2014.03.06
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卒業生を担当の先生方へのエールは?

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭 岩本 昌明

3月も卒業の時期になりました。晴れて卒業を迎えられた(主に高校かな?)全国の皆さん、ご卒業おめでとうございます。3年間はさまざまな一言では語り尽くせないようなドラマと想い出に満ちあふれていることでしょう。1人ひとりの3年間の記憶のアルバムを胸に抱いて、次の「希望と夢」へという船出を祝いたいものです。

この時期になると、私は、ある生徒のことを思い出すことがあります。1年生、2年生と追試験や追追試験や特別課題などで、諸先生方に大変お世話になりました。正直、やらされて何とか進級してきたという状態でした。それが、3年生になると、少しですが前向きに勉強に取り組むように変化してきました。それでも低空飛行は相変わらずです。毎学期に成績不良者の1人として名前が挙がっていました。

ある会議の場で、担任であったT先生が、頭を下げて、「どうかよろしくお願いします」と発言されました。私は、その若いT先生を応援したくなりました。3年生であっても留年や進路変更などが行われ、情状酌量の余地を見せなかった厳しい校風(?)であったのです。その生徒は自分なりに確かに努力はしたのです。なかなか他の先生方には、それが分かってもらえないようでした。でも、T先生はしっかり見ておられました。T先生の髪の毛の白髪の数だけ、その生徒はお世話になっていました。その生徒にはT先生が陰で実際に色々と努力されていたことは知らないまま、なんとか卒業を迎えたのです。私はT先生のようにありたいとも思いました。

卒業は、学舎を離れる儀式のようなものかもしれません。同時に、卒業した学校の先生方との新しい絆や関係作りのスタート地点でもあるようです。卒業はピリオドではなく、通過点であると言われます。私はT先生とその生徒がいい形で繋がりが始まっていることを願っています。

T先生は、その生徒との日々を思い出して「教師冥利につきる」とも言っておられました。私もこの「教師冥利」という言葉に惹かれます。でもなかなか、「教師冥利につきる」ことに出会うわけではありません。そう簡単に、そして多くないからこそ「教師冥利」なのかもしれませんね。

ただ、教師の力で何かができると思い上がることは、注意が必要です。実はほんの小さい力もないこともあります。最終的には本人が、その気になり、本人が自分を変えていくエネルギーを持つことが大事なのかもしれません。

わたしは、卒業する児童生徒に関わられた全ての先生方にも「○○○○○○」とエールを送らせていただきます。皆さんこの○○にはどんな言葉を添えられますか。そして先生方の「教師冥利」は何でしたでしょうか。

岩本 昌明(いわもと まさあき)

富山県立富山視覚総合支援学校 教諭
視覚に病弱部門が併置された全国初の総合支援学校。北陸富山から四季折々にふれて、特別支援教育と英語教育を始め、身の回りに関わる雑感や思いを皆さんと共有できたらと願っています。

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