2014.03.14
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社会科の使命、それは世界の希望

石川県金沢市立三谷小学校 教諭 泊 和寿

社会科の使命、それは世界の希望

 

振り返ると、プロフィールで社会科をやっているなんて書いてあるのに、あまり社会科について書けなかったなと思う。

連載当初は、「あゆみ」を生かして書こうと思っていたのだからそれでも悪くないのだが。

最終回に際して、発展途上の自分ではあるが、社会科について自分の思いを書き残したいと思う。

 

1.社会科の使命

 日本で社会科を教える全教員は、この社会科誕生の目的を知っておいて欲しい。

社会科専門ではなくても、である。

小学校社会科学習指導要領補説(昭和23年)に、それが書いてある。

以下に、一部を紹介する。

一、社会科の目標

 社会科の主要目標を一言でいえば、

できるだけりっぱな公民的資質を発展させること

であります。これをもう少し具体的にいうと、児童たちが、

(一)自分たちの住んでいる世界に正しく適応できるように、
(二)その世界の中で望ましい人間関係を実現していけるように、
(三)自分たちの属する共同社会を進歩向上させ、文化の発展に寄与することができるように、

児童たちにその住んでいる世界を理解させることであります。そして、そのような理解に達することは、結局社会的に目が開かれるということであるともいえましょう。

 児童たちが社会的に目を開くためには、社会の根本的諸機能と、それらの機能が相互に関係しあって作っている社会生活全体を、人間らしい生活をいとなみたいという人間の根本的欲求、すなわち人間性に関係させて深く理解しなければなりません。なかでも、社会生活を成立させ発展させている重要な条件として、

(一)人と人との間の相互依存関係、
(二)人間と自然環境との間の相互依存関係、
(三)個人と社会制度や施設との間の相互依存関係、

を理解することが肝要であります。

 しかし、りっぱな公民的資質ということは、その目が社会的に開かれているということ以上のものを含んでいます。すなわちそのほかに、

人々の幸福に対して積極的な熱意をもち、本質的な関心をもっていることが肝要です。

それは政治的・社会的・経済的その他あらゆる不正に対して積極的に反ぱつする心です。

人間性及び民主主義を信頼する心です。

人類にはいろいろな問題を賢明な協力によって解決していく能力があるのだということを確信する心です。

このような信念のみが公民的資質に推進力を与えるものです。

 社会的に目が開かれていることは、民主社会を建設し維持するのに欠くことのできない条件です。

しかし社会的に目のあいていること、社会的な関心をもっていることは、さらに、よい共同生活をするのに不可欠なさまざまの技能や習慣や態度と結合していなければなりません。すなわち

その時々の事態に応じて適切に処理すること、
建設的に協力すること、他人の権利を尊重すること、
疑わしい意見や正しくない意見とたたかうことなど、

総じて民主的社会の有為な公民として必要な数多くの特性を身につけていなくてはなりません。

以上、抜粋です。

このような信念のみが公民的資質に推進力を与えるものです。

社会科は、技術や才能だけでは辿り着けない、大きな目標と使命を持っているのです。

私は、

熱意をもって、教材研究に勤しみ、子どもと共に学んでいく、信念のある社会科授業が好きです。
そんな授業を目指す教員の皆さんを心から尊敬します。
「人間は人間社会の中でこそ育つ」

そう思って、

社会科の授業を、

教育の在り方を、

自分を、

常に模索しています。

  

2.世界の希望

 

世界各地の紛争、

公害や資源の多用による環境破壊、

人種や民族やその他の差別、

人口増加、

水不足や食糧不足、

安全でない食糧、

政治やイデオロギーの違いなどによる対立、

無秩序に溢れかえる情報、

貧富の差の増大、

心と体の健康が脅かされている 等、

 

世界には、解決しなければならない問題が山積みです。

その問題に、私たちは立ち向かえているでしょうか。

地球温暖化を知った学者が、

自分達で改善することができないであろう世界の国々を嘆いて、

「諸君、世界は終わった。」

と、語ったとのニュースは、今も憶えています。

 

しかし、私は、嘆いてなるものかと強く思っています。

確かに世界には、解決困難な問題がたくさんあります。

それらの問題の解決に向けて、世界が最善の努力をしているかというと、

まだまだ努力が足りないとも思います。

 

それはなぜか?!

