2014.03.04
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大雪で考えさせられた今の暮らしの便利さ

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

2/14(金)から15(土)にかけての関東甲信越地方の大雪は大きな爪痕を残しました。
私の勤務する学校のある地域(埼玉県北部)でも60センチ以上の雪が一日で降りました。
この地域の熊谷気象台では、観測史上最も多い積雪量だそうです。
結局、2/17(月)、18(火)と二日間が臨時休校になり、2/19(水)から再開となりました。
町の中にある学校なので、車道にある雪が除雪によって歩道などに積み重ねられ、通学の際の安全が確保できませんでした。

町の中に目を向けると、様々な被害が見えてきます。
目につくのが車用のガレージが雪の重さに耐えられず倒れ、車を押しつぶしているケースです。
この地域は、通常、これ程(60センチも)の雪は降りません。
そのため、ガレージが雪国仕様にはなっていなかったことが原因のようです。
町を歩いていると至る所に壊れたガレージと下敷きになった車が見られます。

また、スーパーやコンビニでは、パンやたまご、豆腐、葉物野菜などが品薄になりました。
配送の荷物が届かないことが原因だったそうです。
こういった状況を見ながら、今の「便利な暮らし」について考え、子ども達に話をしました。

「今の暮らし」はとても便利で、効率がよく、無駄のないものです。
例えば、宅急便で荷物を出せば、次の日に配達されます。
冷蔵庫に入れておけば、食べ物を新鮮なまま保存することができます。

それに比べ「昔の暮らし」は、少し不便で、効率が悪いところがあり、無駄もあるものです。
薪を使って料理や暖房をする事は、少し手間がかかります。
干し柿や切干大根を作ることも、手間がかかります。
しかし、薪の暮らしでは、異常気象の影響で停電などになっても、それ程暮らしには大きな影響を与えないと思われます。
干し柿などの食料も今回のように大雪などで流通が滞っても何とか対応ができます。
今の暮らしは、効率や便利さを追求した結果、少しのアクシデント(雪など)で生活の根幹が揺らぐ可能性があります。

 「電気」「流通」「交通」「通信」今回の大雪では、こういったものへの「依存」と「ある種の弱さ」を改めて感じさせられました。

ところで、近年、住宅では電気を多く用いるタイプが多くなりました。
キッチンには、ガスではなく、IHクッキングヒーターが入っていたり、空調はエアコンを用いていたりしています。
そういった家は、環境に優しいということで、大いにもてはやされました。
その結果、多くの電気エネルギーが必要になりました。
東日本大震災以前は、原子力発電をベースの電源として、積極的に原発の建設を進めていました。
震災以降、次々と原発が稼働停止になり、今度は火力発電用の燃料費が非常に大きなものになってきています。
経産省の試算によると年間で3兆円程度が必要な額だそうです。
結局、そういったものをさまざまな形で国民が負担することになります。

便利な暮らし → 十分なエネルギーが必要 → 原発建設 → 震災後、燃料費の増大

お金がかかるから原発を稼働させたほうが良いという考えもあります。
経済界は特にそのような考えのようです。
生活での利便性などを追求した結果、結局、別の形での負担が国民に降りかかってきている感じです。

現代の暮らしは、エネルギー、流通、交通、食、情報など様々なものが非常に便利になりました。
もしかしたら、それらは少し行き過ぎているのかもしれないと感じる時があります。
大地震が起こったり、記録的な大雪が降ったりすると、そういったことに気付かされます。
昔の暮らしの中にある生活の知恵のようなものを現代風にアレンジし、今の生活の中で使っていくことができたら、少し状況が違ってくるのではないかと感じます。

大雪から半月も経ったこの記事を書いている時点で、深谷市にはまだまだたくさんの雪があります。
少しずつ農業被害などが報告されています。
特にビニールハウスの被害が大きいそうです。
通常の収穫時期とは、違った時期に野菜を収穫することができるようにするために作ったハウスが壊れてしまっています。
これも、便利な暮らしへの警告なのかもしれません。
生活のあり方を考えていると、今回の大雪や震災などが、宮崎駿の「風の谷のナウシカ」のイメージが重なってきました。
ナウシカの世界は、最終戦争で荒れ果てた1000年後の地球という設定です。
震災後の放射能の問題や大雪で混乱している姿が、あまりに便利な暮らしを追求し、それが弾けてしまった後の世の中の姿のように思えます。

「暮らしのあり方」とは、人間の存在や未来に関わってきます。
機会がある毎に是非とも子どもに考えさせていきたいテーマです。
自然は時に人間に警告を与えます。
それを感じ取り、英知を結集し、人間がどうやって暮らしていくのかということを考え抜いていくことが求められているのだと思います。

そんなことを感じた大雪でした。

被害にあった方々が早く元の状態に戻れることを切に願っています。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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