか」と、推測ゲームにしました。ALTの先生は、外国人と十把一絡げにするのでなく、出身国によっても個人的にもとらえ方には幅があることも触れられ、一般化しすぎないように私に注意されました。情報やデータを扱う時の姿勢として、大切なことだと思いました。教科書もフランス人、インド人と多用な国籍の人を(設定上)登場させています。

ALTの先生は、次の5つを選びました。
1)映画のチケットの値段が高い
2)キットカットの種類が異常に多い
3)福袋がある
4)落し物がかえってくる可能性が高い
5)ウォシュレットがある

私はALTの先生に更に「3年前に始めて日本(富山)に来て驚いたことは何であったのか思い出せませんか」尋ね直してみました。かなり日本での生活に慣れてしまい、当時の驚きを思い出すのは難しいようでしたが、なんとか次の4つを紹介してくださいました。
1.トイレの設備(ウォッシュレット、便座暖め機能)。
2.ゴミの分別が細かいこと。
日本(富山)ほどゴミの分類、またはリサイクルが細かくないとのこと。
3.学校に掃除の時間があることと、それを生徒等がすること。
4.公共心の高さ。
アパートの下に落ち葉やゴミがあったら、誰かが必ず掃いて、ゴミ一つないように保っていること。


私は、この教材を通して、日本がどのように外国人(旅行者)の方から思われているのか一つの傾向を知ることができました。そして、現在当たり前と私たちが考えていることは、世界基準(そういうものがあれば)からすると、違うではないかという認識を持つことに繋がったようです。また、何事も人と他人と同じであろうとする日本の国民性についても、少し考え直すことに通じました。日本の良いところを再発見して自信を持てたようでもあります。

私は、「外国人が見た驚きの日本」を通して、生徒に現在あたりまえであると考えていることは、実は他の国の人から見ると、普通ではない、特異と映る面や愕きになる場合もあること。同様に、生徒が日常生活でも、自然または当然なことだと思っていることは、実はそうでないことも理解できるようになってもらいたいと考えています。できれば現在の日本ができるまでに多くの方々の努力の上に成り立っていることにも気づいてもらいたいと思います。この課を通して、視野や、物事のとらえ方が少しでも以前よりは、多面的に広い面で眺められるようになってもらいたいと願っています。


同時に、生徒の心理的な内面など個人的な悩みごとに対しても、少しでも違った面で考え直し、自分で立ち向かい、克服する力が付くことに通じることを期待しております。少しでも題材が、知識の面にとどまらず、生徒の人間的な視野の広がりや、精神的な心の成長に通じることも願っています。(ちょっと欲張りすぎかもしれませんね。)

 

 

追伸

「英語嫌いにさせない」授業作り(学びの場.com内の記事)の佐藤幸子先生ように、色々な実践を積み上げていきたいものです。

 

(答)1.アメリカ 2.香港

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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