 

社会科の目標を引くならば、

それは、世界の人々が、社会に目を十分に開けていないからです。

事実と現実をしっかりととらえて、

手元にないものでも、

しっかりとしたイメージをもてたならば、

解決すべき問題の深刻度を実感することができます。

 

命の危険を感じた病人は、

生きたければ全力で治そうとするでしょう。

同じく、「これは何とかせねば!」と実感した問題ならば、

全力で解決しようとするはずです。

これが、人間の性分です。

道理です。

 

だから、社会科です。

社会科は、本来、共により良い社会を築ける人間を育てる学問です。

日本の社会科は、

世界の人々をして、私たちの住む世界に目を開かせることができる教科です。

 

世界にも歴史や地理などについて学ぶ教科はあります。

しかし、

日本の社会科ほどの理念と目標をもって、人間教育に挑んでいるでしょうか?

先進国の中には、日本の教育基本法を参考にして、教育を立て直している国があります。

それほど、日本の教育と社会科の理念は高いのです。

 

日本も多くの社会問題を抱えています。

さあ、どうだ!解決したぞ!

次はこれか!解決してやる!

人々が真剣に、真正面から問題解決に立ち向かって、

だけど悲壮感なく、嬉々として、

共により良い社会を築いていく。

 

次代を担う子ども達が、

そんな逞しい姿で、

まずは日本を、そして世界をも変えていく。

 

私は、そんなイメージを強く持っています。

 

それは、簡単ではありません。

苦労も半端ない。

だからこそ、

子ども達には、自分を鍛えて欲しい。

親の皆さんには、子どもを甘やかさず、たくましく育てて欲しい。

世界一、平和で満ち足りているとも言える日本の中で、不平不満、自分勝手をやっていては、

人生が虚しいものになってしまう。

 

日本の社会科は、より良い世界を築くための希望

 

共感して下さった方々、

社会科とは、教室内や学校だけで学ぶ学習ではない。

家庭でも、

職場でも、

地域でも、

自分でも、

どこにあっても、社会へ目を開いていくことは、社会科です。

社会科しましょう!

 

さあ、世界のみなさん、

身の周りの社会から始めて、

社会科をしよう!

社会へ目を開いていこう!

そして、解決したい問題が見つかったら、

みんなで一斉に飛びついて、

知恵と力を合わせて、

前代未聞の問題を解決しよう!

子どものために、

弱いもののために、

愛するもののために、

未来のために、

 

近年、バーチャルリアリティーを追求して、

様々な、文化が花開いているが、

ネット上の仮想ゲームに心の安らぎを求めるくらいなら、

その仲間と共に、

社会の問題に取り組んでみないか。

人生は、最高のリアリティー。

リセットはできないが、

失敗も成功も、全てを糧にして、

幸せに変えることもできる!

 

今も、僕は、

社会科をしたくて、

社会に沢山ある問題を解決したくて、

うずうずしている。

だから、未来を託す子ども達を信じて、

彼らの素直でひたむきな努力をに敬意をもちながら、

今日も、教員をやっていく。

 

3.最後に

 

1年間、私の「教育つれづれ日誌」を読んで下さった方々、誠に有難うございました。

つれづれ日誌につき、私見も多々入っていましたが、だからこそこのホームページは素敵なのだと思います!

また、「教育つれづれ日誌」という、素晴らしい執筆の機会をいただいた、内田洋行研究所の皆様、特に、校正とホームページへの担当をしてくださったHさんに、心から感謝申し上げます。

皆様の益々の御健康と御多幸と、社会科の益々の発展を心から御祈り申し上げます。

 

 

 

【追伸】2月28日。本校の6年生を送る会は、大成功で終わりました。

    私が、これまでに担当した6年生を送る会の中でも、子ども達の達成感と成長が高い会でした。

    改めて、子どもの育つ可能性と、教育機会の大切さを実感致しました。

    金沢大学附属小学校は、来年度、140周年になります。

    あとわずかで、クラスの子ども達ともお別れですが、来年度の活躍を心から祈っております。

    御報告まで。 

泊 和寿(とまり かずひさ)

石川県金沢市立三谷小学校 教諭
私は、子どもたちが目を輝かせて生き生きと学ぶ姿が大好きです。子どもが本気になって学ぶと、グワッと教師を越えていきます。今年も、そんな感動をめざしたいと思います。

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