2014.09.15
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自閉症教育の「イマ」と「これから」 ‐Ⅱ‐

東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard) 綿引 清勝

 前回に引き続き、今回は8月に行われた日本自閉症スペクトラム学会でのシンポジウムから、自閉症教育の「イマ」と「これから」について考えてみたいと思います。

 

 シンポジウムのタイトルは「自閉症教育の到達点と今後の課題」で、内容は幼稚部、小学部、高等部における特別支援学校と中学校の特別支援学級の取組についてでした。

 

具体的な支援の方法について 

 東京都では、平成16年度から自閉症の教育課程についての研究が始まり、平成22年度には知的障害特別支援学校のすべての小学部、中学部において自閉症に特化した教育課程を全面的に実施するようになりました。

 この約10年間で自閉症や特別支援教育に関する様々な本が出版され、すぐにでも実践につなげられるアイディアもたくさん報告がされています。しかしながら、このような実践は、自閉症の子どもたちに限ったことではなく、通常学級も含めた様々な子どもに対して効果的だと感じます。

 

 今回のシンポジウムの中で筑波大学付属久里浜特別支援学校の川場先生は、自閉症児の具体的な支援の方法として、以下の内容を挙げていました。

 1) 活動場所の意味や境界域をわかりやすくするために物理的な構造化を行うこと。

 2) 「何が」「いつ」「どこで」等を理解して予測を可能にしたり、見通しがもてるようになったりすることで、混乱なく活動できるようにスケジュールを提示すること。

 3) 物事を順序立てて考えることの困難さを補うために、何をどれだけやったら終わりにするのか等を整理して伝えるワークシステムを設定すること。

 4) 話し言葉で伝えるだけではわかりにくいので、文字で書いたり、絵や写真を見せたりするなどの視覚支援を行うこと。

 5) 言葉による指示は短く端的に行うこと。

 6) 感覚の過敏さに配慮すること。

 

 こうやって整理すると、現場の先生方も実際に取り組まれていると思いますが、言い換えれば、やっとこのようなことが当たり前と言える時代が来たとも感じます。

 

アセスメントを活用して

 今回のシンポジウムでは、アセスメントについてもいくつかの事例報告がありました。

 アセスメントには、発達検査などのフォーマルアセスメントと、行動を観察するといったインフォーマルアセスメントがあります。

 私も自分で子どもに検査をかけることはありますが、その負荷を考えるといたずらにやって良いモノではないと思います。しかし、子どもの力を正確に分析し、見立てを裏付けていく上では、やはり有用なツールになります。

 一方で、検査の結果だけは読み取れないモノもたくさんありますので、日頃からいくつかの観点をもって子どもの様子を観察し、把握していくことが大切でしょう。

 確かに検査をかけることができるスキルは教員の絶対条件ではありませんが、検査結果から仮説を立て、情報を適切に読み取る力は、今後の学校教育において先生方に求められる専門性の一つになっていくでしょう。

 また、特別支援教育が推進されていくに当たり、子どもの宝物がたくさん詰まった検査結果が、ただのペーパーになってしまわないよう、私たちは学びを深めていくことが大切になっていくと思います。

 

根拠のある教育を

 「何を教えるのか」

 「なぜ教えるのか」

 「どう教えるのか」

 何かを教えていくに当たり、根拠を明確にしていくことが大切です。「これまでの学習の積み重ねはどれぐらいか?」、「どのような学びに発展させていくか?」など、適切な課題設定は難しいことではありますが、そうやって子どもたちのことを考えるのは楽しいものです。

 「中学生だから」、「高校生だから」と端的にライフステージで分けて考えてしまうのではなく、発達の遅れや偏り、歪みを理解し、過去から未来へと、発達のストーリーを考えながら支援の方略を立てていけると良いです。

 そして、それを実現していくためには、上述の内容を指導者が正しく理解し、実践に取り入れていくことがポイントになります。

 

 

まとめにかえて

 ある自閉症の子は、触覚防衛が強かったために、「急に触られたことで驚き、大パニックを起こしてしまった」というエピソードがあります。本人だけでなく、周囲の人間も心が痛い思いをされたことでしょう。しかし、理由が分かってからは、突然触るようなことはせずに、少しずつ触る練習をしていったことで、大きなパニックを起こすことはなくなりました。

 また、触覚だけでなく、「大きな声で指導をするとパニックを起こして余計に子どもを混乱させてしまう」といった聴覚への配慮も当たり前に言われるようになってきました。 これは、スペクトラムだけでなく、感覚面についての理解も深まってきたように思います。

 

 今後、このような指導の配慮はどんどん教育現場に浸透していくかと思いますが、シンポジウムの企画者である長崎大学の西川先生は、ナショナルカリキュラムの有用性を語ってくださいました。

 そのためには、意識を高めるだけでなく、教育課程やそこで活用する教材の工夫などについても、まだまだ探求していかなくていけないのだと思います。

 

 私自身まだまだ勉強不足で理解が足りないことばかりですが、一歩ずつでもしっかりと前に進んでいきたいと思います。

 今回で15期の投稿は最後になります。引き続き16期も執筆させていただくことになりましたので、またお付き合いいたければ幸いです。よろしくお願いいたします。 

綿引 清勝(わたひき きよかつ)

東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard)
東京都内の知的障害特別支援学校で中学部、高等部を経験後、現在は小学部の自閉症学級を担任。自身の実践を振り返りながら、子ども達が必要としている支援とは何かを考えていきたいと思います。

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