2014.03.31
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「Just be」-支援者のハート-

東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士 植竹 安彦

桜の季節に思うこと

 卒業式が終わり、新年度の準備に忙しい時だと思います。

 私は新しく担当するお子さんと出会ったとき、数年後に迎える卒業式の卒業証書授与をどんな姿で、どんな気持ちでもらえる子に育ってくれたら、本人もご両親も嬉しいかなぁと想像します。

 

 この卒業式が一つの目指すゴールです。ゴールに向けて全国の支援者の方々が、今、スタートの準備をされていると思います。

スタートに際して、いつも自分自身に投げかける思いを今回はお伝えしたいと思います。

 

「Just be」から始めよう

  特別支援学校に通う子どもたちは、障害による様々な困難や、生き辛さを抱えていることが少なくありません。

 

 教える側の私たちは、学習指導要領にもあるように「改善・克服を目指して」子どもたちが成長して変わっていく姿ばかりを求めがちです。

 未来へ向けて進む前に、今ある子どもの姿を、良い面も課題となる面も含めて一度その子全てを「丸がかえ」する決意が大切だと思っています。

 

 つれづれ日誌の「音におびえる子どもたち(2)」でも書きましたが、子ども達はもちろんのこと大人であっても「自分の存在を認めて欲しい」と思っています。

 「あなたは、あなたでいいんだよ」「そのままで、十分に価値があるんだよ」ということをしっかり伝えることが支援者のスタートだと私は考えています。

 サンスクリット語にBEの語源として”なる、存在する”の意味があるそうです。

 「Just beでいいんだ」という安心感があってこそ子どもたちは未来へ向かえるのではないかと思います。
 

 プロの子育て

 2月に私の知人がプロゴルファーの宮里藍さんのお父さんと沖縄でゴルフをラウンドしてきました。OBを打つ度に宮里さんから、「大丈夫」「OK、大丈夫」と何度も声をかけられたそうです。それは宮里さんの子育てにおいても同じだったそうです。

 

 優秀なプロゴルファーを育てるには、スパルタな指導があったのかと思っていましたが、ミスショットを打つ度に、まず、「大丈夫」と声をかけていたそうです。

 今を受け入れ、それから二人でどうして行こうかと言った「大丈夫」の一言に私は感じました。

 

まるごと受けとめよう

 つれづれ日誌の大谷先生も今回言われていましたが、私もできることなら、良き支援者として、子どもを取り巻く環境全ても一度かかえて欲しいと思います。

 

 子どものことで思い悩んでいるお母さんの気持ち、子どもは子どもで親の関わり方に悩んでいるということもあります。

  一度、受けとめた後に、協力してくれる学校内外の支援者と結びつけていったり、校内の仲間や家庭と「共育」していけたりすれば良いと思います。

 

 まるごと受けとめることは、勇気もいります。一度受け止めたら、その手を簡単に放すことはできないからです。

 この勇気をもつには、日々の努力しかないと思っています。自分自身に「大丈夫」と言い聞かせながら、専門性を高める努力を少しずつ続けていくことだと思います。

 

 ぜひ、子どもだけでなく、4月から初任者として支援者に仲間入りする全国の先生のことも、「大丈夫、一緒に頑張ろう」と受け止めていってください。そのような学校なら、きっと子どもたちも安心して学べると思いますので。

 

いったん踊り場で

 14期のつれづれ日誌は今回が最終回です。

 1年半に渡り執筆させていただく中で、子どもの発達の根っことなる感覚・運動面を中心に書かせてもらってきました。

 意識でき辛い感覚のトラブルにより、誤解を受けやすい子どもたちの良き理解者が少しでも増えてくれたら嬉しいなと思っています。

 

 今回でいったん、レギュラーでの執筆は終わらせていただきます。私自身、4月からチャレンジする仕事が増えましたので、その中で何かつかむことができたら、またこちらでお伝えしたいと思います。

 つたない文章をお読みいただき、本当にありがとうございました。

 4月から、それぞれの地で一緒に頑張っていきましょう。

植竹 安彦(うえたけ やすひこ)

東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士
肢体不自由教育からの視点を中心に、子どもたちの発達を支えるために日々できることを一緒に考えていきたいと思います。

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