2014.05.08
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魔法ではない。

北海道札幌養護学校 教諭 郡司 竜平

  新年度、新学期がスタートして早くも一ヶ月が経とうとしています。

ここ2,3年、この時期になると決まって声をかけられることがあります。

それは「iPad買いました!!」

そして「どんなふうに使えますか?」と。

 

子供たちの指導・支援を少しでも充実させたいと強く願って、決して安価ではない機器の購入を決めるのだと思います。

そこを否定する理由はひとつもありません。子供たちの発達・成長のために熱心に取り組まれている教員のお一人なのだと思います。

私の所属先では、スマートデバイス使用の規定に基づけば、タブレット端末類は、指導の一環で使用することが可能です。

なので、私は子供たちの発達に寄与できるのであれば積極的に使いたいと私は考えています。

ただし、それには日常の行動観察、アセスメントから導いた指導・支援のねらいと手立てが必ず必要なのです。

iPadがあれば日常の指導・支援がすべて解決するということはありません。

 

          「魔法ではない」のです。

 

ですから、上のようなお声がけをいただいた時には、必ず一つずつ問いなおすようにしています。

 

「先生が使いますか?」「子供たちが使いますか?」

 

教師が主に使用する場合は、うちで言うと視覚的な支援に用いることがもっとも多いように思います。学習の流れを視覚的に提示したり、一つひとつの活動、作業の手順を提示したり、学習の様子を動画で見せたりと使っています。

子供たちが使用する場合は、数や文字、なぞり書き、時計などの学習として、また、ゲームなどは余暇として使用している例が多いです。あとは、スケジュールやコミュニケーションのツールとしての活用もされています。

 

この最初の問いの答えによって、必然的に端末の設定も変わってきますし、使用するアプリも違ってきます。

そして、子供たちが主に使用する場合には、学習場面がメインなのか、余暇場面がメインなのか、それとも別な用途なのか。

学習場面であるならば、どんなねらいで、どんな指導の過程なのか、それはアナログの教材では達成できないことなのか、アナログとデジタルを比較した時に、デジタルの方がより効果のあるものなのか。アナログからデジタルに移行するものなのか、最初からデジタルで使用するものなのか。

そんなことを問い直しながら、具体的な使用場面をイメージできるようならなければなりません。ただし、これもいきなりイメージするのが難しいことが多いですので、何度も何度もまず自分で操作して試していかなければならないかもしれません。アプリもいろいろなものを試して試して、子供たちの学習に合致するものを見つけていかなければなりません。こうして指導・支援の具体的なイメージを作り上げる、そこがスタートなのかなと私個人は考えています。

ここでイメージが持てないと、いざ子供たちが使いはじめるとゲームで遊ぶことに特化してしまうこともあるのです。

繰り返しになりますが、

 

          「魔法ではない」のです。

 

 

 

 

ただし、魔法にかかったように夢中になりますよね、大人も子供も。

郡司 竜平(ぐんじ りゅうへい)

北海道札幌養護学校 教諭
小学校支援級、通常級と担当させていただき、現在は札幌養護学校小学部にいます。ここでは、私が取り組んでいる特別支援教育におけるICTの活用について具体例を交えながらご紹介していけたらと考えています。

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