2014.03.12
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キャリア発達を支える「ボディイメージ」

東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士 植竹 安彦

八重桜のように

 いよいよ、卒業シーズンですね。卒業・入学というと桜をイメージする方も多いと思います。桜と言えば「ソメイヨシノ」が有名ですが、私はソメイヨシノの後に咲く「八重桜」が好きです。他の桜よりも少し遅い時期に咲きますが、とても立派で可愛いらしい花を咲かせます。

 この季節、いつも卒業生に、「遅咲きでもかまわない。八重桜のように自分の役割を一生懸命果たそうとする人に育ってほしい」と思い送り出します。

 

復習です

 さて、今回は前回に引き続き「ボディイメージ(身体意識)」についてです。詳しくは前回のつれづれ日誌をご覧いただくと、今回のお話はより分かりやすいかと思います。

 

 前回のおさらいで、「ボディイメージ」って何?というところからお話します。

 

ボディイメージとは、視覚的な映像ではなく、「自分の身体に対する実感」「生理的な実感」のことをさします。

 

 そして、そのボディイメージは、触覚・固有覚・平衡(前庭)感覚の統合により発達していきます。

 

さらに復習で、

(1)平衡(前庭)感覚は・・・「姿勢の傾き(身体の軸)」「運動方向」「加速度」の情報源

(2)「固有覚」は・・・「姿勢の状態、力の入れ加減、筋緊張(運動の状態)」の情報源

(3)「触覚」からの情報により、・・・自分の「身体の輪郭、サイズ」の情報源

 となり、この(1)(2)(3)が統合されることで、

  ・自分の体や手足の「輪郭、部位、サイズ」が実感でき、

  ・自分の体や手足の「曲げ伸ばしの状態」が実感でき、

  ・自分の体や手足の「力の入れ加減」が実感でき、

  ・自分の体の「軸の傾き(姿勢状態)」が実感でき、

  ・自分の体の「動いているスピード」が実感でき、

というように、複数の感覚情報が統合されて、自分の体に対する実感が育ち「ボディイメージ」が形成されていきます。

 

 しかし、この感覚の統合に何かトラブルがあると、ボディイメージの発達が崩れてしまいます。未発達だとどうなるのかは、前回を読んでくださいね。

 

「自我の発達」とボディイメージ

  ボディイメージが育つことで、自分の身体を自分の思いのままに運転できるようになります。

 

 例えば、手足を器用に動かせると、模倣が上手で人から学ぶ力が高くなり、「社会性の学習」が上手になります。

 また、身体を通した実感が高まるので、「前後、左右、上下」などの空間関係がとりやすくなったり、「大小、長短、高低、遠近」など、物との距離感がとりやすくなります。

 

 そしてさらに、自分の身体を通しての実感が高まるので、「生理的・身体的」な「自己像」が育ちます。この自分に対するイメージがさらに、「心理的・精神的」な「自己像」として育っていき、「自我の発達」となります。

 

 「自我」とは「心の自己像」であり、「自己主張の源」になります。幼児期でいうと、「○○ちゃん」の「の」にあたる部分で、私のもの(所有するもの)として現れてきます。

 

 この所有格がとても大切な発達になります。私のものができることで、「責任」の基礎の力になるからです。

 

「役割意識」からキャリア発達へ

  所有意識、責任意識が少しずつ育つことで、「役割」という意識につながり、「役割」行動の構成要素となります。

 

 次に、役割意識が育つことで、どのように心が育っていくかを見てみましょう。

 

 例えば、保育所や幼稚園、学校でよく目にする活動から考えてみましょう。

 

 (1)「日々繰り返される活動」

 ↓

 (2)その行動を担うことで、自分以外の人にメリットが生まれる。

 ↓

 (3)自己選択、自己決定からその仕事が選べると、「自主性、主体性」が育つ。

 ↓

 (4)その活動を担ったことで、褒めてもらえる。

 

 という流れが、係活動など随所にあると思います。このような繰り返しの中で、しっかりとした「役割意識」が身についていきます。

 

 この少し大きな役割意識は、「帰属意識」へと育っていきます。その集団の一員という「自覚」です。

 

 帰属意識が育つことで、この仲間が喜んでくれるなら少し辛いことでも頑張れるといった意識を育てます。この辛いけど仲間のためにという感情の芽生えが集団の中で「セルフコントロール」できる力と育っていきます。

 

 仲間の捉え方が大きくなれば、住んでいる街のため、日本のため、世界のためとなるでしょう。自分が大切にしている集団のために、自分がもっている力を果たそうとする役割意識が、人生を通しての使命感となり、「ライフキャリア」の根幹になると私は考えています。

 

 キャリア教育という言葉が盛んに聞かれますが、その根っこには、自分の体に対する実感=ボディイメージの存在が大切であること、そして、「自我」を大切に育てることが大切ではないかと思います。

 

 自分を大切に出来る人が、相手を大切にできます。そんな授業も学びの場で取材していただきましたので(前編後編)、ごらんになってください。

 

 さぁ、もうすぐ卒業式、全国の卒業生のみなさん、自分を信じて、仲間を信じて歩んでいってください。

植竹 安彦(うえたけ やすひこ)

東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士
肢体不自由教育からの視点を中心に、子どもたちの発達を支えるために日々できることを一緒に考えていきたいと思います。

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