日本は、長寿国とされています。
平均寿命は、国別の平均データを見ても、非常に良いものです。
2012年の日本人の平均寿命:女性86.41歳(世界で1位)、男性79.94歳(世界で5位)
平均寿命が長いのは、良いことなのですが、そういった状況において、課題となってきているものが、医療費や介護の問題です。
「医療費」の負担が日本の経済において大きな影響を与えていることは多くの人が知っていることだと思います。
そういったことについてよく調べてみると今まで知らなかったいくつかのことが分かりました。
(厚生労働省が平成25年9月に発表した「平成24年度医療費の動向」による)
・平成24年度の医療費の合計額:38.4兆円
・毎年約1兆円ずつ増加している
・医療費のうち70歳以上が占める割合は約45%(17兆円)
年々、医療費が増えていること、お年寄りの医療にお金が多くかかっていることなどが分かります。
また、介護についても難しい問題があります。
いくら寿命が長くとも、寝たきりの状態が長いのであれば、幸せであるとは言えなくなります。
「健康寿命」という考え方があり、WHOの定義では「日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間のこと」となっています。
厚生労働省の2010年のデータでは、日本では、健康寿命が、男性で70.42歳、女性で73.62歳となっています。
先ほど書いた平均寿命と健康寿命の差を見ると、約10年となります。
日本では、この10年間を家族や社会システムなどの介護を受けながら生きていくことになります。
近年、企業においては、「健康経営」という考え方が注目されており、それは、米国の経営心理科学者のロバート・ローゼンが提唱した概念で、企業の持続的成長を図る観点から従業員の健康に配慮した経営手法のことです。
先に挙げた医療費の問題や仕事でのパフォーマンスの問題などから企業が積極的に社員の健康に関わっていこうとしています。
例えば、定期的な健康診断で悪いデータが出た社員に対して、職務命令でフィットネスプログラムへの参加を義務つけたりしています。
本来は、個人がプライベートの時間を使って行っていくべきものを勤務時間に行わせます。
企業にとっては、それ程、深刻な状況なのだと思われます。
このように企業を含めた社会において「健康」について関心が高くなっています。
日本は、世界の中でも最も高齢者の比率の高い状況になっています。
先進各国もある部分で状況は似ているのですが、日本が最も先を進んでいます。
日本の様々な取り組みを先進各国が注目をしています。
そういった中で、アルツハイマー病への対応などで効果的な方法が見出されたり、地域を取り込んだ介護の仕組みが作られたりしています。
世界のモデルとなるものが作られている過程にあります。
しかしながら、社会においての関心の高さと比べ、学校においては、それ程、関心が高く取り組めているとは思えません。
健康や死などは、子どもにとっては、身近な話題ではありません。
学校におけるプログラムもあまり出来上がっていません。
近年、学校に求められるものが多様になり、これまで行ってきたものに加え、外国語活動や道徳指導の充実などが求められています。
そういった状況の中で、健康を意識した活動に多くの時間をかけることができていない状況にあります。
学校において取り組む内容は、社会の状況によって変化をしてきます。
高齢化社会に向けて、学校における役割は少し違ったものになってくると思われます。
今まで以上に健康を意識した活動が求められることになると思われます。
全世界が取り組んでいく学校教育のモデルとなるものが出来上がってくると良いと思います。
これまで、いくつか健康に関する内容を書いたものがあります。
興味のある方は、ご覧ください。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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